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「これ、本当に書いて大丈夫か!?」と思うような内容の取材に、筆者は時折遭遇します。
CEDEC 2023の中で開催された講演「【プロデューサー/ディレクター必見】スマホゲーム広告の“嘘”」は、正直筆を執るにはかなり勇気のいる内容。スマホゲームのインターネット広告の在り方に一石を投じ、「インターネット広告は費用に見合った成果を得ていない」と主張しています。この講演を目の当たりにした筆者は、驚きのあまり固まってしまったほど。
この記事では、講演で語られた内容の一部をお届けしたいと思います。登壇者はアプリボット グローバルパートナー事業部マーケティングディレクターの家門真明氏です。
インターネット広告の「正確な成果」
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家門氏曰く、モバイルゲーム業界にはインターネット広告にまつわる「嘘」が横行しているとのこと。そのせいで、真摯にマーケティングの仕事をしているほど疲弊している現状があるそうです。
「まずはインターネット広告にまつわる最大の“嘘”をご紹介します。“インターネット広告はCPI、ROASなどで計測しやすい”と言われています。しかし、これはめっちゃ“嘘”です。計測している風なだけ」
この言葉に「えっ?」と思うゲーム開発者もいるらしく、「それは広告を掲載しているメディアや代理店に聞けば分かるのでは?」という返事があるとか。また、「計測SDKを入れてちゃんと計測できるはず」という説もあります。
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以下、「メディアや代理店はインターネット広告の正確な成果を把握していない」という話に絞って書き起こしたいと思います。
メディアは「登録率」を把握していない!
家門氏が例に挙げたのは、某大手メディアAと某大手メディアX。スマホゲームの事前登録のインターネット広告をこれらのメディアに掲載する場合、広告のクリック/タップ数と実際にストアまで行って事前登録する人の数を区別しなければならないとのこと。
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「事前登録って、どのスマホゲームでもするじゃないですか? でも、最終的な登録率っていうのは分からないんです(特定の状況で追える場合もあり)」
つまり、メディアや代理店が把握しているのはあくまでも「ユーザーが広告をクリック/タップした回数」のみで、その後のことは分かりようがないという家門氏の解説です。
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正確な登録数を知るために、代理店を通してメディアに登録率について質問します。数年前に家門氏自身が経験したことだそうですが、
「うちは、大体広告タップ→登録は30%くらいです」
と言われたとのこと。そしてこの「30%」は、数年前は業界に広く出回っていた話ということも付け加えました。
「僕はこの話をメディアさんから言われた時に、“あれ?”と思いました。何でこの人たちが、具体的な登録率を知ってるのだろうか……」
登録率のデータがポストバックされる仕組みは存在しない以上、メディア側の人が数字を知っているのは確かに不可思議な現象です。
メディア担当者は、
「過去のデータの概算を各所からヒアリングしてまとめています」
と答えたとのことですが、問題はこのヒアリングした上でのデータを「一次情報」として認識している点です。