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9月4日から9月6日まで神奈川のパシフィコ横浜で開催された「CEDEC 2019」にて、次世代の通信テクノロジー5Gとゲーム分野に関するセッション「5Gでゲーム作りはどう変わる?~そろそろ気にしておきたい5G最前線~」が実施された。
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このセッションには、NTTネットワークサービスシステム研究所の研究員である本間俊介氏と、NTTドコモの移動開発部に所属するアプリケーションエンジニア石塚広樹氏、そして ZIKU Technologiesの春日秀之氏の3名が登壇。携帯電話の次世代通信規格ということで、講演を行うホール内では立ち見での受講者が多数見られるほど多くの注目を集めていた。
■そもそも「5G」とは何なのか?
各登壇者の自己紹介後に本間俊介氏よる5G解説が始まった。モバイルネットワークは、約10年のサイクルで繰り返しアップデートされている。80年代の1Gのショルダーフォンから始まり、2Gのガラケー(フィーチャーフォン)、3Gのスマホ、4Gのタブレットと使える機能を増やしながら、2020年頃には第五世代モバイルネットワーク「5G」という段階まで来ている。
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5Gの特徴としては、より高速で大容量な回線を提供する「超大容量(eMBB)」と、より多くのIoTデバイスを繋げる「多量接続(mMTC)」、「超高信頼・低地園(URLLC)」の3つが挙げられる。
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5Gでは、4Gの基本構成をそのままに無線区画のスループットの向上と低遅延化が行われ、仮想化技術(NFV/SDN)よる柔軟なネットワーク構築が可能となる。5Gの通信パフォーマンス(目標値)は、4Gと比べて転送速度が理論値1.29Gbpsから理論値20Gbpsへ、転送遅延が10msから1msへ、端末接続数が1万台から100万台と、データ転送技術の目標値が著しく向上する。
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またSIMカードやアプリ単位でのネットワーク優先制御や、無線区画からモバイルのインターネットゲートウェイを通過する時間が約100msから数10msまで短くなることによって、低遅延アプリケーションを実現する。
5Gでの無線技術(mmWave/mMIMO)では、伝送データ量が多く直進性の高いマイクロ波(3GHzから30GHz)とミリ波帯(30GHz)を活用し、指向性(ビームフォーミング)がある電波を複数アンテナから並列送信するMIMO技術を導入。
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仮想化技術(NFV/SDN)は、専用サーバーで提供されていた機能を汎用サーバーから提供できるようになることで設備コストを削減。パケット経路制御のコントロールプレーン(C-Plane)とパケット転送の「データプレーン」(D-Plane)を分離して、一元的にトラフィック制御を行い、用途に応じた通信品質を提供する。分散クラウド/MECでは転送経路を短縮し低遅延化を行う。ネットワークスライシングは、同じ物理インフラの上に用途に合わせた論理ネットワークを構築し提供する技術だ。
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これらのことから、高速・低遅延・多接続の5Gによって、通信速度等がネックとなって実現していなかった新たなアプリケーションやサービスが可能となることを示した。
続いて、NTTドコモの石塚広樹氏が登壇。NTTドコモとしては、この5Gを2019年9月にプレサービスとして始め、2020年春には商用サービスを開始する予定だ。
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5Gの高速・低遅延の通信技術によって、遠隔操作による高度医療の提供や、高精細CG連動の遠隔・体験型授業、建築機械の遠隔操作、人型ロボットの遠隔操作、4K映像配信などが可能となる。ゲーム分野においては、安定した低レイテンシ環境を実現でき、タイトルごとの最適なネットワークをオーダーメイドで提供可能であることを述べた。
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■5G環境でゲームではどんな事が可能?低遅延環境での実証実験
次にZIKU Technologiesの春日秀之氏が登壇。ここからは、先の2者と異なりゲーム開発者からの視点で語られた。5Gによるモバイルネットワークの質が上がれば、有線/無線の違いを意識しなくてよくなるのではという5Gへの期待を口にする。ダウンロードの高速化と安定したストリーミングは勿論のこと、混雑エリアでの接続問題の解消や、多人数が集まる大規模イベントでのゲーム同時プレイなどが挙げられる。
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続いて本間氏と春日氏によって、VR卓球ゲーム『XR-PingPong』での実証実験が紹介された。5Gそのものは様々な分野で活用できる可能性が大きいものの、「遠隔医療の途中に突然のシャットダウンが起きたらどうするか?」というリスクがあるために、倫理的にも政治的にも本格導入にはまだハードルがあるという。一方でゲームは命の危険が無いため5Gの利点を大きく生かせるのではと話した。
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『XP-PingPong』が実証実験の対象として選ばれた理由は、卓球そのものが高速なインタラクションと高フレームレートと通信要求がシビアだからだ。Player/Audience/Observerというそれぞれのロールに応じて、各要素がスライスされていると春日氏は説明する。
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プレイヤーと参加型オーディエンスには低遅延と高い優先度が、視聴型オーディエンスには高帯域スライスが振り分けられている。ゲームサーバーとストリーミングサーバーは区別されており、それぞれ役割に応じた処理が行われる。この実証実験の目的は低遅延と広帯域の2分野だ。
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前述の通り5Gは低遅延と言われているものの、完全に遅延がなくなるわけではない。ここでは遅延の影響について説明された。一般的には60fpsや30fpsのフレームレートで動作するタイトルが多いが、VRタイトルでは90fpsや72fpsでの動作が求められる。
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ゲームにおいての遅延はインタラクションに大きく影響を与える。卓球においては打つ・打ち返されるという動作だ。ここで遅延の影響を説明するスライドが映された。
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容認される速度は114msで、AからB、BからAとボールが往復する範囲の遅延なら補完可能だという。片道での遅延の許容範囲は57msとなり、ゲームの処理における遅延を含めるとPingが85ms以下の環境でないと卓球ゲームが成立しないことになる。ここで許容される遅延についての実験結果が発表された。
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VRコンテンツは簡易系の、ネットワーク制御時は本格系のネットワークで性能が検証された。簡易系のネットワークでは片方に遅延発生器を取り付けて行われ、ラグの発生は100ms、パケットロスでは5%未満で画像の乱れが発生し、100msを越えるパケットが全体の10%を越えるとラグが頻繁に発生する。それらをラグあり/ラグ無しの実証映像と共に語った。
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映し出された映像では、ラグありはどうしても反応が遅くなってしまうため、ボールを捉えきれず打ち返せない姿が、一方のラグなしではしっかりとボールを打ち返す様子が映し出された。本格的ネットワーク構成では、商用網を模したネットワークを構成し、スライス適応前と適応後のパケット量を披露した。
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次に、まとめとして実証実験で手に入れた知見を公開。遅延や安定性の担保はオンラインゲームにおいて重要で、従来型のネットワークでは運用の難しさが残るため、今後はネットワーク品質まで考慮に入れたゲームやコンテンツの登場することを示唆した。
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またネットワークとアプリの密な連携に関しては、『XR-PingPong』の検証を通じてコンテンツを使いこなすためにはアプリとネットワーク両方の知識が必要で、オペレーター間の差分やネットワークの専門知識によらず使えるようにすることが課題のようだ。
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ゲーム開発の視点からは、ネットワークの品質を制御できるようになれば、商用での展開にとって大きな助力になることは確実で、開発者としても検証する立場としてもコストダウンに繋がる魅力的なシステムであると語る。ネットワーク担当のプログラマとしては、使っていて細かく制御したいというのが本音で、実装はともかくオペレーションが複雑になるのを改善して欲しいという要望もあるようだ。またキャリア間の差異と、海外まで含めて通信が整備されれば実用段階になるのではと述べた。
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5Gとゲームとの相性面に関しては、5Gそのもののポテンシャルが大きいことと、ゲームで出来る幅が大きく広がることを示した。今はまさに5Gの実用化フェイズにあるため、要望を挙げるならこのタイミングであることにも期待を寄せていた。最後に東京ゲームショウ2019で5Gにフォーカスを当てたブース出展を行う予定だと告知をしてセッションは終了した。
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