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閑静な場所にある京都精華大学 |
ゲーム作りを教える学校が全国各地にあるなかで、この講座のユニークな点は、iPhoneという開かれたプラットフォームを開発に用いて、企画から開発だけでなく、実際にApp Storeを通じての販売、そしてプロモーションまでを行おうとしている点です。7月3日、いよいよゲーム開発が佳境に迫る京都精華大学に取材に行ってきました。
■美大生がゲームを作る
この講義が始まったきっかけは、2007年に京都精華大学で行われた、大学祭「木野祭」にて、橋本長官と西健一氏が制作した『アルキメDS』のイベント「アルキメDS爆笑おもしろ特別講義」を行ったことが始まり。当時1年生でこのイベントの発起人となった学生が今回はTAとなり、講義を支えています。
講師は橋本長官と西健一氏、そしてプログラムを教えるためにスーパープログラマー、宮川氏が月一で参加しています。
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奥から、宮川氏、橋本氏、西氏 |
西健一 Route24代表。スクウェア、スキップなどを経てRoute24設立。代表作に『moon』『ギフトピア』『ちびロボ』など。近作ではiPhone向け『newtonica』も。
宮川義之 ゼペット代表。スクウェア、イニスを経てゼペット設立。『ファイナルファンタジーXI』のメインプログラマーから一人でiPhoneゲーム開発へ。iPhone向け『iNinja』『iYamato』がヒット中。
この講義は選択科目の一つとして行われていて、選択している学生は全部で18名。美術系ということもあって、うち14名が女性という構成です。まずはチーム編成からスタートし、「やおよろズ」「harakiri5」「Loo」という3つのチームに分かれて、ゲームの企画を立て、素材を作り、プログラムを組み上げていきます。iPhone向けゲームの開発ということで、MacBookを使って行われます。
多くの学生の志望先は、広告代理店、映像制作会社、ウェブ制作会社、アニメーション制作会社、ゲーム会社など主にデザイナー系です。イラストレーターやフォトショップを使ったデザイン制作はお手の物です。大学では単に制作の技術だけでなく、マーケティング的な発想術やアイデアを具体化する方法などについての講義も行われるようで、企画もばっちり。あとはゲーム開発に足りないものはプログラミングです。iPhone SDKでかなり直感的な開発が出来るようになっていると言っても、全くのプログラム初体験ではなかなか厳しいものがあるようです。
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■プログラムを教えて欲しい!マックで課外授業
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オープンテラスでプログラミング |
前回の講義からの2週間の間も、宮川氏の元には毎日のように学生から質問メールが届いていたそうです。『iYamato』を6月末にリリースしたばかりの多忙な宮川氏ですが、「直接答えを教えるんじゃなくて、答えを探すためのヒント」を返事していたそうです。積極的な学生たちの姿には「なんとかして完成させたい」という思いを感じました。
ゲームは企画から始まり、様々なアセットを用意して、最後に全てをプログラムに詰め込んで、調整をして完成します。そして一番大変なのは最後の数か月。今回のiPhoneゲーム制作は半年強のプロジェクトで、いよいよ佳境の一番苦しい時期です。デザインチームやサウンドチームが良いものをほぼ作り終えた段階で、最後にそれをまとめるバトンを託されたプログラム陣には大きなプレッシャーもあるようです。冗談めかして「胃が痛い」と言った学生もいました。
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■それぞれ楽しみな3作品
授業風景は、一言で言えば良い雰囲気。女性ばかりのゲーム開発現場というのも新鮮です。土曜日の講義は13時から始まり、18時までの長丁場。少し広めの教室で3チームが分かれて席を取り、仕上げに向かっていきます。「企画の時は引っ張りだこだったのに余りすることもなくて…」と橋本長官と西氏はあとは見守るだけでちょっと寂しげだったのに対して、宮川氏は5時間ずっとヘルプを求められ続けている状態。「(メインプログラマーを務めた)FF11の頃を思い出したよ」とも。
ここで各チームが制作するゲームを紹介。
「やおよろズ」が制作するのは『DYUKUSHI』というアクションゲーム。和風でポップなグラフィックで、スクロールしてくる敵をタッチして倒すというものです。登場するキャラクター数が多く、タッチした時の判定やキャラクターを動かすプログラムに苦戦していたようです。
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開発機での様子 | 企画書の一枚 | アセット管理はWikiで |
「harakiri5」の5人が制作するのはその名も『HARAKIRI』。こちらは純和風なテイストで、お城のふすまを人差し指と親指で次々に開いていって、奥に居るボスを倒すというもの。「ふすまが開かない!」との悲鳴が聞こえました。どんなグラフィックテイストにするかも紆余曲折あったようです。
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タブレットで制作中 | キャラデザも紆余曲折でした | こんなゲーム |
「Loo」が制作するのは『TORIPORO』。クモのようなキャラクターが星から星へと移動しながら、可愛らしい敵キャラクターを倒して(集めて)いくというアクションゲーム。当初は縦画面だったものを、本日横画面に。出来た瞬間には歓声が上がってました。
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制作風景 | 長官、熱弁を振るう | コレクション画面はどうしよう・・・ |
いずれのゲームもまず目を引くのがグラフィック。さすがのセンスの良さを感じます。ゲームデザインも考えられていて面白そうです。
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ここからが勝負 |
この講義は完成させるだけで終わりではありません。App Storeに登録するということは世界中に公開するということです。無料にするか、有料にするかは学生たち自身に委ねられています。
非常に個人的な意見ですが、ぜひ有料で挑戦して欲しいと思っています。値段は115円で十分です。でも、無料と115円の間には超え難い一線があります。皆さん非常に才能ある方々だと思います。制作の様子を見ていても、出来つつあるものを見ても、センスを感じますし、とても初めてゲームを作ったとは思えません。ただ、良い物を作るのも大変ですが、その正当な対価を得るのはもっと大変なことです。学生と社会人の違いというやつかもしれません。作ったものを売るという経験は、自分の腕で勝負していくことになるであろう皆さんにとって他の講義では得られない経験が得られるのではないでしょうか。
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「iPhoneがなければできなかった」と橋本氏は言います。門戸が広く開かれ、SDKが一般に公開され、課金プラットフォームも手続きを行えば使えるというiPhoneならではの講義と言えます。学生が企画から開発まで行い、ゲームのプロモーションまで行っていくという前代未聞の講義。プロジェクトは残り1か月となります。その様子は各チームのブログでも随時報告されています。どのようなゲームが仕上がるのか非常に楽しみです。