同じゲーム展示会でも、ロケットで例えればアポロとソユーズくらい、進化のベクトルが違っていました。7月29日から8月1日まで、上海でオンラインゲームの展示会「チャイナジョイ」(China Joy)が開催されました。筆者も取材しましたが、東京ゲームショウやE3といったイベントと、様相がまるで違うことに驚かされました。東京ゲームショウの主役は新作ゲームです。企業の主要目的は新作ゲームの宣伝で、ユーザーもこれらをいち早く体験するために、会場を訪れます。しかしチャイナジョイの主役はユーザー自身でした。ステージイベントに大挙して押し寄せ、写真を撮影する。グッズ配布に長蛇の列を作る。コスプレ大会やeスポーツなど、文字通りユーザーが主役のイベントで盛り上がる、といった具合です。逆に新作ソフトの発表は低調で、サービス中の人気タイトルで試遊台が占められるブースが大半でした。人気ゲームに長蛇の列ができる、といった光景も見られませんでした。この背景にはパッケージゲームとオンラインゲームの違いがありそうです。基本プレイ無料のオンラインゲームでは、展示会に来てまで最新作を遊ぶ動機付けが希薄です。ゲームのおもしろさも、ゲーム自体ではなくコミュニティに依存します。そのため一人で新作を遊ぶよりも、周囲で流行っているゲームを遊ぶ方が得策です。メーカー側でもこうした状況は熟知していて、個々のタイトルよりも、ステージイベントなどを通してブランドの認知度を高め、新会員獲得に繋げようとしている印象を受けました。またオンラインゲームの大作化が進んだ結果、年に何本も新作を発表することが、難しくなっている事情もあるようです。一方、今年のチャイナジョイで同じく低調だったジャンルに、ブラウザゲームやソーシャルゲームがあります。実はこれ、今年のE3でも同様でした。もっとも市場が急成長しているのは、良く知られている通りです。こうしたジャンルでは展示会自体が意味を持ちにくいのかもしれません。日米欧はパッケージゲーム、アジアはオンラインゲーム、その周辺にブラウザゲームやソーシャルゲーム、スマートフォン向けアプリなどが広がっている・・・。ゲーム業界は急速な拡散と変化の渦中にあり、その波は中国にも確実に押し寄せています。チャイナジョイもまた一つの節目を迎えているのかもしれません。