
■Application Library “Arcana”
Arcanaと命名されたApplication Libraryは、シーングラフやリソース管理についてはきっちりと制約を設けてあり、効率よくゲームに特化した開発環境を構築するための、ツール開発フレームワークを提供しています。これにはシリアライズされたデータを編集するためのインスペクターなども含まれます。また、汎用ではあるもののゲームコンテンツに特化した、多くのゲーム開発モジュールが提供予定となっています。
特にシーングラフは強く規定され、Unityのようなゲームオブジェクトの概念を取り入れて制作を行うことになります。コンポジションの概念も利用して機能拡張を行いやすくしてあるそう。機能単位で纏められたシーングラフノードは様々なものを用意してあり、それぞれを組み合わせて使用してもらう形になるとのことです。
マテリアル(テクスチャやシェーダー)、アニメーションと言ったリソース管理も取扱をできるだけ統一化し、現場で独自実装しているカスタムクラスをシリアライズしたデータも同様に取り扱い、さらにゲーム開発で作成したカスタムツールでも同じ仕組みを使ってリソース管理ができるようになるとのことです。


■モダンなレンダリングエンジン
レンダリングエンジンは、モダンなレンダリングフィーチャーに対応しており、HDRやMotion Blur、Shadow、Physically Based Renderingなどに対応。技術的にはPlayStation(R)3/Xbox 360のAAAタイトルが扱っていたものと同等のものを扱うことができ、想定しているのは2020年の低スペック端末(iPhone 7相当)で動作が可能なところ。

ツール開発環境は、Lift Engine(R)+Arcanaの環境では、Windows/Macで開発を行い、モバイルビルドは実機確認用程度のものを想定。ゲーム実装の大半はDLLに乗せ、DLLをリンクさせることで、ゲームの機能をゲーム本体だけでなくツールでも利用できるようになります。
DLL化のメリットは、クラスのメタデータをDLLが保持することで、シリアライズ・デシリアライズだけでなく、ツールのUIの自動生成などが行えることにあります。メタデータを使ったシリアライズ機能により不必要にファイルフォーマットを増加させることもなくなるとのこと。また、CUI・GUIといったツールのインタフェースに限らず、ツールを作るためのテンプレートも別途提供し、カスタムツールの作成が簡易にできるそう。標準的に提供するツールにはパーティクルやアニメーションデータを制作するものなどがあり、改良が必要になった場合は随時対応されるそうです。


■DeNAとLift Engine(R)が見る未来
現状では開発効率を引き上げるための仕組みとツールを提供することを最優先としています。それは、適したツールが増えれば効率が上がり、効率が上がった状態でタイトルをリリースできることが理想だと考えており、人海戦術に頼らず、少人数でコンテンツ制作が行える環境を目指しているからです。グラフィックスに関しては、「ハイエンドなもののお金がかかるのは人が多く関わるから。プログラムやシステムで引き上げられるものは引き上げ、デザイナー工数を必要なところに集中させたい。なるべくデザイナー工数を使わないようにし、パイプラインも含めイテレーション周期を短くして、確認工程を短くしていくことが当面の目標」と、きっちりと将来を見据えた開発が行われているように感じました。


最後に惠良氏は、「DeNAはタイトル開発効率を向上させることを徹底しています。Unityを使った開発だけでなく、独自のエンジンを使った開発でも独自のワークフローシートを作って開発効率を上げていくことを進めています。面白いゲームをユーザーのみなさんに楽しんでもらうために、できるだけ質の高いコンテンツを提供したいと思っているので、そのためにも効率的な開発環境を整えることに挑戦していきたいなと思っています。」と語り、講演を締めくくりました。