■コンソールからモバイルへ
惠良氏は2002年にフロム・ソフトウェアへ入社し、『アーマード・コア』シリーズ、『ダークソウル』シリーズをはじめとする、主要タイトルで利用される共通ライブラリやフレームワーク、開発環境構築などを約10年担当。その後2013年10月にDeNAへ入社し、ゲームアプリ開発に用いられる内製エンジンのLift Engine(R)や、DeAL(クロスプラットフォーム対応サウンドエンジン)、IRIS(リアルタイム同期通信サーバー)などの内製ミドルウェアを含めた開発環境構築に携わります。2016年より、部長としてDeNAにおける基盤技術の開発をリードしてきました。
■Lift Engine(R)とは
Lift Engine(R)とは、DeNAのネイティブアプリの開発に用いられている内製エンジンで、コンテンツに最適化するために、ブラックボックスのないものとのこと。cocos2d-xをベースとし、2Dゲームの開発に利用されています。APIで作り方を意図的に制限し、ゲームシステムの設計などに迷いがないように設計されているとのことです。また、ゲーム開発の際に必要になる機能がcocos2d-xには欠けていたため、独自でAPIやマルチツール対応などの実装も行われていたと惠良氏は語ります。

内製で運用するからにはパフォーマンスを重視し、cocos2d-xの描画に特化してダイナミックパッチングを自身で作成したり、レイヤー構造を上手く使ってなるべくバッチングがしやすいように、マルチレイヤーの構造を独自で作ったりもしていたとのこと。さらにフォントテクスチャの描画が遅いため自作のものに差し替えており、Sprite Studioといった商用ツールでも再生処理のパフォーマンスが良くないものは、描画の処理フローなども最適化し、パフォーマンスを数倍~数十倍にまで引き上げたそうです。

採用タイトルはDeNAのパズル系ゲームをはじめとし、多くのタイトルに採用されていますが、明かせないものを含めると他社製の2Dタイトルでも採用されているそうです。
■Lift Engine(R)の現在
元々は2Dゲームエンジンとして誕生しましたが、現在は3Dゲームエンジンとして生まれ変わり、UnityやUnreal Engineより手軽にコンテンツに特化したゲーム開発環境を構築できるというLift Engine(R)。Unityは便利なものの、アップデートでのドラスティックな変更があることや、ネイティブプラグインによる機能拡張にも一定のラインで限界が来ることは課題としてあるそう。そういった制約に縛られず、長期運営されるタイトルでビルド周りやアセットの取り回しが容易になるよう、自分で解決ができる環境にし、ゲーム特化のチューニングを行えるのが強みとのこと。
さらに、ゲーム開発における選択肢を広げる役割もあり、コンテンツパイプラインやワークフローなど、自分たちにベストマッチするものを選べるようになったとも言います。