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まずはじめに、特許権と著作権のちがいについて説明されました。著作権は、キャラクターや映像、ストーリー、曲といった表現に関する項目が該当します。一方、特許権は、操作方法やグラフィックなどの表現手法、ゲームシステムなどの仕様やネットワーク通信などが対象です。
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著作権を簡単に説明すると、「新しく考えた遊び(発明・アイディア)を見える化(特許出願)し、財産(特許・権利)とする」ことです。ここでいう新しい遊びとは、ゲームをおもしろくするための仕組みです。具体的には、ガチャの仕組みやRPGのバトルシステム、コントローラの操作方法やCGで表現される壁のデザイン、マッチングやフレンド・ネットワーク対戦などの通信要素です。
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どうやって財産化するかの前に、特許の権利についての説明が行われました。特許の権利とは、発明をした人や法人に対して、一定期間独占的な権利をあたえるものです。財産となった特許のメリットは、自社実施の確保と他社に対して独占的に実施できるという点です。他社はお金を出しても使うことができないため、特許の保有者は商品の差し止め、損害賠償請求、ライセンス契約といった対処ができます。
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ここで問題になるのが、特許がゲーム開発を阻害しているのではないかという懸念です。恩田氏は「特許がない場合、仕様Aをそのままコピーしたようなものが生まれ、市場が画一化してしまう。しかし、特許がある状態でコピーすると特許侵害となり請求が発生します。それを回避するための方法が、知恵を絞って新仕様や新特許を作ること。これによりゲームがもっとおもしろくなる可能性がある」と述べました。
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それでは、新しい遊びが特許になるまでのプロセスを紹介していきます。新しい遊びを発明したら内容を文章にし、国に特許の出願(提出)をします。そして特許庁で審査が行われますが、審査の基準は過去に同じものがあるか、現存している特許から進歩しているかなどです。こうして審査が通ると特許となり、財産としての価値が認められます。
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特許制度には5つの特徴があります。まず、すべての特許出願は1年半で誰でも見られるように公開されます。特許の有効期限は最大20年で、その後は誰でも使えます。日本でとった特許は日本でした使えないため、外国の場合はその国ごとにまた出願する必要があります。そして、特許を取るにはお金と時間がかかり、登録まで1年~5年、費用はトータルで数百万程度かかります。この金額について、恩田氏は「自社の製品優位性を発揮するためには、必要に応じて財産化しておいたほうがいいというのが特許に携わるひとの考えである」とのことでした。
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ここからは、特許出願に際して重要な「楽しませる仕組み」の構造について説明が行われました。恩田氏は、「楽しませる仕組みとはフローが書ける仕組みである」と伝えました。マッチングのアルゴリズム、パズルゲームの消し方など、遊びの仕組みが重要です。フローチャートを作成する際には、目的・効果を実現するための仕組みや技術を検討し、必要不可欠な構成要素の洗い出しを仕様としてまとめる必要があります。そして、このおもしろさのを仕組みを文章で説明して特許申請するという運びです。
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それでは、具体例を見ていきましょう。宝箱とキャラが接触するとアイテムが手に入るという遊びを考え、その目的を何が取れるかわくわくすると設定します。この目的を実現する方法から実現手法、要素を検討し、宝箱とキャラクターが接触すると、ランダムでアイテムがもらえると規定します。この目的や効果を実現可能な発明が、今まで存在していなければ特許化が可能とのことです。このプロセスをフローチャート化し、特許出願の文章にまとめると申請が可能です。
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ここで注意したいのが、概念の広さについてです。キャラクターと宝箱の接触を宝箱獲得イベント、抽選を所定の条件とすると規定される概念が広くなります。広い方が特許の効果範囲が広い反面、すでにある特許とかぶってしまう場合があるので、どのような言葉を選ぶのかといったバランスも重要とのことです。
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この処理をスマホアプリで行うと、ゲームの処理をすべてサーバーで行います。すると、従来のわくわくするという目的のほかに、スマホのデータ消失対策や端末でのハッキング対策が可能となり、新しい発明として特許出願ができます。サーバーを介したゲームデータのやり取りをフローチャート化し、それを特許出願の文章にまとめると上記のような形です。
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さらに、スマホアプリのガチャの仕組みについても解説がなされました。本物のガチャとゲームでのガチャ表現のちがいは、アイテムごとに確率が設定できること、アイテムの総数という概念がなくすべてのプレイヤーで共通であることから、先述の宝箱の事例を進化させた発明といえるでしょう。これらの仕組みをフローチャート化し、特許出願の文章にまとめるとスライドのような形式です。
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次はタッチパネルについてです。指が大きい人や細かい操作が苦手な人でも操作しやすいように、長押しし続けると入力範囲が拡大するという発明を考えたとします。これもフローチャートに整理し、どのようなプロセスでコマンドが実行されるのか規定することで、特許出願の文章へとまとめることが可能となります。
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最後に恩田氏は、「特許とは一見すると難しそうに見えてはいますが、ゲームの特許に関しては、遊びの処理が新しい、遊びの処理の中に今までにない構成がある、遊びの処理の組み合わせに新しい特徴がある、といった観点から特許を出願できる可能性がある」と述べました。なお、特許出願は誰でも可能ですが、書類の書き方が特徴的なので作成依頼をしたほうがよいこと、出願前に特許情報をGoogle patentや特許検索プラットフォームなどで検索してから手続きをすることを伝え、プレゼンテーションは終了しました。