■気になる電話機能の使い心地
これまでのApple Watchも、ペアリングしたiPhoneにかかってきた電話を受けてそのまま通話できる機能は搭載されていた。比べると通話機能そのものの使い勝手はあまり大きく変わっていない。電話番号もiPhoneと共通化されるため、着信があるとiPhoneとApple Watchの両方に表示される。Apple Watch Series 3の場合は自宅のリビングにiPhoneを置きっ放しにして庭いじりをしたり、ガレージで車の清掃に勤しみたくなったときにも、スマートウォッチだけで電話が受けられるようになったことが大きな違いとして実感される。もちろんiPhoneの電源がオフになっていても大丈夫だ。
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Apple Watchを装着している手首から、口元をどれぐらい離していても通話ができるのか試してみた。結果はまわりのノイズ環境にもよるが、たとえば静かな自宅の部屋で本を読んだり、パソコンに向かってタイピングしているぐらいの距離感であれば相手の声がクリアに聞こえるし、こちらの声も十分に聞き取りやすいようだ。手首の位置を腰あたりまで下ろしたり、歩きながら手をぶらつかせてみると、通話相手の聞こえ方が少し変わるようだが、問題ない範囲でコミュニケーションができた。Apple Watch Series 3では本体やバンドのサイズや使用感を変えずにキープするため、ウォッチのスクリーン表面にアンテナを仕込んで感度を確保しているのだという。これが効果を発揮しているのではないだろうか。
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屋外に出て試してみても接続性はほぼ変わらなかったが、通話相手の声はスピーカーのボリュームを最大にしていても、周りの環境音によっては多少聞こえづらくなるのは致し方ないところ。だいたい屋外で使う時には周囲に会話を聞かれたくないものだし、迷惑もかけたくない。スピーカーの音量を下げて、Apple Watchを顔に近づけて“ひそひそ話”で会話するのもありだが、BluetoothでApple Watchにペアリングできるワイヤレスイヤホンを活用した方が自然なコミュニケーションができるのでおすすめだ。
■電話以外にもセルラー通信機能が役立つシーンが色々ある
Apple Watchがセルラー通信機能を搭載すると、ほかのアプリにも良い影響があった。筆者はとくに「マップ」アプリが便利になると思う。正確な現在位置が常時手もとで確認できるので、ふだんのジョギングコースも足を踏み入れたことのないエリアにまで少しずつ脚を伸ばしたくなってくる。旅行でiPhoneを持たずにApple Watch単体で地図を見ながら歩きまわるという状況はあまり考えにくいのだが、国内ならそんな使い方もできる。海外旅行の場合は、Apple Watch Series 3のセルラー通信機能は海外ローミングに対応していないことを覚えておきたい。また海外で販売されているApple Watch Series 3の「GPS+Cellularモデル」は、日本の周波数帯域に対応していない場合があるので注意しよう。
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近くのコンビニやカフェにふらっと出かける時にiPhoneが手もとになくても、LINEがApple Watch単体でも使えて便利だった。一方で、以前はApple Watchでも使えたTwitterが、Twitterアプリのアップデートによって非対応になってしまったのがとても残念だ。特にセルラー通信機能を持っているApple Watch Series 3との相性は抜群によいはずなので、ぜひ復活してもらいたい。同様にLINE以外のコミュニケーションアプリが、さらにApple Watch対応を積極的に進めてくることを期待したいと思う。
ペイメント系ではSuicaのチャージがApple Watch単体でもできるようになった。iPhoneを持たずに電車に乗って出かけることはあまりないかもしれないが、万が一の時に使えると頼もしい機能だ。
エンターテインメント系ではまもなくApple Watchの「ミュージック」アプリから、Apple Musicのライブラリにセルラー通信機能を使ってダイレクトにアクセスして音楽ストリーミングが楽しめるようになる。最新のwatchOS 4からは、iPhoneの「ミュージック」アプリからプレイリスト、アルバム単位でお気に入りの楽曲をApple Watchに転送しやすくなった。これだけでも十分に満足と言えるのだが、ふと聴きたくなった楽曲がApple Watchに転送されていなくても、検索してすぐにストリーミング再生もできれば鬼に金棒だ。機能追加のアップデート後は聴きたい楽曲をSiriで探したり、ミュージックアプリから「Beats 1」などのラジオステーションにアクセスしてプログラムを聴くこともできるようになる。待ち遠しい限りだ。
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なお、ふだんiPhoneとApple Watchを使っているユーザーに、AirPodsなど流行の「完全ワイヤレスイヤホン」をペアリングして音楽を聴く時に便利なTIPSをひとつご紹介しておこう。AirPodsもそうなのだが、完全ワイヤレスイヤホンの中には本体にボリュームを調整するためのボタンがないモデルもある。iPhoneをポケットやバッグから取り出すのが面倒な時は、「ミュージック」アプリなどはApple Watchからもボリュームがコントロールできるのでぜひ試してみてほしい。
■スポーツとヘルスケアにますます進化したwatchOS 4
筆者はふだんApple Watch Series 2を使っているが、Series 3になってアプリの起動やレスポンスがよりスムーズになったように感じる。本体には高速デュアルコアプロセッサを搭載。新開発のカスタムワイヤレスチップ「Apple W2」によってWi-Fi接続のスピードが85%アップして、Wi-FiやBluetoothなど通信機能をオンにしている時の電力消費も50%ほど効率化されている。セルラー通信機能を頻繁に使いこんでしまうとバッテリーの消費が速まりそうだが、およそ1日中持続するバッテリー性能は新しいSeries 3になってもキープできているという。この辺りはもう少しSeries 3を長期間使ってみないとわからないかもしれない。
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Siriは新しいSeries 3になって内蔵スピーカーで話せるようになった。天気などをボイスコマンドで話しかけて聴くとハキハキとした声で答えを返してくれる。”Hey Siri”にも対応しているので、キッチンで料理をしている時など手が汚れていてもハンズフリーでSiriが呼び出せる。
※初出時、“Hey Siri”に対応していない旨の記述がありましたが、実際には対応しておりました。ここにお詫びして訂正いたします。
スポーツシーンでは「アクティビティ」が賢くなった。これまでのアクティビティは1日の中で時間の経過を見ながら、ユーザーが目指すゴールを達成できるように通知を送ってきたが、watchOS 4からはユーザーの活動履歴を学習して、1日の終わりにさしかかってまだゴールに近づけていないときに強く通知をプッシュするようアルゴリズムが変更されている。筆者のようにスロースターターで、1日の終わりに活動的になるユーザーの場合、早めの時間帯に通知がバンバン飛んでくる煩わしさがなくなるメリットがある。「あと何歩あるけば」「あと何分走れば」といった具合に目標をクリアするための目安もアプリが知らせてくれる。
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ほかにも「ワークアウト」アプリもデザインを一新。連続しておこなった複数のワークアウトのサマリーが一貫して見やすくなり、さらに心拍数やミュージックアプリの画面にスムーズに遷移できるようにインターフェースをブラッシュアップした。今年の年末までには「GymKit」のプラットフォームも始動する。身に着けているApple Watchとジムのトレーニング器具を接続して、双方向でデータが送りあえるようになる。トレーニングの成果がより正確に効率よく管理できるようになるだろう。
もうひとつ「ヘルスケア」アプリが使いやすくなったことも見逃せない。watch OS4では心拍数アプリが一新されて、スポーツ時だけでなく安静時の心拍数まで詳しく計れるようになった。安静時心拍は基準値を設定しておいて、10分間に4回以上その値を超えると異状が発生したと判断して通知を飛ばしてくれる。大げさな器具を身に着けなくても手軽に健康管理ができるので、筆者も高齢になる母親にiPhoneとApple Watchを持たせたくなってきた。
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■多彩なバリエーションから選べるケースとバンドの組み合わせ
Apple Watch Series 3の「GPS+Cellularモデル」はデジタルクラウンにワンポイントカラーの赤を配置した。通常モデルはシルバー/ゴールド/スペースグレイの3色アルミケースにステンレススチールのケースを加えた4種類。Nikeとのコラボモデルはシルバーとスペースグレイの2色アルミケース、EDITIONシリーズはホワイトとグレイのセラミックケースになる。
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今回はApple Watch Series 3のスペースグレイ 38mmアルミケースのモデルに通気性の高いナイロン製のスポーツループを装着してジョギングしてみた。マジックテープでフィット感をタイトに調節できるので、手もとに気持ち良く身に着けられる。目まぐるしいスピードで新しいバンドのバリエーションが追加されているのもApple Watchの強み。いま最も個性を主張できるスマートウォッチと言えそうだ。