3回目となる今回は、DGTのデザイン部が行っているCSR的な活動を通して「クリエイティブ業界にどのような貢献ができるか?」ということについて、お話させていただければと思います。
まず、DGTが参加している活動を説明させていただきます。この活動は、クリエイターを目指している高校生や大学生に会いに行き、そこで特別講義や座談会を行わせていただいています。この活動に参加したのは、2016年にDeNAの一部署である「デザイン戦略部」のメンバーから声をかけてもらったのがきっかけでした。
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初めて訪れたのは東北のとある高校です。ここで特別授業を開かせていただき、クリエイター志望の高校生たちとお話しました。
そこで、多くの高校生たちの口から「クリエイターは給料が低く生活ができない」や「とてもハードワークで寝る時間がない」、「親からクリエイターになるのを反対されている」といったことを聞き、衝撃を受けました。そして、高校生の時点で親御さんも含め、クリエイティブ業界にネガティブなイメージが付いていることを認識し、大きな課題を感じました。
確かに、いろいろな意味でハードな働き方をしているクリエイターもいるとは思います。ですが、それが全てではありませんし、少なくともDGTではそんな働き方をしていません。このイメージがどこから来ているか、実態はどうなのかに関して、今回はいったん置いておくとして(ホントは置いちゃいけないけど……)、このネガティブなイメージを改善していかなければ、今後のクリエイティブ業界を担う人材がいなくなってしまうのではないかという危機感に駆られたのです。
クリエイティブ業界で働く1人としてこの課題を認識したことで、クリエイターを志す若い世代を作っていくために、意識的に動いていかなければならないと考えるようになりました。
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この高校生たちとの出会いがきっかけとなり、今でも機会があればできる限り高校や大学へ伺っています。そして、私が学生さんたちとお話をさせていただく際は、以下の3つのポイントを注力して伝えることで、クリエイティブ業界を正しく認識してもらえるよう努力しています。
▼クリエイターの力が世の中に必要だということ
まず一番に、クリエイターという存在が世の中に必要だということを伝えています。世界は今後も新しい技術が発達し、さまざまな価値観が生まれることで、ニーズも多様化していくはずです。その中で新しいサービス/プロダクトが生み出されますが、そこにはクリエイターの力が不可欠だと思っています。クリエイターは、サービス/プロダクトにおける初期段階のUX(User Experience)設計から実際に使った時の心の変化(ワクワク、ドキドキ、etc)まで、人の体験において広い範囲で関わります。そのクオリティを上げることができるクリエイターという仕事は、素晴らしいのです。
▼どうキャリアを築くかが重要だということ
当たり前の話ですが、クリエイターと名乗るだけでは仕事にありつけませんし、何も生み出すことはできないということです。自分はクリエイターとして何がやりたいのか、何を求められているのか。自らのキャリアを描いてく必要性を、学生の時点から認識しておくことが、非常に重要だと考えています。
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▼しっかり生活していけるということ
このテーマに関しては、自分や周りの実体験をありのままお話しています。特に私自身の現在の生活(妻と子、扶養2名の核家族で頑張っています!)を、現役クリエイターのリアルな声として直接届けています。学生さんの反応を見ると、安心している方や納得している方が多く、面と向かって伝えることは非常に大切なのだと感じています。
以上の3点を地道に伝えていくことで、少しでも多くの学生さんが前向きにクリエイターを志し、将来的にクリエイティブ業界を盛り上げていってくれたら良いなと考えています。
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最後に、1と2を通して、クリエイティブ業界を盛り上げていきたいという想いの中で、DGTができることをお話させてください。
▼クリエイターを受け入れ成長させていく環境を常に整えておく
学生さんはもちろん、業界に飛び込んでくるクリエイターたちを受け入れ、市場の中で活躍していけるように育成していく環境を整えておくことが、DGTとしてやるべきことだと考えています。
参考:ゲーム運営の現場でクリエイターはどこまで成長できるのか?(https://www.gamebusiness.jp/article/2017/09/04/13338.html)
▼クリエイターの働きや実績を正しく世の中に発信していく
DGTで活躍しているクリエイターの働きや実績を、世の中に発信していくことも非常に重要です。多くのクリエイターが集まる組織として、クリエイティブ業界を盛り上げていくためにやるべきことだと考えています。
将来的にクリエイティブ業界で活躍してくれるかもしれない学生さんなどが、DGTのクリエイターの活躍を知ることで、自らがクリエイターとして働くイメージをより強く持ってもらえるように働きかけていきたいと思っています。
以上、今回は私のような現役クリエイターやクリエイティブ組織が、業界に対してどのような貢献ができるのかという観点から紹介させていただきました。
長文で大変恐縮でございますが、クリエイターのみなさまにとって少しでもお役にたてるならば幸いでございます。
■プロフィール
楠 薫太郎
株式会社 DeNA Games Tokyo デザイン部 部長
紙媒体のデザイナーからキャリアをスタート。Web・音楽・アパレル・映像業界での経験を積み、フリーランスを経て、2012年、DeNA入社。複数のゲーム運営、IP系ゲームのクリエイティブディレクションを担当。その後、DeNA Games Tokyo(http://denagames-tokyo.jp/)の立ち上げに携わり、2016年、同社のデザイン部 部長に就任。
楠 薫太郎
株式会社 DeNA Games Tokyo デザイン部 部長
紙媒体のデザイナーからキャリアをスタート。Web・音楽・アパレル・映像業界での経験を積み、フリーランスを経て、2012年、DeNA入社。複数のゲーム運営、IP系ゲームのクリエイティブディレクションを担当。その後、DeNA Games Tokyo(http://denagames-tokyo.jp/)の立ち上げに携わり、2016年、同社のデザイン部 部長に就任。