毎年「CEDEC」では来場者にアンケート用紙が渡されますが、今年はそれと併用する形で株式会社レスポンによるリアルタイムアンケートシステム「respon」が導入されました。会期3日間で行われた全235のセッション、および「CEDEC 2018」のレギュラーパスかタイムシフトパスを購入した人が8月23日から9月2日までの間に閲覧できた、全タイムシフト配信のアンケートがすべて「respon」で行われています。「respon」とはどのようなサービスなのか?そして、それを取り入れた「CEDEC」側の狙いとは? 順を追って紹介します。
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◆教育現場で活躍するリアルタイム アンケート
「respon」は、スマートフォンを使ってリアルタイムでアンケートを集計できるサービス。授業で教員が質問を投げかけ、学生たちがリアルタイムでそれに答える――学生が受動的に授業を受けるのではなく、能動的に学ぶ"アクティブラーニング"を実現するツールとして、大学を中心に活用されています。
YouTube:https://youtu.be/0wODd2EmH4U
多数の声をリアルタイムに受け取り、スピーディーなコミュニケーションを可能にすることの恩恵は教育現場だけに留まりません。登壇者が、来場者の反応に応じてリアルタイムでトークの方向性や話題を適宜調整する――人が集まる場にそんなインタラクティブ性をもたらす「respon」は、今はセミナーやイベントなどの会場でも使用されています。このサービスがもたらす双方向性コミュニケーションは、今後ますます重要視されていきそうです。
前述したとおり、「CEDEC 2018」においては、セッション聴講後に記入するアンケート用紙の代替手段としても活用されました。アンケート用紙の右上に記載されたQRコードを読み込むだけで回答フォームへアクセスでき、その回答フォームも分かりやすさが重視されたシンプルなインターフェース。専用のサーバーを用いているため、大人数が一斉にアクセスしても接続が不安定になることもありません。
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「CEDEC 2018」において、「respon」を導入した経緯や感想はどのようなものだったのでしょうか。同カンファレンスの運営委員会 フェローを務める植原一充氏と、株式会社レスポンの代表取締役社長、森田 真基氏にお話をうかがいました。
――「CEDEC 2018」に「respon」を導入した経緯をお聞かせください。
植原一充氏(以下、植原)「CEDEC」ではこれまで、来場者のみなさんにアンケート用紙をお渡ししてご協力をお願いしてきました。それも回答率は決して悪くないのですが、筆記具をお持ちでない方がいらっしゃったりと、課題もありまして。
それを受けて、かねてから用紙ではなくWebでアンケートを取るようにしようかという案が出ていました。そんな時にちょうど森田さんから運営委員会へとお声がけをいただきまして、これは渡りに船だなと。「CEDEC」のセッションに関するアンケートを募るのに使わせていただきますという形で、機材協賛をしていただきました。
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――来場者アンケートだけではなく、植原氏がモデレーターを務めたセッション「ゲームグラフィックス20年の進化とこれから」でも活用されておられました。
植原事前の打ち合わせで「題材が過去から未来への展望までと幅広いけれど、限られた時間でどの話題を厚くすれば有益になるだろうか、聴講者の年齢層が分かれば」という課題が挙げられましたので、それならばこの「respon」をセッションでも使わせていただこう、と思ったんです。
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――実際に使用されてみて、感触はいかがでしたか。
植原設定は簡単ですし、機能も過不足がなく、意識せずに使えました。セッションでは最初に年齢に関するアンケートを取らせてもらい、セッション中も聴講者から広くコメントを受け付けていましたが、聴講者全体の傾向としては若い方も多く、実際にコメントを寄せていただけたのは内容から見てベテランの方が多いのかな、という印象でした。
――森田氏は「respon」が活用されている現場などに実際に足を運んで改善点などを模索しておられますが、今回「CEDEC」のセッションで活用されているのを見て感想はいかがですか。
森田真基氏(以下、森田)「respon」で寄せられたコメントが、会場にいる方によるものなのか、配信を見ている方によるものなのか、それがひと目で分かるアシスト機能のようなものはあるべきだなと感じました。
教育の現場でも、教員の方が講義の合間にアンケートを取ったりはしているのですが、今回のように長時間にわたって複数のコメント・回答が寄せられる現場というのは、初めてのケースでした。私自身も聴講しつつコメントさせていただいたりして、参加する側の気持ちがよく分かりました。手元ですぐコメントできるとなると、なにか言ってみたくなるんですね(笑)。
また、植原さんが「respon」で聴講者に若い方が多いのを知って、議題を若い方たち向けに切り替えておられるのを見て感銘を受けました。若い方たちはうれしかったのではないでしょうか。
植原こういう便利なツールがあると、モデレーターは休むヒマもなく頭をフル回転させる必要があって大変ですよ(笑)。もちろん、それで少しでもセッションがよくなるならいいことですけれどね。以前、 ニコニコのような形式でコメントを流す自作のツールを使ったセミナーを行ったこともあるのですが、コメントが次から次へ流れるので、うまく拾えないこともあったりするんです。それに比べ「respon」はコメントが残り続けてくれるので、テーマに沿ったものをうまく拾えました。とはいえ、コメントが流れていく方式にもよいところがあるので、どちらが上という話ではなく使い分けるのがよさそうです。
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――「respon」は、2016年に開催された「東京ゲームショウ2016」にも出展されておられました。
森田以前はゲーム会社に在籍して、ゲーム制作に携わっていたこともありました。ですから、今もゲームに何かしらの形で関わっていられたらいいなという思いもあるんです。
――ゲーム関連で人が大勢集まるイベントというと、「東京ゲームショウ」やe-Sportsの大会などが思い浮かびますが、それら大型イベントへの活用のビジョンなどはお持ちですか。
森田「東京ゲームショウ」はさまざまなブースでステージイベントが行われますよね。来場者の反応をリアルタイムで集計して、スポットを当てる要素を変える、というようなことはおもしろいかもしれません。
e-Sportsの大会では、みんなで誰が勝つか予想したり、どの試合が盛り上がったかを集計したり。これはゲームメーカーさんにご協力をいただけるならのお話ですが、フォーミュラEの"ファンブースト"のようなこともリアルタイムで実現できたらおもしろいのではないかなと考えています。
(編注:"ファンブースト"は電気自動車のフォーミュラカーによるレース「FIA フォーミュラE選手権」の制度。SNSなどによる投票で上位になったドライバーのマシンは、レース中に一度だけ急加速できる権利を得る)
スポーツでもなんでも、みんながいる場所はそれだけでおもしろいものです。その場をもっとおもしろくするお手伝いを「respon」ができればと思います。
植原実際に使ってみた感想として、インターフェースは分かりやすくてとてもよかったですよ。ぜひ、これを武器に食い込んできていただければと(笑)。
「CEDEC 2018」でも、大きな存在感を発揮したリアルタイムアンケートシステム「respon」。「人が集まる場は、それだけでおもしろい」という森田氏の思いを乗せ、教育現場、セミナー、イベント、そしてゲーム業界と、少しずつ活躍の場を広げています。
※ respon サービスを開発した株式会社朝日ネットの respon プロジェクト が独立して株式会社レスポンとなり、2018年8月31日より respon の開発・提供を行なっています。
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