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VRのビデオゲームに最も期待することの一つは、ゲームの世界へ入り込み、その中で自由に動き回れることではないでしょうか。しかし実際に自由な世界へ放り出されると、ゲームプレイが曖昧になりがちなため、何らかの誘導やゴールをプレイヤーに設定してあげることが重要になります。
2019年9月5日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」にて、「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導、こうやってみました」が行われ、いかにしてVRのゲームにおいてプレイヤーの行動を制御し、ゴールに導くかという課題が、実例を交えて解説されました。
VR空間でまず必要なもの
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セッションは、株式会社ディー・エヌ・エーとあまた株式会社が共同開発したVRゲーム『VoxEl』を例に進められました。登壇したのは企画、シナリオ、サウンドを務めた株式会社ディー・エヌ・エーのゲームデザイナーである永田峰弘氏と、開発ディレクション、デザインを行ったあまた株式会社の高橋宏典氏です。
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『VoxEl』はVIVE向けに開発されたタイトルで、プレイヤーはヒロインと共にフィールドをめぐりながら、謎解きやバトルを行います。
『VoxEl』では、プレイヤーはモーションコントローラー(ゲーム中では「ワンド」と呼ばれる)で行きたいポイントを指すことで移動する、いわゆる「ワープ移動」を採用しています。この移動方法は少し没入感が落ちますが、酔いにくいという利点があるため、少なくないVRタイトルが採用しています。移動以外にも、ワンドからエネルギーを放出したり、物体を動かしたりしながら謎を解いて進んでいきます。
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そのようなVRタイトルには、「実在感」、つまりプレイヤーがその空間の中に“いる”という感覚が必要であると考えたそうです。では更に考えを推し進めて、プレイヤーが実在感を得るのに必要なものは何でしょうか?それは「納得感」だと言います。
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納得感とは、その世界のビジュアルやサウンドの理由をプレイヤーが納得できているかどうかのことです。必ずしもリアルな表現である必要はなく、プレイヤーがタイトルの世界を受け入れていることが大事だと説明しました。
プレイヤーへの情報提示と誘導
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続いて、プレイヤーには「ゲーム開始時にまず自分が何者なのか、何をすればいいか?」を理解してもらう必要があると指摘します。『VoxEL』ではVRでテキストを読ませることは避け、代わりにゲームスタート時に以下のような工夫をしたそうです。
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暗闇の中に光だけが見えるように、視覚情報を制限します。進むべき方向以外が見えないように情報を制限することで、プレイヤーがまず何をすればいいかを把握できるようにしているのです。操作チュートリアルにおいては、テキストを使えない分、空間を狭くし、プレイヤーが何を見ればいいかを明確にしながら操作方法を教えていくという方針を採ったそうです。この空間作りは、チュートリアルを兼ねた初期誘導がデザインされていると同時に、ゲームシステムと世界観の融合も目指しています。
最初の暗い部屋から出ると、ヒロインからその世界の説明と、プレイヤーがここにいる理由、そしてプレイヤーの状態について聞かされます。そうすることでプレイヤーが世界への実在感を得られる演出です。
プレイヤーが実在感を得るためのさらなる工夫として、ヒロインがプレイヤーの身体を触る演出を加えたそうです。触られることで、「プレイヤーは不完全な召喚でこの世界に来たため、実体を持たない」という世界観の補足を行いながら、「自分には実体がない」という実感を与えます。
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続いて、VRでゲームを進めやすくするデザインについての解説がありました。「基本は前を向いていればわかる」ことを目指したといいます。というのも、様々な場所に情報が配置されていると、プレイヤーは情報を探すために総当たり戦のように360°見回さなければなりません。それでは煩雑なゲームプレイになってしまうため、前を向いていればゲームをどう進めるかが分かるデザインを意識したということでした。
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そのため、ゲーム全体が奥へ奥へ進んでいくよう設計されています。「VRのレベルデザインに課題はあるが」と前置きしつつ、謎を解いて次のエリアへ進む際に前方へと方向をリセットすることで、次にどこへ進めばいいか自然にわかるようになっているのです。
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実在感の演出として、キャラクターの仕草にも気を払ったと言います。キャラクターがプレイヤーの方を向いて話しかけたり、動きかけたりするのは大きな効果があるそうで、エル(ヒロイン)がその世界の住人として現れ、協力して謎を解く体験は「エモい」ものになると語りました。
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また、キャラクターによる誘導も有効だそうです。VR空間では、人間はコミュニケーションを取ろうとするキャラに強く反応するため、キャラクターへの注目度は何よりも大きいことを強調していました。
『VoxEL』ではヒロインのセリフや仕草によって、プレイヤーが次にどんな行動を取ればいいか誘導します。実在感を出しながら、スムーズなゲームプレイをデザインできるため「VRでキャラクターを作るコストは本当に高いが、それに見合う効果がある」と語りました。
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逆にキャラクターの強さゆえのミスもあったそうです。ヒロインの視線が、プレイヤーにインタラクションしてほしいものと別の場所を見つめてしまったために、謎解きのミスリードをしてしまったのです。「これで多くのプレイヤーを詰まらせました。VR空間内でキャラクター依存の強さを感じました」と振り返りました。
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サウンドの重要性にも言及していました。特に環境を表現する音は効果が高く、ボイスの残響音や環境音などで「その場所にいる」と感じられるといいます。低いコストで実現できる点も指摘されました。これらをしっかり行うことで、実在感は跳ねあがるそうです。
真正面からややズレた方向を見てほしい時などは、音を使った視線誘導も行ったそうです。ただこの手法も、ゲームに詳しくないプレイヤーには効果は薄く、注意を引くためには明確に長めの音にするほうがいいとも説明しました。
VRの中の世界は現実の自分とニアイコールです。プレイヤーの実在感を演出しながらも、ゲームプレイを阻害するVRならではの煩雑な問題をいかに解決するかがまとめられたセッションとなりました。