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パシフィコ横浜ノースの現地とオンラインの両面で実施されたゲーム開発者向け大規模カンファレンスCEDEC2023。モーションキャプチャーにおけるアニメチックな動きを実演する、「モーションキャプチャーを使ってアニメライズされた動きを撮影するためのノウハウ共有」セッションのレポートを多くの写真と共にお届けします。
本セッションには、スタジオイブキのテクニカルディレクター初海健氏と株式会社モーションアクターのモーションアクター・ダンス事業部部長Mao氏と株式会社モーションアクター代表取締役社長である杉口秀樹氏が登壇しました。なぜモーションアクターだけでなく、モーションキャプチャーを行うためのスタジオからも講演者がいるのかについては、モーションキャプチャーするためのスタジオと相談したうえで撮影に臨んでいるからです。
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加工を前提としたアニメチックで派手なモーションキャプチャー
今回のセッションは、スライドの通りデベロッパー側での加工を前提とした内容です。なぜなら人間の身体能力以上のことは、人間である以上できないから。CASE:01として紹介された「着地と同時に斬りたい」で、剣や刀を使うアクションでよくあるような題名通りの動きです。
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課題として、前方へ飛びながらのジャンプ斬りは普通に撮影すると着地と斬りの動作が分かれてしまい、気持ちの良い動きになりません。前へ飛びながら斬る「着地斬り」は、ジャンプの振り上げ動きと斬りの前傾姿勢とそれぞれ必要なため、どうしても動きが2工程必要になってしまいます。また、前方への慣性を止めるためにブレーキをかけると、重心と視点の問題から視点を重心よりも前にしなければバランスを崩してしまい着地が出来ません。
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そのため撮影手法としては、後方にジャンプすることで、着地と斬りの動きの差をほぼゼロに出来ます。ここでは、実際に小道具を使ってジャンプ着地斬りが披露されました。確かに、後ろへジャンプすると後方へのモーメントを受け止めるために最初から前傾姿勢となるため、斬り上げの動作が同期して姿勢が変わらずにそのまま斬り落とせます。
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この取得したキャプチャーデータを少し加工して、X値を反対方向にするだけで前方へ飛びながら斬り付ける動きを表現することが出来るのです。また前転宙返りのモーションなど収録した3つの動作を編集し統合することで、スムーズで迫力があるアクションが表現できます。
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CASE:02は「空中でシルエットを作りたい」です。普通人間は道具のサポートさえなければ空を飛ぶようなアクションを撮れません。逆を言えば、サポートさえあれば可能であるために、ここでは2丁拳銃を持っていると過程して後ろへジャンプするアクションを、もう一人がサポートすることで演じることが出来ます。
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加えて、空を飛ぶアクションも椅子を利用すればそれらしい動きが撮れますが、人間をもう一人加えればより自然な動きを付けることができるのです。また着地後に追撃するなどのアクションも撮影できますし、その活用方法は様々です。
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CASE:03は「オーバーに滑りたい!」です。ダッシュによる急な方向転換やコミカルに地面を滑らせたい時には、当然のことながら地面の摩擦力が問題となります。そのため、段ボールや毛布など何らかの素材を敷くことや、靴下や軍手にマーカーが出るよう加工したものを穿いたりして摩擦を低くすることが出来ます。ここでは、靴下の状態になって床に滑りやすい素材を敷いて実演しました。
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CASE:04は「本気(マジ)で殴りたい」です。武器を使うだけであれば柔らかいスポンジミットを使うことで、リアリティを上げることが出来ます。また、喧嘩など格闘アクションに関することですが、実際に人を殴ると危ないためパンチングミットなどを用います。しかしこれだけでなく、もう一人サポートを用意して、映画やTVドラマ的に殴られている風のリアクションを行うことでよりリアリティを出すことが出来ます。