約10年前、『ウルティマオンライン』などのオンラインゲームが上陸し始めたころのことです。熱狂的なファンがつく一方で、家庭用ゲームの開発現場では、しばしば「オンラインゲームのどこが面白いのか、わからない」という戸惑いの声を耳にしました。その後ハンゲームなどの、カジュアルゲームポータルがサービスを開始すると、オンラインゲームの開発者から「あんなミニゲームのどこが面白いのか、わからない」という声が聞かれたのを覚えています。そして今度はモバゲータウンなどの、携帯電話のゲームコミュニティサイトがヒットすると、PCゲームポータル企業の運営スタッフから「あんな小さな画面でゲームを遊んで、何が面白いのか、わからない」なんて声が聞かれたんですよ。そして今、業界で静かな注目を集めているのが、MyspaceやFacebookなどの、ソーシャルプラットフォーム上で遊べるゲーム群。日本でもSNS最大手のmixiが「mixiアプリ」のベータ版を開始して、第3者がゲームを作って配信できる環境が整いつつあります。SNSのユーザー同士で遊べる点がポイントですが・・・。例によって「どこが面白いのか、わからない」という声が、早くも上がっています。でも、これって昔からそうなんです。ファミコンブームの頃は、ゲームセンターやパソコンゲームのファンから、「あんなのは子供だまし」だと言われたモンです。「脳トレ」などの知育ゲームも「何が面白いのか、わからない」なんて言われたりしましたね。ただ、一つだけ言えるのは、新しいプラットフォームで、新しい面白さのゲームが登場したことで、ユーザー層が広がったこと。そして、その新規性や、カジュアルさゆえに「何が面白いのか、わからない」と言われ続けてきたのでは、ないでしょうか。ちなみに僕が今、一番ハマっているのが、iPhoneのゲーム。アイディア重視のゲームがサクッと遊べて、自分の生活リズムに合っています。もっとも、これも「シンプルすぎて、深みがない」なんて、言われたりするんですけどね。逆に、こうしたサイクルが止まってしまうと、つまらない。今後も「何が面白いのか、わからない」と、頭を捻ってしまう遊びが、どんどん出てくることを期待しています。■小野憲史1971年生まれ。関西大学社会学部卒。「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーランスに。ゲーム業界でジャーナリズム活動を行っている。共著に「ニンテンドーDSが売れる理由」(秀和システム)、「ゲームニクスとは何か」(幻冬舎)構成協力など。