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――ゲームの企画はどのように生まれるのでしょうか?
マーケティング的な考え方をしながら僕らはタイトルを選んでいるので、「これ面白いからやりましょう」の発想だけで動きたくないというのはあります。経営レイヤーの人間手動で、マーケティング的に有効であるプラットフォームとゲームのテーマをざっくり決めた上で、現場の人間を巻き込んで、中身は現場主導で作っていく形です。
ただ、我々の場合レビューがすごく多いです。初期の企画を作っている段階で、社長含めた週一レビューを1か月くらい続けます。1か月が終わり、骨子が固まった後も、開発フェーズが進むたびに必ずレビューが入って、細かいチェックポイントを指摘して修正していきます。開発の行程ごとにやっているので、クオリティにあまりブレがないのかなと思います。
実際にプロデューサーやディレクターと、定期的に同じアプリに関してのディスカッションを行うことで、目線をトランスポートしたり共有しています。任せて経験させてトライアンドエラーで、というよりは、僕らの持っているTipsを共有しその上で彼らからより広がったアウトプットをもらうといったキャッチボールしながらやっているんです。丸々プロデューサーに投げてしまうより、効率がいいと思っています。人材育成にも繋がりますし、ナレッジの共有の仕方としてもすごく効率的だなと思いますね。
―――御社ならではの取り組みですよね。
他はあまりこういったやり方はしていないですよね。
経営層がかなり案件に入っているので稼働は多いんですけど1本1本のタイトルが会社の命運を握っているので、現場のプロデューサーに全責任を負わせるのは違うと思うんですよ。経営陣含めて、企画レベルまでしっかり責任を負ってやるのが我々のスタイルです。
ただ、プロデューサーのレベルはどんどん上がってきてますし、企画的なスキルの他にビジネスを見る目線も同じくらいのレベルでできるまで育ってくれば、ある程度任せていくつもりです。とはいえ、1人で考えるよりは3人、4人で考えた方がアイディアは多く出ますし、インスパイアされてどんどん広がっていくので、やっぱりみんなでやるスタイルは崩さないかなと。
中央集権型全員野球スタイル、ですね(笑)
―――収益モデルですが、課金収益、広告収益、リワードのバランスを教えていただけますか。
もう殆ど課金ですね。リワードや広告はあまり入れていないです。理由はこれといってなくて、課金メインでそこに注力しているのであまり意識していなかったという感じです。今後ちゃんとしていきたいなと思います。
―――今後リリースするアプリのイメージですが、本数少なめで毎回ホームランなのか、ヒットを量産なのかどちらでしょうか。
これはもうホームランですね。全打席ホームラン狙っています。でも、何をもってホームランというのか定義にもよりますけどね。
全タイトル月1億円を売り上げる気持ちで作りますけど、実際に全タイトルで月1億円売るというのはなかなか厳しいので、月1億円を目指しつつも、現実的には、最低でも月2、3千万円は越えていかないと、という感じですね。
―――今後のアプリリリースのスケジュールについてお話できる範囲でお願いします。
うちの場合、意外とちゃんと決めていないんですよ。ここもきっと他社さんと違うところで、決めているのは、今あるラインの次の仕事くらいまでといったところです。その次以降の大枠はある程度イメージしているんですが、意図的に、具体的なものには落とし込んでいません。何故かというと、トライでやっているPCのプラットフォームもありますし、情勢やトレンドが結構頻繁に変わるので、あまり早い段階で内容を固定することは、逆に機会損失になる可能性があります。なので、大きな流れだけは把握しつつ、次のラインの仕事はきっちりと割り当てるスタイルになっています。
今後のリリーススケジュールに関しては、春先くらいまでに、モバイル向けに新作・移植合わせて4、5タイトルくらい出したいですね。PC向けにも移植も含めて2、3タイトルくらい出したいというイメージです。
―――ちなみに新作はどういった感じのアプリなんですか?
流石に新作はちょっと言えないですよ(笑)。
まぁ、でも言ったところで似たようなアプリが出てきても、あまり関係ないと思っています。どうしてそう思うかというと、前回11月にモバゲーさんにアプリを出した時に、アプリの数が多くてその中で埋もれてしまうんじゃないかとか、思ったよりユーザー取れないんじゃないかと散々心配したんですよね。あとは、もうどこのジャンルに行っても既に何かあるじゃないですか。
でも、実際出してみて、ちゃんと水準以上のものを作れば、数が多くてもテーマが被っていても、ユーザーはついてきてくれるということが分かったんです。
だから、「今まで誰もやっていないジャンルにチャレンジします!」というノリじゃないです。他社がある程度成功されているカテゴリとか、成功まではいかなくとも有望そうなカテゴリに被せていくというのは、全然普通にやります。
―――コンシューマーでやってた人がこの盛り上がりを機会に、ソーシャルへの転職を考えられている方も多いのですが、企画・プロデュース職に求められる要素を3つ挙げるとしたらはどういったものでしょうか。
僕らの場合、経験がなくても能力がある人はどんどん入っていただきたいなと思っています。ただ、分析する力は欲しいかなと思いますね。ソーシャルアプリはトライアンドエラーの連続だったりとか、データを読んで次にすべきことを見つけていくといったところがとても大事なので、自社のデータを見て分析したり他社のアプリを比較して良いところや弱点を的確に見抜く、といった分析力は最低限必要ですね。
次に応用力です。分析だけできても自分たちが運営しているアプリに落とし込めないと意味がないですし、成功しているものと丸々同じものをやっても意味がないと考えています。どこかの会社で成功したイベントや企画をそのまま自社のアプリに持ってきたとしても、ゲームバランスもユーザー層も男女比率も行動パターンも違うのに上手くいくはずがないんですよね。自分たちのゲームに落とし込んだ時に、参考にしたアプリの良い要素を上手く生かしながら、自分たちのアプリの特性を掴んだ上で、より面白くするにはどうしたらいいだろうということを広げていける応用力もとても大事だと思います。
また、企画のパターンが大体決まってきてしまってよくある企画をみんな出しがちなんですが、ソーシャルアプリの歴史はまだ1年2年しかないので、今あるパターンはまだごく一部だと思うんですよ。これから新しいパターンを作っていくというところを求めたいので、どんどん新しいアイディアを出せる発想力のある人は欲しいです。
でも発想力も、応用力や分析力とセットですよね。新しいアイディアだけ出せても質が伴わないと困るので、きちんと分析や市場やアプリの状態に基づいて有効なアイディアを沢山出せる人がいいですよね。自アプリ分析と競合アプリ分析、更に求めるならば市場の大枠のトレンド分析が出来た上で、自分たちのアプリにとって良い企画なんだろうかと考えてアウトプットしてほしいです。それは必ずしも新しいことじゃなくてもいいんですけど、真似をするにしてももその裏付けが必要ですね。真似をしていると結局どこのアプリも同じになってしまうので、そうでなくて自分たちなりに考えて新しい仕組みを作って提供していくというところで成長していけるのかなと思います。
最後は緻密さ・丁寧さですね。仕事が雑な人はやっぱり向いていないかなと正直思います。数字を見たり、ボタンの配置1つでユーザーのアクションが変わったりもするので、そういった細かいところまでこだわって見ていられる人の方が向いているかなという気はします。
これらは、最初の段階では全部備えていなくてもいいと思います。最低2つあればいいかなと。能力としてまだ開花していない状態でも大丈夫です。
―――そこはKLabで開花させる、と。
そうですね(笑)。
そもそも、この業界でキーマンとなっていろんなところで話されている方は、ソーシャルアプリやって1年とかじゃないですか。なので、やったら絶対できるんですよ!