これからご説明する内容は、前職のゲームメーカーで海外事業に関わっていた頃、実際に私自身が経験したものです。
それはiPhoneアプリがきっかけでした。2008年7月にサービス開始したApple社のAppStoreが開始され、日本に居ながらにして誰でもゲームアプリを配信できるという、開発者にとっては夢のようなサービスでした。
その反面、どうやって海外のユーザーに向けてアプリを訴求すればよいか、新たな課題に突き当たったのです。
私の所属は海外事業部でしたので、言語に堪能なスタッフが多く言葉の壁はありませんでしたが、新たなマーケットへのプロモーション手法の模索が始まりました。
その時(2009年春)、海外で急激に広まっていたFacebookもTwitterの存在を知りました。当時の日本国内では今ほど知名度はなく、個人利用はわずかながらあったものの、マーケティング・ツールとしての活用は皆無でした。無料で誰でも使えて、しかも既にユーザーが2億5000万!(2009年時点)そして簡単スタートできる!使わない手はありませんでした。
もちろんFacebookだけではプロモーションを完結できるわけではなかったので、従来の海外メディアリレーションや広告出稿も組み合わせで実施したのです。
具体的な方法は下記の図でそれぞれの役割とプロモーションプロセスを説明しましょう。
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左側の(1)Earned Mediaでは自社のSNSを構築し、ソーシャルグラフの形成を行います。もちろん「誰と何をコミュニケーションしたいか?どんな効果を期待する?」を明確にしておきます。ここでは、ゲームに関連するコンテンツを準備し、タイトルリリース前にティザー情報を掲載しながら、バイラル効果向上の為の土台作りをします。
Facebook上でのコンテンツで特にリアクションが高いのは、開発者コメント、スコアを競うものであればランキングアップロード機能、チート情報、プレイ動画等の提供が効果的です。
運用で一番重要なのは、ユーザー目線となり一番欲しい情報を提供し会話をする事です。リリース後もファンに対して「期待する追加機能は何?」など問いかけたり、ユーザー参加型のイベントを開催しコメントを拾い上げることでエンゲージメント率の高いページを構築していくことが可能です。
ユーザーからのコメントは蓄積し傾向と対策を分析した後、ナレッジベース化して開発チームに適宜フィードバックすることをお勧めします(聞きたくない事もてんこ盛りですが…)。現場では見えていなかったアプリの問題点や改善点など発見でき、次回の開発の参考にできるからです。
ということで、ネガティブな書き込みや炎上を恐れることなく、Facebookページのウォールへのコメント投稿を許可しましょう!
SNSの構築と同時に(2)のWebメディア(Paid Media)へのコンタクトを開始します。一番右側に表示してあるように、ゲームタイトルに最適であろうゲーム専門のメディアをリスト化します。
コンシューマーゲーム専門、iPhoneアプリ専門など有名メディア10〜20社に絞り込み、プレスキットを配布。ここで重要なのは、やみくもにメディアにばらまくのは時間の無駄です。
なぜならば、有名メディアに掲載されればそのサイトから他メディア、ブロガーが能動的に情報を引っ張って拡散してくれるからです。また、メディアの言語毎にリリース文章を作成すると掲載率もさらに高まります。
あと、各メディアにコンタクトする際、最も掲載してほしいメディアに対し特別な情報提供と同時に、そのサイトへの広告出稿の意向も伝えたりすると、効果的です。直接エディターさんとコミュニケーションできる場合であれば、定期的な情報提供も関係強化に結びつきます。こちらは、とても重要ポイントです!
メディアコンタクトを完了したのち、早ければ1週間以内で掲載されますので、そのページをFacebookページでリンクシェアし「掲載されました!」の告知も忘れなく!また、自社メディア(Owned Media)においても、ソーシャルプラグインで導線を張りましょう。
こうして(1)→(2)のサイクルを繰り返すことにより、ソーシャルメディア・マーケティングが形成されるのです。皆様もぜひ試してみてください!
最後に種明かしになりますが、私が関わらせて頂いたのは『Space Invader Infinity Gene』(タイトー)という2009年に配信されたタイトルで、クラシックゲームが進化した画期的なiPhoneアプリです。魂を込めて開発したプロデューサーさん、関係者の皆さんとともに「これは絶対に世界のユーザーさんに知ってもらいたい!!」と、強い想いで行った初のソーシャルマーケティングだったのです。
次回は海外の事例とともにソーシャルメディアの効果測定をお話しします。
■著者紹介
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国内ISPコンテンツプロデューサー、大手ゲームメーカー海外事業を経て現在、株式会社デジタルハーツにてソーシャルメディアを活用した海外マーケティング事業に携わる。デジタルハーツ(http://www.facebook.com/digitalhearts) 応援してます。日本を創り継ぐプロジェクト( http://www.facebook.com/tsuku.tsugu)