ネットやゲームの世界でのその感覚はさらに増します。昨日までスタンダードだったものが陳腐化し、新しい表現や技術、コンセプトが現れては消えていきます。その激動を楽しむという視点や、第三者的に俯瞰するくらいの余裕がないがないと着いていくことはできないのではないでしょうか。
年末になると、普段会えないような知人たちと忘年会と称して会うことが増えます。当然ながら、その知人たちが他業種だったりするとそれぞれの市況の話が聴けます。それはそれで、年末を締めくくるにはふさわしい話だと思います。そして誰もが最後に、「来年はもっと良い年になるといいね」と言って別れて行きます。
ある知人は、映像、映画関係のコンテンツの製作をしています。ずいぶんと長いことその業界で働いています。かつて同じ会社に働いていましたが、独立して会社を始め、あるとき他の会社に買収されて、今はその会社で製作の仕事しています。私も離れて久しいものの、映像、映画に関しては思い入れも強く、状況はだいたいわかっていましたが、実際に関わっている人たちの話は重みが違います。
まず映画館の数が減っている。もちろんそれには観客動員数が減少しているということに他なりません。先日も興業組合の発表でもあきらかですが、かつてのシネコンブームもひと段落しています。観たい映画が無いというのも理由のひとつでしょう。ハリウッド映画は続編ばかりで、食傷気味、目まぐるしいカット構成の大作ばかりで観たいと思わせるような作品が減りました。また、時間を限定して上映するという方式が自由度が増したライフスタイルの時代にマッチしないこともあるかもしれません。
そして、かつて映像ビジネスの収益回収スキームであったメディアビジネスも様変わりしました。まずDVDやブルーレイといったメディアが超がつくほど不振だそうです。ホビー系やマニアックなジャンルのメディアはまだ需要があるようですが、映画系、アダルトなどは価格が安くなっても振るわないようです。それに引き換え好調を維持しているのはネットのデマンド販売です。ニーズにもよりますが、従来よりもパーソナルなレベルでの需要が増えていることもその要因でしょう。
一方が減れば、他方が増える。完全なゼロサムゲームまではいきませんが、どうやら市場が反転してもニーズは普遍のような気もします。今後、スマートフォンやPad系の端末がパソコンとリプレイスすることが加速すれば、そのビジネスのスタイルも大きく変わってくるでしょう。しばらくすればそれが当たり前に感覚になってしまうのかもしれません。
さて、肝心のゲームコンテンツはどうでしょうか。このところ家庭用ゲームソフトの完売が芳しくありません。ネット、スマートフォンなどにおけるコンテンツ販売はそれに比すれば順調な様子です。どんな時代でもビジネスチャンスは見方を変えればあるはずです。来年はどう転換するのか今から楽しみにしています。
■著者紹介
メディアコンテンツ研究家
1960年・東京都生まれ。武蔵大学卒。レコード会社を経て、株式会社ギャガコミュニケーションズ(現・ギャガ)、株式会社セガエンタープライゼス(現・セガ)、株式会社デジキューブを経て株式会社デックスエンタテインメントを起業。映画製作配給、オンラインゲーム企画開発運営に携わる。その後株式会社ブシロード副社長、株式会社コナミデジタルエンタテインメントを経て、現在は株式会社NHNジャパンにてオンラインゲームの企画開発運営に携わる。一方で数々のエンタメ産業への造詣が深くメディアコンテンツ研究家としてコラム執筆を行う。ブログもご参照ください。Twitterアカウントはku6kawa230。