1.ゲーム大手各社、収益構造の変化進む
家庭用ゲーム機の高性能化、普及の遅れで苦戦していたゲーム大手各社の収益が改善に向かっています。その大きな要因はやはりソーシャルゲーム。動きが遅いかに見えた大手各社も各社、有力IPを積極的に投入しユーザーの獲得を進めています。コナミ、バンダイナムコ、コーエーテクモ、カプコンなど収益構造も変化させています。ソーシャルゲームの海外展開においても、有力IPの保有や長年の海外での実績は大きな武器になりそうです。
また、携帯ゲーム機の移行に続いて、家庭用ゲーム機も2013年-2014年をターゲットに次世代機の準備が進められていて、各社、これらに対応しつつ、主要なIPは家庭用、モバイル、ソーシャルなど全デバイスでの展開を前提とした戦略へと移りつつあります。カプコンが以前から提唱していた「ワンソース・マルチユース」を各社が実現しつつあります。
2.新型携帯ゲーム機発売
国内で3000万台以上の普及を果たしたニンテンドーDS、そして『モンスターハンターポータブル』という国民的大ヒットに支えられ人気を博したPSP。両方の携帯ゲーム機に次世代機が登場しました。両ハード共、本格的な活躍は2012年以降になります。期待です。
2月に発売されたニンテンドー3DSは裸眼立体視という特徴を備えデビュー。東日本大震災やソフトが揃わなかったことで当初は苦戦しましたが、1万円の大胆な値下げと『スーパーマリオ3Dランド』『マリオカート7』『モンスターハンター3(トライ)G』というキラータイトルの効果もあり、年内に400万台を突破しました。
NGPというコードネームで呼ばれたPlayStation Vitaは年末商戦まっただ中の12月に発売。有機ELを搭載したハイスペック携帯ゲーム機として映像の美麗さ、3Gネットワークに対応したネットワーク環境の整備で新しいエンターテイメントを実現しようとしています。
3.ソーシャルゲームも勝ち組、負け組鮮明に
猫も杓子もソーシャルゲームというバブルから一転、この分野でも勝ち組と負け組が鮮明になってきました。ヒット作を飛ばすgumi、gloops、自社プラットフォームで息を吐くモブキャスト、上場を果たしたKLabなど勝ち組が鮮明になる一方、ヒット作を作れなくなり苦境に陥るデベロッパーも。コナミやバンダイナムコなど資本力に勝る大手メーカーの攻勢もあり、ベンチャーが一攫千金を夢見て戦うには厳しい市場になったようです。
4.誰でもゲームを作る時代、再び?
ゲームの高性能化によって、個人でゲームを作るということが現実的では無くなりました。しかし高性能なモバイルデバイスの普及によって、再びそうした時代が訪れようとしているようです。また、ゲーム開発を支える環境整備もそれを後押ししています。
今年のゲーム業界を振り返る上で、ゲームエンジン「Unity」の大ブームは忘れられません。個人であれば無償から高度な開発環境を利用でき、iPhoneやAndroidはもちろん、WiiやPS3に向けても(ライセンス契約が必要ですが...)3Dゲームを開発する事ができます。書籍の発売やセミナーの実施も花ざかり。「Unity」以外にもUnreal Engineをベースにした「UDK」や日本発の技術ではUEIが推進するHTML5エンジン「enchant.js」など個人でのゲーム開発を後押しする取り組みが続々生まれています。
そうして開発したゲームもAppStoreやAndroid Marketで僅かな開発者登録フィーを支払えば世界に向けて販売が可能。開発環境とそれを配信する仕組みが両方整いました。こうした個人でゲームを開発できる環境整備はゲーム業界の裾野を大きく広げることになるでしょう。
東日本大震災、ゲームにも大きな影響
3月11日に発生した東日本大震災はゲーム業界だけでなく、世界に深い爪痕を残しました。ゲーム業界においてもゲームの発売中止、延期、内容の変更などがありました。また、チャリティ活動や義援金の呼びかけ、支援物資の提供など復興に向けた様々な取り組みがなされました。
地震と津波によって数多くの方が亡くなりました。そうした極限状態で、人々を楽しませる、エンターテイメント、そしてゲームがいかに無力であるかを感じ、しかし復興の過程でいかに人々を勇気づける事ができるかを学んだ一年ではなかったでしょうか。ゲームに何が出来るか、それを改めて考えさせられる一年だったように思います。
その他、番外として幾つか印象に残った出来事を順不同で連ねてみます。
「ゲーム業界、再び再編?」バンダイナムコ、セガサミー、コーエーテクモ、スクウェア・エニックス・ホールディングスと大手の再編は一段落しましたが、再びそんな兆候も見えます。ドワンゴ傘下のチュンソフトとスパイクの合併が決定し、ガストはコーエーテクモに身売り。中小規模のパブリッシャーには依然として厳しい環境が続いていて、再び動きが出てくる可能性も。
「クラウドゲーミングの流れ」OnLiveやGaikaiなど海外勢が先行しますが、日本でもNHN Japanが「G CLOUD」をスタート。クライアント不要で、クラウドスクリーミングでゲームを遊ぶ時代が来る予感もあります。現在はベンチャー的な動きが先行していますが、大手メーカーやプラットフォームホルダーも研究を進めているということで、次世代の注目技術の一つです。
「意外としぶといiPhone」スマホ市場は採用企業数、端末数の多さでAndroidがiPhoneをあっさりうっちゃると思いきや、iPhoneも提供キャリアを拡大し応戦。日本でもKDDIからも登場しましたね。今のところまだまだゲームを(一方に)出すならiPhoneというケースが多いようです。AndroidはMarketが不十分なのも難しいポイントですね。来年以降はどうなるのでしょうか?
「ゲームメディアも再編?」雑誌では「ファミ通WAVE」や「電撃ゲームス」が休刊。角川がメディアファクトリーを買収。雑誌不況が伝えられますが、ウェブのゲームメディアも楽ではないようで、身売りや売却話を多数耳にしました。参入障壁が低いこともあって競争は激しく、個人のブログサイトの頑張りもあって、ゲームメディアもなかなか大変な一年だったようです。ま、他人事ではないですが。
みなさんが今年印象に残った出来事は何でしたか? 2012年もGameBusiness.jpはゲームに携わる全ての人が知るべき情報、一緒に考えたい未来をお届けしていきます。