メディアの罪と罰、そして2012年の展望・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第7回 | GameBusiness.jp

メディアの罪と罰、そして2012年の展望・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第7回

一年を振り返るという意味も込めて今年は様々な出来事が世界中で起こりました。政治変革、金融危機、天災、人災、年末には北朝鮮の金正日の死去などがあり、2012年もさらに混迷を極める様相を呈しています。

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一年を振り返るという意味も込めて今年は様々な出来事が世界中で起こりました。政治変革、金融危機、天災、人災、年末には北朝鮮の金正日の死去などがあり、2012年もさらに混迷を極める様相を呈しています。

歴史を見ればそれは明らかで、ことの大小は違えど似たような人間は、過ち、事件を繰り返しています。その歴史のなかには未来の答えも内包しているものではないでしょうか。

さて年末を狙い澄ましたかのように、2012年を象徴するようなニュースがあります。大手経済新聞の報道に依れば、ニンテンドー3DS用に追加コンテンツの販売を開始するという発表がありました。第一弾の対応ソフトは「ファイアーエムブレム 覚醒」とのことで、今後発売予定のWii Uでも同様の仕組みを導入するとのことで、あの任天堂もとうとうネット事業に参入・・・!というトーンで記事は締めくくられています。

確かに家庭用ゲームの遊び方や取り巻く環境を考えれば、さもありなんという選択です。おそらくGREEやDeNAなどのソーシャルコンテンツへの市場や顧客の流入や流動を考えればという発表で、一部のネットのトーンでは「任天堂よ!おまえもか」的なトーンや、「遅きに逸した」的なトーンもあります。時代の流れのなかでの今回の展開は来るべくして来たもので、驚きをもって迎えるほどのことはありません。

しかし、これらの発表や報道を見たり、読んだりするたびに思い感じることがあります。

それはメディア側における論調であり、結論付けです。私自身もメディアに情報を送る立場にいた経験もありますので、よくわかりますが、大方のケースが、初めに結論ありきでの報道になります。

こういう事情で、こういう展開だから、最終的にはこうなるのではないか・・・という3段的な論調がそれにあたります。なかには、それすら考えずに、リリース発信元のスタッフの書いたリリースの通り報道するメディア(担当者)もいます。映画評論家とは言いながらも、試写室で映画も観ずにプレスリリースの文面をそのままコピー&ペーストしてまとめてしまうような連中とメンタリティは差がありません。

知人のソーシャルネット系企業の幹部も同じようなことを漏らしていました。ログイン会員が減ったことがイコール企業収益の悪化という答えをさきにもったかたちでの取材が行われ、企業関係者が、実態としてそのような事実を否定しているにもかかわらず発表論調としてはそのようになるケースがあったと聞きました。もはや何のための取材かわかりません。とはいえ、何の責任のない落書きレベルの書き込みをあてにすることも馬鹿げたことです。いずれにしても何らかのバイアスのかかっていないものを見つけるのはとても難しくなりました。情報は入手もしやすくなった分、その精度が上がっているものではないということです。


2012年はゲームに限らずあらゆるジャンルにおけるモノゴトの価値観が大きく変貌するターンになると居思います。人類が滅亡するようなことも以前から多く書きこまれていますが、どうでしょうか。今まで楽しいと思ってやってきたソーシャル系コンテンツのありかたや遊び方が変わっていくのではないでしょうか。

無意なるものに延々と時間と課金を続けることの意味を探してそこに意味などありません。個人のエゴや他人との差別化しかありません。風営法7号にも匹敵するようなゲームシステムやキャラ設定がさらに進化したら、規制の対象に取りまとめられるのかもしれません。エンタメは世の中になくてはいけないものではありません。あったらいいなと思わせるものです。その原点を逸脱して顧客や時代に過剰な負担を請うものはいつかは破たんすることは明らかです。おそらくそのときがきたら先のメディアでは、最初から胡散臭かった。ありえないと思ったなどの記事が掲載されることになると思います。それがメディアってやつの正体なんです。

2012年もよろしくお願いいたします。


■著者紹介

黒川文雄 (くろかわふみお)
メディアコンテンツ研究家
1960年・東京都生まれ。武蔵大学卒。レコード会社を経て、株式会社ギャガコミュニケーションズ(現・ギャガ)、株式会社セガエンタープライゼス(現・セガ)、株式会社デジキューブを経て株式会社デックスエンタテインメントを起業。映画製作配給、オンラインゲーム企画開発運営に携わる。その後株式会社ブシロード副社長、株式会社コナミデジタルエンタテインメントを経て、現在は株式会社NHNジャパンにてオンラインゲームの企画開発運営に携わる。一方で数々のエンタメ産業への造詣が深くメディアコンテンツ研究家としてコラム執筆を行う。ブログもご参照ください。Twitterアカウントはku6kawa230
《黒川文雄》

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