3月25日から29日まで、サンフランシスコ、モスコーンセンターで開催されたGDC(ゲームデベロッパーズカンファレンス)に参加してきました。小規模ながら、すでに80年代後半から開催されていたイベントですが、今では大規模なイベントに成長し、E3とは違った、開発者(デベロッパー)寄りなセッションや開発イベント(ハッカソン)、ラウドテーブル(討論会)などが期間中400件以上開催されており、開発者のみならずゲームビジネスに関わる人にとって、有意義なカンファレンスだと思います。セッションはたくさんあります。フリートゥプレイに関するもの、ジンガやフェイスブックをめぐるSNS系ゲームの1年間を振り返る、マネタイズに関するものや、ゲームバランスやゲームデザインなど多種多様です。また最近はやりのクラウドファンディングに関するセッションもあります。日本からのセッションも、まだすこしあります。DeNA、スパイク・チュンソフト、ガンホーの『パズドラ』はなぜ成功したのか?というセッションも人気でした。セッションと併設されるのは展示会です。今年注目を集めたのはUnity社です。任天堂やSCEとの提携で注目を集めています。また上記のクラウドファンディングのひとつ「Kickstarter」で245万ドルの資金を集めた3Dヘッドマウントディスプレイの「Oculus Rift」もありました。こちらは常に2時間程度の体験待ちの列ができるほどでした。併設の展示会場を回ると、Unity、任天堂、SCEなどの大型ブースに交じって世界中から様々なデベロッパーが参加していました。なかでもインディーズゲームコーナーが人気です。明日のメジャーを夢見ている個人のクリエーターや少人数のパブリッシャーが出展していました。おそらくこれらの中から新しいコンテンツが出てくることでしょう。その片鱗を感じさせたのは、最終日の「IGF賞」(インデペンデントゲームアワード)と「ゲームデロッパーズチョイスアワード」のノミネート作品、受賞作品を見ていて思ったことがあります。ノミネートは大型作品が粒揃いでした。しかし、表彰式の会場でのナマの雰囲気はやや違ったものでした。大型作品がノミネートされても、さほどの歓声は起こらず、フーン、まあね・・・・そんなもんだろうという感じです。その大型作品とは『HALO4』『ファークライ3』『アサシンクリード3』あたりのことです。それぞれ順当な、サウンド賞とか、ビジュアルグラフィック賞などを受賞しました。ところが、です。最優秀作品は『THE WALKING DEAD』を押しのけて『JOURNEY(風ノ旅ビト)』(ソニーのダウンロードソフト)でした。それもなんと6部門で優秀賞を受賞しました。最優勝賞の歓声の凄さはほかの作品に比じゃありませんでした。例えれば「やったぜ」とか「俺たちの(インディ)代表作品が選ばれたぜ」という感じです。スタンディングオベーションで拍手は鳴りやみませんでした。さて、『JOURNEY』そのものは大きな収益を上げているわけではないといいます。しかし、ゲーム開発者のイベントならではの歓声だと思いました。つまり自分たちの代表のような小規模なスタジオが受賞したという歓喜があったのではないでしょうか。また、日本でも同じような現象はありますが、エンタメの細分化が加速し、ニッチな市場やミニマムな中に於いてマジョリティを取れればいいというのがインディーズのルーツで、そのなかで食えればいい、うまくいけばもっとイケる!的な発想がベースにあるからだと思います。GDCでも講演した日本のインディークリエイターNIGOROの楢村さんの『ラ・ムラーナ』や『JOURNEY』もそうですが、我らが『モンケン』の取り組みは間違っていないと思うのです。さて、冒頭で案内した日本のセッションも年々減少していると聞きます。おそらくはかつてゲームが発祥した国アメリカで、今年のGDCアワードで功労賞に選ばれたスティーブ・ラッセル(スペースウォーの開発者)だったということも印象的でした。ゲームの国、アメリカの復権です。かつて、アメリカで生まれ、日本に主権を奪われたものの、再び主権を取り戻すべく動き出した開拓者の国アメリカ。自分たちの作りたいものを自分たちでできるやり方でやるという気概を感じることができました。日本も確実にそのような時代に入ってくるような気がしています。アワードの司会者(この人も開発者です)の言葉は印象的でした。「ゲームはかつてカウンター・カルチャーだったが、今はカルチャーになった」と・・・。これぞまさにゲーム開拓者の国の復権の宣言に他ならないと思いました。■「モンケン」開発中の動画プロモーションビデオhttp://youtu.be/zDiz_Qq-FI4■モンケン ホームページhttp://monken.jp/■著者紹介くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。