Animation Bootcampでは、ドリームワークスのJalil Sadool氏の「Making a Audience Believe」というセッションが行われました。「オーディエンスを信じこませること」についてのセッションであり、アニメーションを作る上で映画の役者や町中の人間の行動を観察することの重要性が述べられました。それらの観察から得た動作を自分で演じ、それを動画に撮影した上で、アニメーションを制作する過程が説明されました。これらの手法は実際にドリームワークスのアニメーション映画『不思議の国のガーディアン』にも使用されたそうです。
次のセッション「It's Alive! Developing Animal/Creature Movement」では、WB GamesのAmy Drobeck氏が馬や動物の生き生きとしたアニメーション制作手法を説明しました。先ほどの人間と異なり、自分で真似することができないため、何よりもフレーム毎のスケッチが重要だそうです。またスケッチでシルエットを理解した後は、骨格を理解するために馬に骨格を描いて走らせる解剖動画(Anatomy in Motion)が紹介されたそうです。元ディズニーのアニメーターであるDrobeck氏はこれらの手法で『ロード・オブ・ザ・リング』のゲーム内の鷲のモーションを完成させたそうです。
三番目のセッション「How to Get the Most Out of Your Mocap」はモーションキャプチャーを自動化ではなく、効率化と捉えたセッション。フリーランスのSimon Unger氏は準備、脚本、ファイルの命名規則からアクション、演出、配役、さらにはリハーサルの重要性など具体的なポイントを紹介しました。
「Animating the 3rd Assassin」と題されたUbisoft MontrealのJonathan Cooper氏のセッションでは、その名の通り『アサシン クリードIII』でキャラクター作りとモーション付けについて説明されました。まず『アサシン クリードIII』の主人公では、アスリート的なイメージを目指しました。自然な体さばきのために上半身に物理的な挙動を実装したり、木の枝を移動するときの予備動作やモーションのバリエーションを検討したり、合計330個のジャンプと280個のクライミングのモーションを準備したそうです。ゲームのイベントシーンのパイプラインも刷新するなど、技術とハードワークを結集することで高度なアニメーション表現を達成したそうです。
さらに「Giving Purpose to 1st Person Animation」では、EA/Danger CloseのアニメーターのRyan Duffin氏がFPSにおけるアニメーションのポイントを説明しました。FPSではカメラ視点がすべてプレイヤー視点になるため、NPCの動き、武器の操作などにおけるカメラアングルが重要になってくるそうです。また画面全体と武器が映る位置に関して黄金比を使用するなどの工夫も行なっているそうです。さらにダメージ表現では、意図的に折れた指を戻す、足に刺さっている釘を抜くなどの痛い表現をカメラ内に収めることにしているそうです。以上をまとめ、リアリティが強いとおもわれるFPSであっても、実際には現実にはない視点の誘導などが細かに行なっていることが説明されました。
最後の「Designing A Performance」は、『Acting for Animators』という著作でアニメーター向けの演技指導を行なっている役者のEd Hook氏とゼニマックスのアニメーターのMike Jungbluth氏の報告です。このセッションでは、プレイヤーが共感できるキャラクターや動作のために、キャラクターの距離感、NPCの思考の重要性が指摘されました。
翌日行われた「TA Bootcamp」の最初はSlant Six Gamesによる「Galactic Reign - The Tools Behind The Procedural Cinematics」と題されたセッション。同社の開発したSFストラテジーゲームの『Galactic Reign』で利用された技術が総ざらいされました。「HEXANE」という同社のゲームエンジンの紹介、惑星の描画、星々のプロシージャルな表現、Mayaからのデータパイプラインなど、多岐にわたる技術解説に及んだそうです。
次の「Rapid Prototyping at Double Fine」は、Duble Fineのゲーム『Kinect Party』の開発におけるラピッドプロトタイピングについてです。まずUnityなどの複数のゲームエンジンの検証を行い、エンジンの強さと限界を学び、速いうちに失敗することでプロジェクトの先行きを見通すことが重要だそうです。また多くの技術を利用することそれ自体を楽しむ姿勢が重要だとも述べられたそうです。
「The VFX of Diablo」というセッションでは、その名の通りに『ディアブロ3』におけるエフェクト表現について紹介されました。オンラインゲームである本作は、たくさんのキャラクターが表示され、エフェクトに割かれるリソースは限られています。そのような制約の中、どういうエフェクトにテクスチャとブレンド計算式が用いられたか、1つずつ解説されたため、非常に実用的な内容のものだったそうです。麓氏によれば、このように実現したい表現に対して計算式を導き、結果に対してもっとも効果的な手法を考えるのは、TA的なスキルが発揮される場所だといいます。
次の『Edcuation in Tech Art』もブリザード・エンターテインメントによるセッションです。登壇者のRachel Larsen氏はブリザードのTAインターンシップを修了して、現在、ブリザードで働いているそうです。ブリザードでは2008年からインターンを開始し、現在は年間40名を採用しているそうです。TAインターンの内容はMayaのツールやライティングの実習、物理の再現のセットアップなど。また、インターンシップだけではなくGDCでもTAのスキルアップをはかれるとも述べています。
「Living with Legacy Code」と題されたArenaNetのPat Corwin氏のセッションは、その名の通りレガシー化したコードとうまくやっていくための秘訣についてです。Mayaを制御するPythonを事例に、一度書いたコードを長くに渡って使うコツとして、数値を直に計算式に入れない、関数化しておく、処理とGUIは分けるなど具体的な内容が述べられました。参考文献として『The Art of Readable Code』、『Working Effectively With Legacy Code』、『Dive into Python』といった本が挙げられており、アーティストTA向けのセッションであったそうです。
最後の「Improving Facilitator Skills for Tech Artist」では、TAのファシリテーションの向上についてRavens SoftwareのPhill Sheets氏が報告しました。アーティスト、エンジニア、TAと相互の間に生じるギャップをいかに埋めるか、「金、クオリティ、時間」という3つの要素を意識したマネジメント技術などが説明されました。中でも目の前の結果にとらわれて狭い視野に陥る「Minimalist view」を戒める部分が印象的であったそうです。