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1月23日、 ゲームクリエイター犬飼博士氏による新作「あたりつき」のレセプションが行われました。本会は東京エレクトロンが主催するsolae art gallery projectの一貫で、赤坂Bizタワー25階の同社社員食堂solaeで開催。毎回、3年目となる今年は「世界の発見、発明の原点」がテーマ。「アナグラのうた」や「スポーツタイムマシン」といったゲームとメディアを融合した独特な作品で知られる犬飼博士氏の新作発表とギャラリートークが行われました。
1970年生まれの犬飼博士氏はテレビやビデオゲームといったメディアに囲まれて育ちました。その後、格闘ゲームの開発や日本におけるeスポーツの普及に関わり、現在はエウレカコンピューターに在籍、アミューズメント施設向けのスポーツとゲームを合わせたeスポーツグラウンドのプロデューサーなどを行っています。
2013年に発表した「スポーツタイムマシン」は、かけっこのモーションを記録して、過去の自分と徒競走ができる作品。山口県の商店街を始め、北海道十勝市など多くの場所で実施して、3ヶ月で1万以上のモーションのデータが収集されました。サッカー選手といった著名人だけではなく、象やチーターといった動物のモーションもサファリランドで収集、QRコードでタグ付けられたデータを再生すると動物と競争も可能です。いわば非同期型のオンライン対戦かけっことでも呼べる作品です。
今回の新作はその「スポーツタイムマシン」をより簡単に純化させた「あたりつき」というタイトルのゲーム。「絵馬タイプ」と「お守りタイプ」という2種類のものがあり、名前のとおり、日本で親しまれている絵馬やお守りからゲーム要素を抜き出したものだそうです。
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絵馬タイプでは自身の目標を絵馬状の紙に書き、目標に向かってプレイ。達成した場合、犬飼氏本人からの粗品がプレゼントされます。お守りタイプでは目標を決めて、特別なスイッチを押します。目標を達成した場合、スイッチを戻し、再び目標を設定するというループになっています。
禅問答のような単純なゲームですが、犬飼氏はこの遊びを海外のメディア研究書『10 PRINT CHR$(205.5+RND(1)); : GOTO 10』からインスピレーションを受けたそうです。この本のタイトルはコモドール64で実行可能な1行のプログラムに由来します。当日は犬飼氏自身が持参したコーディング64で実演。シンプルなコードですが、画面には複雑な図形が現れてきます。この本では他にも単純なコードから生まれる複雑なパターンを紹介しているそうです。つま、犬飼氏の「あたりつき」もいわば単純なルールから生まれる複雑な遊びということなのでしょう。
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さらにお守りタイプのデザインも『10 PRINT CHR$(205.5+RND(1)); : GOTO 10』から採用されています。プログラムから生まれた幾何学的な模様をジャガード織りで再現。絵馬を貼るための掲示板にもこの模様がモチーフ。こちらはグラフィックアーティストのスケブリこと杉山峻輔氏が模様を参考にデザインしたテキスタイルです。プログラムから生まれたシンプルな図形はどこか和風の雰囲気があり、なかなかおしゃれでした。
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ギャラリートークの後、犬飼氏に簡単にお話をうかがいました。犬飼氏は『スーパーロボットスピリッツ』や『TOY FIGHTER』といった格闘ゲームの開発に携わってきましたが、少しずつ関心がビデオゲームからゲーム自体に移っていったそうです。インターネットが普及し、すべてのものがネットワークでつながった未来にゲームクリエイターの仕事とは何かということを考えた結果、「スポーツタイムマシン」のような現実とネットワークをつなげたゲームを制作していきます。
今回の「あたりつき」には「スポーツタイムマシン」のような競技性はありませんが、よりプライベートで純粋なゲームの形式を求めた結果、目的とそれに対する行動という形になったそうです。いずれにせよ、現実の生活の中にゲームという行為を結びつける点においては同じです。絵馬タイプは今回の発表以外には展示の予定はありませんが、お守りタイプは来月から販売するそうです。
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