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ネクソン経営企画室長 熊谷峻平氏
TIFにゴールドスポンサーとしてブース出展しているネクソン(Nexon)は、イベント初日、インディースタジオやベンチャー企業を対象としたパブリッシング及び投資戦略を説明するパネルディスカッションを実施。オンラインゲーム事業の大手として知られる同社が、インディーゲームシーンにどう関わろうとしているのか、注目していた関係者も少なくないはずです。
■ オンラインゲーム・F2Pの老舗、時代に合わせてシフト
まずは経営企画室長の熊谷峻平氏による、簡単な会社説明から。1994年に設立されたネクソンは、アジア市場を中心に、長年にわたりPC向けオンラインゲーム事業に携わり、とりわけFree-to-Play(基本プレイ無料)モデルのノウハウや運営に関しては業界をリードしていると自負しています。ひとつのタイトルを息長く運営しているのも特徴で、なかには20年近くサービスが継続しているタイトルもあるといいます。
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業界の流れにあわせて最近ではスマホタイトルにも注力していて、全体収益の20%にまで成長。これまでメインターゲットだった中国・韓国市場だけでなく、日本・欧米のゲームメーカーとのパートナーシップやM&Aを通じて、グローバルなタイトル展開へとシフトしています。2012年のgloops買収、2014年のクリフ・ブレジンスキーBoss Key Productionとのパートナーシップが記憶に新しいところ。特に米国市場ではモバイル向け開発を行う新鋭スタジオと積極的にタッグを組んでいます。
■ 韓国ではインディーデベロッパーにオフィスを提供
さて、気になるインディーデベロッパーの支援について、運用本部長をつとめる朴慶桓(パク・キョンファン)氏がいくつかの事例を紹介。韓国のネクソンでは、インディーデベロッパーやベンチャー企業が入居可能な、NPC(ネクソン&パートナーセンター)と呼ばれるインキュベーションオフィススペースを提供。入居費用はネクソン側が負担し、クラウドなどの設備も利用できるそうです。
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2010年からスタートしたNPC。現在韓国で3箇所が存在
朴氏によると、このNPCによるサポートは、かつてはネクソンもベンチャー企業としてスタートし、従業員がいっしょに仕事できるスペースや設備の重要性を理解しているため、導入に至ったのだとか。残念ながら現段階では韓国でしか導入事例がないものの、将来的に日本のインディーデベロッパーへの提供も望まれるところです。
■ モバイル事業の取り組み、必要なのは“質の高いゲーム”
モバイル事業部長 金奉石(キム・ボンソク)氏からは、スマホ用タイトルのパブリッシング事例が挙げられました。韓国をはじめとする海外産のスマホゲームが日本のストアで成功するのは困難な中、同社はローカライズ面のノウハウをいかし、それまであまり定着していなかったアクションRPGというジャンルで『ソウルスラッシュサガ』を成功に導きます。
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左: モバイル部長 金奉石氏 / 右: 運用本部長 朴慶桓氏
さらに、日本のキャラクターIPを活用したゲーム開発においても、日本市場だけをターゲットにした『クレヨンしんちゃん 夢みる!カスカベ大合戦』、動物園RPG『けものフレンズ』のケロロ軍曹コラボといった、ユニークな事例が紹介。
こうしたモバイルタイトルのパブリッシングについても、パートナーシップ/M&Aの対象に選ぶタイトルについても、ネクソンが最も重要視するのは、ゲームとしての「クオリティーの高さ」「面白さ」「ユニークさ」だと朴慶桓氏は説明。日本のインディーデベロッパーに向けて、本当に面白いゲームを世界に向けて配信したいなら、ネクソンとチームを組んでいっしょに仕事をさせてください、などとメッセージを送りました。
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TIFのネクソンブースに展示されたモバイル新作タイトル
余談ですが、講演後の質疑応答で、最近話題になった任天堂とDeNAの資本・業務提携について意見を求められた熊谷氏。「他社の契約内容にはコメントできない」とした上で、いちユーザーとしては非常に興味がある、伝統的なコンソールメーカーとのビジネスアライアンスという意味ではスマホ版『FFXI』でネクソンにも前例があると述べていました。