このVMwareで培われた技術「VMware EVO:RAIL」をベースとした、オールインワンパッケージのサーバ製品「VSPEX BLUE」が発売されました。導入から15分で仮想化サーバ環境が構築できる点が最大の特徴です。製品コンセプトや導入メリットなどについて、EMCジャパンでパートナーSE部 プリンシパル システムズ エンジニアの三保尚澄氏とマーケティング本部 シニアパートナー マーケティング マネージャーの梶伸次氏に話を伺いました。
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ゲームでも求められるハイブリッドクラウド
端末のスペック向上と共に、家庭用ゲーム・モバイルゲームといったジャンル分けが無意味になりつつあるゲーム業界。モバイルゲームはもちろんのこと、家庭用ゲームでもF2P(基本プレイ無料のアイテム課金)タイトルが増加中です。いまやゲーム開発においてオンラインやソーシャル機能の実装は必須であり、多くの企業でネットワークインフラの構築・運用が求められています。
もっともゲームには「何がヒットするかリリースするまでわからない」「一度ヒットすれば短期間で急激にアクセス数が増加する」という、他業種にない特徴があります。そのためアクセス数が少ないうちは無償で使用でき、スケーラブルに拡張できるパブリッククラウドが人気。サービスを開始後、アクセス数が安定したところでプライベートクラウドにサービスを切り替える例が増えています。
こうした傾向に対して、梶氏は「パブリッククラウドとプライベートクラウドを適切に使い分ける『ハイブリッドクラウド』の考え方が重要ではないか」と警鐘を鳴らしました。パブリッククラウドは簡単・便利なサービスですが、データの保全性などをサービス事業者の手にゆだねることになります。サービスがブラックボックスになりがちな点も問題の一つです。
その一方でプライベートクラウドをオンプレミスで構築するのは、初期導入コストが発生します。インフラ構築はシステム・インテギュレーター(SI)にインフラ構築をお任せで、年間で少なくない保守・運用費を払っている企業も少なくありません。VSPEX BLUEを導入すれば、こうした問題を解決し、ハイブリッドクラウド環境が手軽に構築できる……梶氏はこう説明しました。
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梶伸次氏
日本語化されたGUIから数ステップでプロビジョニング
VSPEX BLUEはコンピューティング・ストレージ・ネットワーク・管理機構などが2Uのサーバに組みこまれた、オールインワンパッケージの製品です。VMware EVO:RAILとEMCソフトウェア(EMCセキュアリモートサポート、VSPEX BLUE Manager等が組み込まれ、CloudArray、RecoverPoint for VMs、VDP連携のライセンスもバンドルし、サーバラックに設置して電源を入れれば、すぐに使用できます。
仮想マシン(VM)のプロビジョニングも簡単で、ブラウザ上の管理画面からOSやサーバの規模を選んで、実行ボタンをクリックするだけ。VMware Workstation Playerと変わらない感覚で使用できます。必用なサーバ環境がオールインワンになった、いわゆるハイパーコンパージドインフラストラクチャ(HCI)製品の中でも、その簡便さは群を抜いています。
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非常に簡単に新しい仮想サーバーを立ち上げることができる
1台(アプライアンス)のVSPEX BLUEには4台のサーバ(ノード)が内蔵され、合計で14.4TBのストレージが内蔵されています(RAW容量として)。各々のストレージをミラーリングで使用する場合、実質的には6.5TBとなり、合計で8アプライアンスまで増設できるため、最大で50TB弱のストレージが使用できる計算です。後述のように、さらなる増設も可能です。
アプライアンスの増設と共にCPUパワーも増加し、ストレージが増えた一方で処理速度は低下した、といった問題が発生することもありません。カスタマーサポートも充実しており、24時間/365日で対応するとのこと。このほかVM単位でのポイント・インタイム・リカバリや、自動化されたオペレーションリカバリ/災害復旧オーケストレーションにも対応しています。
パブリッククラウドとの連携を実現
もっとも、これだけではオンプレミスなサーバ環境にすぎません。梶氏はVSPEX BLUEの真骨頂として専用の管理ソフトウェアをあげ、これでハイブリッドクラウド環境を実現するといいます。
鍵となるソフトウェアがCloudArrayです。これは既存のインフラストラクチャとVSPEX BLUEのストレージをシームレスに連動する機能です。これを使うと、内蔵ストレージのデータを既存のパブリッククラウドにオフロードできます。対応ストレージはAmazon S3をはじめ約20種類で、マイクロソフトやIBMなど、主要ベンダーのサービスにほとんど対応しています。
これに対して同社のストレージ製品であるVNXeシリーズを使用すれば、VSPEX BLUEのストレージ自体を拡張することも可能です(他にサードパーティのストレージにも対応しています)。しかもCloudArrayを使えば、パブリッククラウド上にあるデータを、プライベートクラウドであるVSPEX BLUEやVNXeのストレージに、オフロードできるというのです。
梶氏はこの機能を活用すれば、ゲーム業界でみられる「パブリッククラウドでゲームをスタートさせ、プライベートクラウドで安定運用する」というサービスフローにも、柔軟に対応させられるのではないかと語りました。他に仮想マシン単位でバックアップをとったり、データの重複排除や圧縮もかけられます。なにより「これを仮想サーバごとに実現できるのがすごい」と梶氏は補足します。
このほか、VSPEX BLUEマーケットという機能も紹介されました。これはVSPEX BLUE向けのアドオン機能をダウンロードして、さまざまな機能が追加実装できるというものです。将来的には、パートナー企業も含めたエコシステムの構想もあるといいます。梶氏は「VMwareの技術をベースとしているため、拡張性が非常に高い」と語りました。
社内エンジニアをインフラ構築・保守から解放する
三保氏は「クラウドサーバを活用する上で、重要なのがデータの切り分けという概念」だと指摘します。アイテムのデータベースなど、仮に外部に漏れてもダメージが少ないものはパブリッククラウドで問題ないが、顧客データなど高い安全性・堅牢性が求められるものは、プライベートクラウド環境での運用が求められるのではないか、というわけです。
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三保尚澄氏
一方でオンプレミスなインフラ構築は、これまで社内のサーバエンジニアや、SI業者に一任されてきました。しかし、本来であればサーバエンジニアはインフラの保守運用ではなく、ゲーム開発に集中すべきです。一方でSI業者にインフラ構築を任せきりにして、中身がわからないというのでは、オンプレミスのメリットも減少します。そこで、ハイブリッドクラウドというわけです。
「新しいゲームの開発やテストのために、短期間で仮想サーバを立ち上げたい……そんな研究開発用途から、実際のサービス運用まで、幅広い用途で使ってもらえれば」と梶氏は語ります。初期導入コストが発生するだけに、インディゲーム開発者が手軽にというわけにはいきませんが、ある程度の規模のスタジオであれば、検討すべきソリューションの一つであるように感じられました。