
Gray氏は最初に、「現実逃避」をして他の世界に入り込みたがることは、ビデオゲームと深い関わりがあると述べました。画面やコントローラーを介しているため、キャラクターが自分ではないと思ってはいながらも、ゲームに没頭するプレイヤーは「現実逃避」をしていると語ります。次にGray氏は、自身が11歳の時に没頭していたという『FINAL FANTASY VII』を例に挙げ、このゲームはキャラクターやワールドがまるで現実世界と地続きになっているような感覚を与えてくれたといいます。

では、氏の開発した『Monument Valley』は「現実逃避」とどのように関連しているのか。Gray氏はこのゲームを「自ずとほほえみが出てしまうような場所」にし、通勤時や短い時間でであってもスマートフォンを取り出して「現実逃避」できるようなゲームにしたかったと語ります。
Gray氏は次に、「現実逃避」という観点でVRを見るとどのようになるのかを語ります。VRではヘッドセットを被ることによって、現実世界からは完全に切り離されます。見えるものも聞こえる音も、全てがVR世界のものになり、プレイヤーはさらに没頭できると言います。しかし、タクシーが走りビルが立ち並ぶような現実世界を作ると、些細な違和感で「これは偽物だ」と脳が感じてしまうと述べます。そこで「少しだけ超現実的な世界」を作り上げ、プレイヤーの想像力を刺激すればVRの世界はより信頼性のあるものになると、ustwo gamesが開発したGearVR専用タイトル『Land’s End』を例に語りました。

ネガティブなイメージで語られる「現実逃避」がなぜ、自分にとって重要なのか、そして「前向きな現実逃避」についてもGray氏は述べました。
少年時代に長らく入院していたことがあったGray氏。入院中は医師の許可なしに外出することができず、ずっと外に出ることを望んでいたといいます。そのことを、涙ながらに父親に訴えると、父親はこっそりと病院から連れ出してくれました。1時間ほどの短い間でしたが、Gray氏はかなりリフレッシュできたと語ります。
Gray氏は、このような実体験を例に挙げながら、病院ではなく違う場所にいるような感覚を、VRで「現実逃避」をすることによって与えられれば、患者のケアに役立たせることができ、実際に使用している病院もあるといいます。

Gray氏は最後に、日本のアニメ「ソードアート・オンライン」を例に出しながら語ります。例えば、現実世界では暗いことばかりの人でも、「SAO」のように仮想現実の世界ではより豊かな人生を送ることができる。そのような「チャンス」を与えてくれるようになるのではないかとVRの未来について述べ、セッションを締めくくりました。
協力:Nexon