
メタバースプラットフォーム・VRChatでカジュアルに採用面談をする!……そんな画期的な試みが、GMOペパボ株式会社と株式会社Vの共同主催で実施されました。
その一方で、メタバース空間で面談をする意味、そもそもどのような経緯で今回の企画が成立したのか? 疑問に思っている方も多いはず。
各担当者に話をうかがってみると、企画の意義はもちろんのこと、VRChatそのものの面白さや世界的なムーヴメントなども知ることができ、エンタメとしての可能性を感じさせてくれました。
本稿ではカジュアル面談の当日のようすをお届けするとともに、関係者のインタビューを通じてVRChatそのものの魅力も掘り下げたいと思います。

なぜメタバース空間だったのか
このたび実施された面談の正式名称は「日本人向け1対1お話ワールド『NAGiSA(ナギサ)』スーパーカジュアル面談」。VRChatに公開されているワールドのひとつ「日本人向け 1対1お話しワールド NAGiSA」を、制作者の協力を得て特別仕様版として開発。ここを会場に、面接者と求職者がそれぞれVR空間でカジュアルに面談するというものです。
10名ほどの求職者は、面談担当者が待つ空間(NAGiSA)へと1名ずつ入室。入退室の時間を含む、約10分という持ち時間の間に1対1で雑談をします。
その内容は自己アピールから質問までさまざま。中には自作で3Dアバターを制作しているという方も参加していて、面談担当者を「凄い!」とうならせる場面もあり、面談イベントはあっという間に終了しました。

しかしなぜメタバース空間を面談会場にする必要があったのでしょうか? GMOペパボで採用を担当しているHR統括部部長・船橋恵さんはこのように話します。
船橋:弊社はこれまで、オリジナルグッズの作成・販売ができる「SUZURI(スズリ)」や、レンタルサーバー「ロリポップ!」の運営などをおこなってきました。
VR関連の取り組みはそのSUZURIの中で進めていたのですが、2025年1月に新たな体制としてメタバース推進室を立ち上げることとなり、このたびメタバース空間を使って弊社に興味を持っていただける方とのカジュアル面談を実施しました。
採用の段階でメタバースを活用すれば、その方面で情報感度の高い方とマッチングできるだろうと考えたからです。
面談担当者として求職者とカジュアル面談をしたのは、SUZURIの担当部長に加えメタバース推進室の室長も兼任する杉山寛氏。メタバースでの面接は初ということで本人も緊張気味です。
杉山:今回、我々がこのような面談方式を採用したのも、今後弊社がメタバース領域のビジネスを拡大させていく中で即戦力となる方は勿論、新卒入社いただける方にも参加いただきたい思いもありましたし、求職者にも我々のスタンスや『色』を感じてほしいとも考え、双方向で解像度を高める狙いがあったのが理由でした。
この形式であればマッチしやすいですし、新しい取り組みに前向きな企業であることが一目瞭然でお伝えできますからね。
また今回の取り組みで企画・運営協力したV社のCEO・藤原光汰氏はこう語ります。
藤原:弊社はメタバースに興味がある会社さんや団体へ向けて、企画・制作・プロモーションのお手伝いをしている会社です。今回の取り組みでも、「こういうことができますよ」とご提案して、お手伝いさせていただきました。
面談に使用したNAGiSAというワールドは、VRChat内に無数に存在するワールドのひとつで、1対1でお喋りすることを想定したワールドとなっています。
アイドルの握手会に使えるかな?など色々と用途を考えているうちに面談にも使用できると思いつき、このたびちょうどメタバース推進室を発足したGMOペパボさんに企画をご提案させていただきました。

意外と凄かった!VRChat
そもそもVRChatとはどのようなものなのでしょうか?
VRChatとは、アメリカのVRChat Inc.が運営する人気ソーシャルVRプラットフォームのこと。
VRヘッドセットと両手に持つコントローラーを使用することで最高の没入感が得られますが、それらを所有していなくても通常のPC環境で楽しむこともできます。ただしヘッドセットとコントローラーにはトラッキング機能も備わっているため、それらVR機器を使用しないとアバターのリアクションが制限されてしまうという点には注意が必要です。
最近では人気VTuberグループ「ホロライブ」の火威青(ひおどし あお)さんが熟練のユーザーであることが分かり、ホロライブのファンの間で大きな反響をもたらしていました。自身の配信では「火威青」の姿(アバター)のままVRChatのワールドを楽しそうに案内しており、高品質のアバターでもサービスを問題なく利用できるVRChatの凄さをうかがわせていました。
藤原:全世界のクリエイターが日々、おもしろいワールド(VR空間)を公開しており、ユーザーが訪れることができるワールドは、とある有志の調べではおよそ20万にのぼると報告されています。ユーザーさんの中には初心者をエスコートするのが大好きな方も多くいらっしゃり、“案内役”として常駐し、初心者向けに操作方法などを教えてくれる人がいるワールドもあったりするので、行けば即楽しいことが待っているという状況だと思います。
多くのユーザーは、主にユーザー間コミュニケーションを楽しんでおり、ゴールデン街をイメージした日本人向けワールド「ポピー横丁」には通算で400万人以上の人が訪れています(2025年3月現在)。さらに2022年には商標登録もされるなど人気のワールドとなりました。

そのほか、謎解き・脱出ゲームも人気で、このカテゴリのゲーム系ワールドを紹介してくれるハブ的なワールドも存在するほど。2018年から開催されている人気VRイベント「バーチャルマーケット」は述べ来場者数が100万人を突破しており、2024年3月~4月に開催されたTBSのVR音楽ライブイベント「META=KNOT」では、一日で最大3000人超の来場者を記録するなど、多くの人が集まる人気イベントも登場しています。
ちなみに3000人規模のライブとは、リアルで言えばZeppがほぼ満員になるほど。
Zepp Tokyoの収容人数はスタンディングで2709名、Zepp Nambaならスタンディングで2513名です。そのほか収容規模3000人の会場ではTOKYO DOME CITY HALL、立川ステージガーデンなどがあり、人気アーティストと同等の規模だと言えるでしょう。
藤原:もちろんひとりで楽しむこともできますが、やはりみんなでワイワイできるところがVRChatの醍醐味です。VRデバイスを介せば場所なんて関係ありませんから、その中で新たなつながりができたり、同じ趣味が話せる仲間ができたりします。ライブ会場へ行って同じ趣味や価値観の『戦友』と出逢ったりするようなものではないでしょうか。
エンタメだけではなく、今回の面談のような用途にも活用できることが実証されたVRChat。まだまだ活用の伸びしろはありそうです。

面談を終えてみて、実際どうだったのか?
ほかに類を見ない試みを実施してみて、その感触はどうだったのでしょうか? HR統括部部長の船橋恵氏、V社のCEO・藤原光汰氏、メタバース推進室室長の杉山寛氏に感想をうかがいました。
船橋:売り手市場の昨今、会社説明会の募集をしてもなかなか人が集まらない状況がある中、今回は思っていた以上の反応があったな、という感触です。
第1回でこの反応なら、第2回、第3回と続けることで、より多くのかたにご興味・ご関心を抱いていただけるのかなと思います。
藤原:弊社のBOOTHでは、TVアニメ「無職転生Ⅱ」のロキシーやシルフィになりきれるVRChat用の髪型・衣装セットを公式コラボ商品として販売していたり、「劇場版 きんいろモザイク」のコラボ髪型・衣装セットや、人気VTuberグループ「あおぎり高校」の皆さんとのコラボ商品も扱ったりしています。
まさに好きなキャラクターになりきれるところがVRChatのおもしろさのひとつ。またカジュアル面談のような催しもでき、まだまだ可能性がある領域だと思います。
メタバースを活用したい、または興味はあるけどどこに相談したら良いかわからないという会社さんや団体さんは、ぜひ弊社にご相談いただけましたら、企画の段階からすべてサポートできるかと思います。ぜひ宜しくお願いします!
杉山:初めての試みということもあって当初はどうなるか不安がありました。ところが実際に求職者と面談してみると、顔が見えないこともあって緊張感が薄まり、距離の縮まり方が早いなと感じました。
私自身、アバターのおかげで参加者のみなさんに心理的なプレッシャーを与えることなくまさにカジュアルに面談できたのかなと思います。
メタバースなら時間の都合がつけやすいかと思います。今後もVRChat上で交流会みたいなこともできればと思いますし、交流する場所を常設することによって、ユーザーのみなさんとの距離がもっと縮められればと思いました。
アイデア次第でまだまだ無限の可能性があるVRChat。ひとまず今回の「スーパーカジュアル面談」は大成功だったようです。

面談参加者のコメント
面談はどうしても疲れてしまうことが多いのですが、VRでの面談は非常にリラックスした気持ちで参加できました。
スムーズな進行で、とても充実した時間を過ごすことができました。
対面と違い、お仕事終わりにお家で参加できた点が良かったです。
好奇心が満たされました。
新しい分野にも強い好奇心を持って取り組む文化のある会社だと感じることができました。

¥48,400
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