
GameBusiness.jpをご覧のみなさま、はじめまして。株式会社 DeNA Games Tokyo(以下DGT)で取締役を務めています山口恭平と申します。この度は「ゲーム運営」について書く機会をいただきありがとうございます。2015年にDGTを立ち上げてから事業を推進してきた身として、ゲーム運営業界の魅力をお伝えできたらと思います。
モバイルゲームをリリース後、プレイヤーにもっと楽しんでいただけるよう、ゲーム内の機能やイベントの開発・改善を専門で行う業界です。例えば、DeNAが2009年にリリースした『怪盗ロワイヤル』。リリース当初は「奪い合いバトル」でしたが、アップデートを重ねた結果、今では「スキルバトル」がメインになり、遊び方が大きく変わっています。日々、試行錯誤をしながら開発を続け、プレイヤーに楽しんでもらえるよう、どんどん面白くしていく。これがゲーム運営です。
ゲーム運営業界はゲーム開発会社の下請けでも、ルーティンワークな業種でもありません。プレイヤーと真摯に向き合い、ゲームの最前線で「面白い」を提供し続けるためのクリエイティビティを求められる仕事なのです。この点に関しては弊社代表の井口の記事で言及していますのでご参照ください。
「セカンダリ」は2つの意味で使われます。ゲーム開発をプライマリ(一次市場)とするなら、ゲーム運営はセカンダリ(二次市場)、と市場を指す場合。もうひとつは、ゲーム運営の委託や売却をすることで、ゲーム運営の主体を他社に移管する、プロセスを指す場合です。
今までゲーム開発会社は「新規開発・リリース」から「運営」を一気通貫してきました。ですが、ゲームが長寿化すればゲーム運営にリソースを配分し続けなければなりません。そこで他の会社にゲーム運営を委託する動き(セカンダリ)が2015年あたりから出始めたと思われます。ゲーム運営会社各社が独自の戦略で業界を牽引しており、これから業界がどうなるのか、私自身も非常に楽しみです。

モバイルゲームにはさまざまなフェーズがあります。リリースしたばかりで大規模な開発が必要なフェーズ、プレイサイクルが固まってきて機能改善が中心になるフェーズ、プレイヤーに飽きが見られ新たな一石を投じる必要があるフェーズ、大規模な改修はせずに小規模な改修やパラメータやデザインで面白さを作るフェーズ、などです。
大事なのはそれぞれのフェーズで、クリエイティビティを発揮し面白さを届けることです。そのため、絶えずプレイヤーが何を望んでいるのか、ゲームのどこに伸び代があるのかの双方を判断しなければなりません。ゲーム運営のクオリティによってゲームの面白さが変わるので、業界の運営水準が下がるということは、大きくいえばゲーム業界そのものの損失になり得ることも考えられます。プレイヤーが期待しなくなってしまっては元も子もありません。ゲーム運営は、常にプレイヤーの期待を超える楽しさや面白さを追求し続けることが不可欠なのです。
私も小学生の頃に将来の夢で「ゲームクリエイター」と書いていた人間の一人ですが、そのときのゲーム業界に憧れる最初のきっかけは、「自分で考えた面白いゲームを作りたい」という欲求からきていました。ゲームクリエイターを目指す学生と話す機会がありますが、「自分で考えた面白いゲームを作りたい」というところからゲーム業界を目指しているのでは、と感じることが多いです。
私はDeNA入社後、『三国志ロワイヤル』というゲームをプロデュースできる機会に恵まれました。このとき、新規のゲーム開発もゲーム運営も経験し、プレイヤーに面白さを届けるためのクリエイティビティが求められ続ける、ゲーム運営の魅力を知りました。先に書いた通りゲーム運営には「クリエイティビティの発揮」が必要なのですが、「運営」という言葉からの連想なのか、作業的なイメージを持たれている方もいます。新規のゲーム開発とは違う形でプレイヤーから多くのフィードバックをもらうことができ、自分のクリエイティビティをも改善できる貴重な環境といえるでしょう。この魅力を業界内外に伝えていくことは、私個人としてはもちろん、業界を牽引していく一社の責任として強く感じています。

おこがましいかもしれませんが、私は業界全体でゲーム運営の業界水準を引き上げたいと思っています。ゲーム運営にはさまざまなスタイルがあります。どのスタイルが良いという話ではないのですが、プレイヤーがゲーム運営に期待して、その期待を超え続けるためには業界水準を上げ続ける必要があります。
技術力や企画力、デザイン力だけではない、プレイヤーに面白さを届けるコンテンツとして、リアルイベントやSNSを使ったキャンペーンなど、ゲームをプレイする以外でもプレイヤーに面白さを届ける取り組みが広がっています。こういった取り組みも業界全体で協力ができれば、より多くのプレイヤーに楽しさを届けられるのではないでしょうか。私は他社と情報交換の場を設け交流をオープンにしながら、ゲーム運営に対する考え方をブラッシュアップしていく取り組みや、施策の共同実施など、業界全体で運営水準を上げていきたいと思っています。
業界水準を上げるだけでなく、ゲーム運営をもっと知っていただきたいと思っています。繰り返しになりますが、ゲーム運営はルーティンワークではなくクリエイティビティが求められ、プレイヤーの「面白さ」を追求していく魅力的な仕事だと知っていただきたいと考えています。その結果、ゲーム運営に憧れて業界に飛びこんできてくださる方が増え、プレイヤーのゲームに対する期待値も上がれば嬉しいです。
今後も本連載やさまざまな取り組みの中で、ゲーム運営の内側を継続して発信をしていきたいと思います。次回(9月25日更新予定)は、ゲーム運営の現場で活躍するプロデューサーやプランナーの魅力についてお伝えさせていただきます。
■プロフィール
山口恭平
株式会社 DeNA Games Tokyo 取締役
2012年、DeNA入社。2013年に『三国志ロワイヤル』をプロデュースし、その後ゲーム運営に従事。シニアプロデューサーを経たのち、2015年からDeNA Games Tokyo立ち上げに伴い、タイトル運営組織/事業の責任者を務める。企画部部長を経て、2017年、DeNA Games Tokyo(http://denagames-tokyo.jp/)の取締役に就任。
山口恭平
株式会社 DeNA Games Tokyo 取締役
2012年、DeNA入社。2013年に『三国志ロワイヤル』をプロデュースし、その後ゲーム運営に従事。シニアプロデューサーを経たのち、2015年からDeNA Games Tokyo立ち上げに伴い、タイトル運営組織/事業の責任者を務める。企画部部長を経て、2017年、DeNA Games Tokyo(http://denagames-tokyo.jp/)の取締役に就任。