国内唯一の「ゲームビジネスに特化したマーケティングリサーチ&コンサルティングファーム」であるゲームエイジ総研は、モバイルゲーム『アークナイツ』で新しく実装された常駐イベントがユーザー数やプレイ時間にもたらす影響をまとめたiGageデータを公表しました。iGageは同社が運用するマーケティングデータサービスで、約240万名のスマートデバイスのユーザーのログを自動取得しています。
『アズールレーン』や『ブルーアーカイブ』で知られるYostarが配信する『アークナイツ』は、重厚な世界設定やストーリーが人気を呼ぶタワーディフェンスゲームです。2022年7月14日には、期間が設定されていない常駐イベント「ファントムと緋き貴石」が実装されました。
さまざまなイベントや戦闘がランダムに発生するマスを選びながら最深部を目指して進んでいき、途中で失敗すると前回のプレイで得たキャラクターやアイテムがリセットされてしまうイベントで、ユーザーからは「ローグライク(イベント)」と呼ばれています。
通常のモバイルゲームではイベントを開催するとアクティブユーザー数と平均プレイ時間の両方が増加する傾向にありますが、『アークナイツ』に追加された今回のローグライクイベントではユニークな傾向が見られました。

ローグライクイベントの追加でもアクティブユーザー数は変わらず
アクティブユーザーの推移を見ると、2022年7月25日の週に大幅な増加が見られますが、これはローグライクイベントと直接の関係はなく、29日から開催された2.5周年を記念した大型イベントによるものです。集計期間の全体を通してみると、30万人程度で推移しているのが分かります(下図グラフ1)。

そして、ローグライクイベントが追加された7月11日の週では、アクティブユーザー数の増加はほぼ見られません。この週には復刻イベントも同時開催されましたが、そちらの集客力も高くはなく、アクティブユーザー数増加に大きな影響は及ぼしていないことが分かります。
プレイステイタスを見ても、7月11日の週は新規ユーザーや復帰ユーザーの数にも大きな変動はなく、それらを多く獲得したのはやはり25日の週の2.5周年イベントであることが分かります(下図グラフ2)。

平均プレイ時間は1.3 倍に増加
次に、プレイ時間の推移を見ていきます。『アークナイツ』はモバイルゲームの中でも平均プレイ時間が長めとなっており、45分程度で推移しています。しかし、ローグライクイベントが実装された7月11日の週の平均プレイ時間は72.7分となっており、前週の約1.3倍を記録。特に、120分以上プレイしているユーザー数が大幅に増加しています(下図グラフ3)。

ローグライクイベント実装の前週までは120分以上プレイするのは多くとも3万人以下でしたが、7月11日の週以降はこれが6万人以上になっています。ローグライクイベントは順調に進めてもクリアまでに1時間ほどかかるほか、ランダム要素や収集要素もあるため繰り返しプレイするユーザーが多く、その結果として長時間プレイするユーザーが増加したと考えられます。
モバイルゲーム全体を通して見ても、平均プレイ時間が60分を超えるゲームは非常に少なくなっています。今回のように、1つのイベント追加によりもともと平均プレイ時間の長いタイトルが、それをさらに大幅に増加させるというのは非常に珍しいケースです。
一方でアクティブユーザーの増加はあまり確認できず、このイベントは新規ユーザーを獲得するよりも、既存ユーザーに長時間プレイしたくなるゲーム体験を提供することで、その層の満足度に寄与していることが分かる結果となりました。
また、『アークナイツ』はすでにアニメ化が発表されているため、アニメ放映時期にも大きなユーザー動向の変動が起こると予想されます。
どのような施策によって新規ユーザーの増加を狙うのか、または、既存ユーザーの満足度を獲得できる施策はどんなものがあるか。それらをデータで検証できたひとつの事例となったのではないか、とゲームエイジ総研はレポートをまとめています。