
スパイク・チュンソフトより、ニンテンドースイッチ向け『超探偵事件簿 レインコード』が2023年春に発売されます。
本作は大人気シリーズ『ダンガンロンパ』の制作陣が再集結した、ダークファンタジー推理アクションゲームです。超巨大企業の支配下で、雨が降り続く奇妙な街。記憶喪失の探偵見習い「ユーマ」と、ある契約に基づき彼に取り憑く「死に神ちゃん」は街を歩き回り、多発する未解決事件の調査を行います。
この度編集部では、本作のシナリオ・ディレクションを務めるトゥーキョーゲームスの小高和剛氏にインタビューする機会を得ました。制作する上で特にこだわった部分や、みんなが期待する「CERO設定」、『ダンガンロンパ』との違いや『トライブナイン』の制作状況など、たっぷりとお聞きしました!

『レインコード』は「5年以上作っている気が狂ったゲーム」

――『レインコード』制作のきっかけは?
小高和剛氏(以下、小高)スタートしたのは『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』(2017年)の発売前後なので、もう5年以上制作に費やしていることになります。2000年代の『逆転裁判』、2010年代の『ダンガンロンパ』というエポックメイキングな推理アドベンチャーがあった中で、次に2020年代を代表する作品を作ろうと思ったのがきっかけです。今までより広い世界のお客さんに届けたいという思いから、3Dでの推理アドベンチャーにしようと決めました。
――予算度外視で5年以上作ってる気が狂った作りのゲームとツイートされていましたが、現在の開発状況を教えてください。
小高来年の春に発売することが決まっているので、素材はすべてが揃っている状況です。これだけ街にバリエーションを持たせて自由に移動できるという世界観やギミックは、これまでのニンテンドースイッチ向けタイトルでなかなかなかったと自負しています。
――特に時間をかけて作っている箇所は?
小高「謎迷宮」という事件の謎を具現化した場所があるのですが、事件ごとに毎回違う迷宮が出てきます。そこで起きるトラブルも違う作りをしているので、物量がとにかくすごい! 実は、スイッチのロムに入れられる量のギリギリを攻めているんです(笑)。
また、ドラマもすべて3Dで紡がれるので、その動作などもすべてモーションカメラをつけて収録しました。開発者からすると「なんでこんな面倒なことをしているんだ?」と思われるくらいだと思います。使い回しが1つもないので、そこはすごく時間がかかりましたね。

――舞台は「雨が降り続く奇妙な街」。タイトルが『レインコード』であるように、やはりストーリーにおいては“雨”がキーワードになってくるのでしょうか?
小高最初の企画書に書いた仮タイトルから『レインコード』となっていました。それは、「探偵たちの物語=ダークな街の雰囲気」という僕のイメージから生まれたものです。雨の降り注ぐ街に佇む探偵たち……という絵面がまず浮かび、それを小松崎(小松崎類氏:ダンガンロンパおよび本作のキャラクターデザイン)に描き起こしてもらったところ、すごくカッコ良かったので「これでいこう!」となりました。

――「謎迷宮」についてももう少し詳しく教えてください。
小高「謎迷宮」とは、主人公・ユーマに憑いている死に神ちゃんが作り出す異世界のことを指します。事件が起きると謎にまつわるダンジョンが出現し、そこで謎を解き明かしながら前に進んでいくと、真実というゴールにたどり着きます。
そもそも舞台となる街は大企業に支配されていて、事件が起こってもすぐに隠蔽されてしまうんです。真犯人を暴いたとしても、捕まえることも罰することもできない。しかし、死に神ちゃんが作った「謎迷宮」で真犯人を捕まえると、現実世界にも何かしらの影響があり、犯人も逃げることができなくなる……という世界設定になっています。
『ダンガンロンパ』との違いとは?
――本作のジャンルは「ダークファンタジー推理アクション」で、『ダンガンロンパ』は「ハイスピード推理アクション」というジャンル名になっていましたが、違いは?
小高『ダンガンロンパ』ファンの方に「ダンガンロンパっぽい!」と喜んでもらうのも大事なことなのですが、『ダンガンロンパ』を知らない人にも「面白そう!」と思ってもらいたいという2軸を一番重要視しました。
『ダンガンロンパ』の舞台は学校でしたが、『レインコード』は街を舞台にしており、規模感が大きく変わっています。『ペルソナ』シリーズのように全体のマップから場所を選択して3Dのマップを探索する形になりますが、街も複数あるのでかなりボリューミーになっています。『ダンガンロンパ』の毒々しさや不条理なところを内包して、さらに色々な要素が入るニュアンスを「ダークファンタジー推理アクション」というジャンル名に込めました。
――では共通している「推理アクション」についても詳しく教えてください。謎迷宮内での推理は、『ダンガンロンパ』の学級裁判のように会話劇で進んでいくのでしょうか?
小高はい。会話をしながら迷宮を進んでいきます。進んでいく中で謎が“障害”として出てくるので、それを突破しながらゴールを目指していってください。壮大な『ビートたけしのウルトラクイズ』だと思ってもらえれば(笑)。

――キャラクターについても伺いたいのですが、「超探偵」というのは『ダンガンロンパ』で言うところの「超高校級」(※類稀な才能を持つ)と同じ意味で考えて大丈夫でしょうか?
小高その通りです。意味としては同じですが、「超探偵」たちは“捜査に特化した異能力”を持っています。

――主人公のユーマは超探偵の「見習い」という設定でしたね?
小高まだ異能力は持っていないので「見習い」ですね。なので、死に神ちゃんと協力して謎を解いていくこととなります。
――主人公が能力に目覚めていなかったり、性格が気弱な部分も『ダンガンロンパ』と共通していますね。
小高記憶喪失で気弱っていうのが、僕が作る主人公のパターン(笑)。それは、世界観が特殊なものが多いので、プレイヤーと同じタイミングで「初めまして」にしたいから。この世界において「超探偵」は常識ですが、「知っているよね?」という体でこの世界観に放り込まれたら困惑しますよね。なので、主人公に「超探偵ってなんですか?」と聞かせることで、同じ気持ちで世界観に入って行けるようにしています。
――とすると、死に神ちゃんはモノクマ…?
小高いえ、そこが『ダンガンロンパ』と違う点になります。死に神ちゃんはユーマを立派な探偵に育て上げるための教育係。死に神ちゃんは“バディ”なので、モノクマのような敵対するキャラクターではありません。

――ということは……裏切らない?
小高死に神ちゃんだけでなく、他にもたくさんメインとなるキャラクターたちが登場します。そんな彼らに対して、疑心暗鬼になるシチュエーションもある……ということだけお伝えしておきます(笑)。
■CERO未定にドキドキ……現状は「Zにはならないが、全年齢向けにもならない」
――CEROは現在未定となっていますね。現状、どのくらいになりそうでしょうか?
小高Z(18歳以上)ではないですが、全年齢対象にも絶対にならないです。今、Zにならないように頑張っているところですね(笑)。
――ハードをニンテンドースイッチにした理由は?
小高「推理アドベンチャーを楽しんでもらう」という根っこの部分を大切にした結果、ニンテンドースイッチを選びました。『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』のように“推理アドベンチャーは携帯機から生まれる”という文化が強い気がしているのも大きいですね。移動中・休憩中に本を読む感覚でプレイしてもらえるのが、推理アドベンチャーの良いところだと思っています。
――それ以外のハードでリリースする予定はありますか?
小高ないです。これに関しては未定ではなく、はっきりと断言します。
――トータルのプレイ時間はどれくらいを想定されて作っているのでしょうか?
小高40~50時間を想定しています。街中を巡って住民たちから小さい依頼を受けたり、また『ダンガンロンパ』の時にもあったような親密度イベントもあったりするので、やり込み要素やサブクエストも豊富な作りになっています。
■『トライブナイン』の現状は?『ダンガンロンパ』続編の可能性についても直撃
――『トライブナイン』もリリースを控えていますが、発売はいつごろになりますか?
小高『トライブナイン』も鋭意制作中です。こちらも完全3Dで作っているので、物量がとんでもなくなっている。アカツキがとんでもないお金のかけ方をしていて(笑)、すごくリッチな作りになっています。ゲーム画面を見せてもらったのですが、コンシューマーゲームに引けを取らないクオリティなので、完成までにもう少し時間がかかってしまいますが、待っててくれると嬉しいです。
――ゲームを3Dで制作する場合、2Dと比べて作り方・進行など大きく変わったりするのでしょうか?
小高全然違いますね。一番大変なのは、トリックの部分。距離感などがすべて丸見えになってしまい、ごまかしが効かないんです。例えば『ダンガンロンパ』1章で水晶玉を当てたシーンが分かりやすいですが、3Dで作ると「この距離で当たんないでしょ!」となってしまうので、そういった部分の見え方の調整は苦労しました。

――ちなみに『ダンガンロンパ』の続編の可能性はありますか…?
小高『ダンガンロンパ』が終わったから『レインコード』を作ろう、という意識は僕にはありません。いつになるかわからないですが、続きを作るかもしれないし、そうじゃないかもしれないし…。そもそも、僕じゃないクリエイターが手掛ける『ダンガンロンパ』があっても良いと思っています。
――ありがとうございます。最後に『レインコード』の発売を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
小高『レインコード』は『ダンガンロンパ』っぽさを内包しつつ、新たなIPとして様々な要素もたくさん含ませました。『ダンガンロンパ』ファンに限らず、知らない方にも楽しんでもらえると思っています。もちろんどんでん返しもありますし、すごく心が揺さぶられるので、リリースを待っていてください!
『ダンガンロンパ』シリーズとは違った、新たなゲーム性を堪能できそうな『超探偵事件簿 レインコード』は2023年春にニンテンドースイッチ向けに発売予定です。