以前にも触れましたが、最近の「和ゲー」の海外での売り上げは低下しています。日本での洋ゲーの売り上げはといえば、元々それほど高いものではなかったと思いますが、今もなお向上する様子を見せません。以前に著述した「海外で売れない和ゲーの憂鬱」という記事において、海外の和製RPGファンの方々から「最近買わなくなった理由」を聞き出して紹介しました。その理由としては、「子供っぽい」、「アクション性が低く、ストーリーがくどい」、「キャラのデザインが気に入らない」という厳しい声が多かったのです。残念ながら、日本のゲーマー達から「洋ゲーを買わない理由」を聞き出すようなアンケートはまだ行われていませんが、恐らくそれほど違う理由とはならないでしょう。「キャラのデザインが気に入らない」というのはおそらくお互い様のことでしょうし、逆に「ストーリー性が低く、アクションが面白くない」という声が日本の方々からあがることでしょう。考えてみれば、これは別に新しい発見でもなければ、驚くような真実でもありません。というのも、この事実が既に別のエンターテインメントの世界で現れているからです。それはすなわち映画です。洋画と邦画を見比べてみれば、その相違点が明らかに見えてくることでしょう。それぞれの文化で特に人気を得た映画をみてみればよくわかります。欧米で大人気をほこる作品は、アクション性が高いものだ、といっても過言ではないでしょう。特に最近のハリウッド映画は、特殊効果やCGがすごいものばかりです。これに対して邦画は、わりと「穏やかな」ものが多いように思われます。もちろん邦画の中でもハリウッドの影響を受けたものが数多くありますが、わりと落ち着いたものが多いと思います。もちろん予算の量がその違いの大きな一因となっていますが、他にもそれぞれの文化や国民の性格が大きく関わっているのはいうまでもありません。でもそれを無理に合わせろという人はいるのでしょうか。邦画はアクション性や特殊効果のクオリティが低いから何とかしろ、という映画ファンの声を、少なくとも私は聞いたことがありません。ではなぜゲームの世界ではこんなに違うのでしょうか。当然のことですが、ゲームの作者たちももちろん映画から大きな影響を受けています。海外ではハリウッド色に染められた作品が、最近のハードの進化に伴って大幅に増えてきています。それにも関わらず日本のゲームは邦画、というよりもとりわけアニメから影響されているものがほとんどだと思います。映画同様、予算の差異が大きく関わっていることは否めませんが、欧米のゲームと日本のゲームを比べる際には国民性はもちろん重要な要素です。その国民性を無理矢理に変えようとするのもいかがなものかと思います。最近の洋ゲーは派手なものが多く、日本が技術的には遅れている気がしないでもないです。しかしながら、去年のハリウッドを代表する作品である「アバター」のように、洋ゲーの中には派手さを求めてばかりでわりと内容が浅いものも少なくありません。私が今年プレイしたゲームの中、派手で華麗なグラフィックをみせてくれる作品はみんな欧米のものでしたが、新鮮でオリジナリティがあり、プレイしていて楽しいと思ったゲームは日本のものがほとんどでした。欧米のゲーマーがゲームに求めているものは、日本のゲーマーのそれとは明らかに違います。私に言わせてみれば、最近の洋ゲーは内容よりも見た目を優先し過ぎではないかと思います。しかし、これはおそらく変わりようのない事実です。欧米で人気を得て国際企業として生き延びるのであれば、日本のゲーム会社は欧米の文化と国民性を理解し、身につける必要があります。それが可能であれば、売り上げもやがて向上するでしょう。しかしその代償として、和ゲーの個性が犠牲になり、ゲームの世界から「彩」が無くなるのではないか。そのように私は危惧しています。今の日本のゲーム業界は、「売り上げ」と「個性」とのどちらかを選ばなければいけない、まさにその判断を迫られている状態にあると思います。これは私の個人的な意見となりますが、日本のゲーム会社にはそのまま「やりたいことをやって」、頑張っていただきたいのです。ひょっとすると売り上げ的には欧米の会社を上回ることは難しいかもしれません。しかしそれよりも何よりも、日本は個性を守るべきだと思うからです。さて、長文になりましたが、これからのゲーム市場がどうなるのか。私の、そして皆様の楽しみはつきません。
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