もちろん、逆に日本では問題ではないものの、米国では受け入れることができないような内容もあります。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ゲーム修正の中で特に先駆者とも言えるのは他でもない、任天堂です。老若男女を問わず、家族全員で抵抗なくゲームを楽しんでもらいたい、このような方針が現れているのでしょう。日本の任天堂はもちろんのことですが、アメリカの任天堂(Nintendo of America)はなおのこと厳しく、ファミコン時代から日本のゲーム作品を徹底的に修正しています。暴力的な表現やちょっぴりエッチなキャラクターデザインといった映像的なものはもちろん、セリフにおける「酒」「売春」「宗教」を連想させるような言葉は全部、害のないものに変更されています。
欧米のゲーム翻訳界で特に有名な例としては『ファイナルファンタジーIV』(1991)の米国版である『Final Fantasy II』(同年)があります。(少し話がそれますが、FFシリーズのナンバリングは欧米とはかなり違います。ファミコンやスーパーファミコン時代には和製RPGはまだそんなに人気がなく、FFという代表的なシリーズでも全作が翻訳されたわけではありませんでした。例をあげると、日本のFFIV=米国のFFII、日本のFFVI=米国のFFIIIとなっていました)。『ファイナルファンタジーIV』では娘が殺されそうになったテラが、その犯人だと勘違いした吟遊詩人と戦う場面があります。そこでテラは「貴様よくも娘を!」と怒鳴るのですが、日本語の「貴様」のように相手をけなす二人称は英語にはありません。それを汚い言葉を使わずに訳すことは非常に難しいのですが、米国版では