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―――現在、力の入れようとしてソーシャルゲームとブラウザゲームではどのようなバランスでしょうか?
力を入れているという点ではソーシャルゲームですね。何をもってソーシャルという問題もありますが。
―――収益的には多いのはどの分野でしょうか?
他社のプラットフォームで展開しているものがメインになります。『ブラウザ三国志』も爆発したのはmixiでスタートしてからですね。
―――mixiアプリは3億円くらいの規模と伺っています
『ブラウザ三国志』は様々な場所でチャネリングしていますが、全部合わせるとそれくらいの売り上げ規模ですね。
ただ、ONE-UPという会社は外から見ると今は『ブラウザ三国志』が有名になっていて、今回のインタビューもソーシャルをフィーチャーしたものになると思いますが、自分達としてはソーシャルゲームやブラウザゲーム、という風に区切ってはなくて、「オンラインゲーム」を作る会社という意識でいます。ウェブ技術だけの会社でもありません。プレイステーション3のゲームの通信部分を協力している案件もあったりします。
―――それはインフラ側の案件ですか?
サーバサイドの開発ですね。東京も大阪も、開発メンバーのルーツとしては、 MMOゲームなんですね。運営や企画にもMMOをやっていた人が多くて、なので、『ブラウザ三国志』も「みんなでごっちゃになって遊ぶ楽しさ」みたいなものを追求したゲーム性があると思うんですけど、そういう発想の根源みたいなのもMMOにあると思うんですよね。
―――今後もあくまでゲーム会社で、ブラウザだとかコンシュマーだとか、そういうフィールドはそんなにこだわってないですか?
フィールドは全くこだわらないですね。
逆に、僕らがマーケットを選ぶときに、ここで作りたいんだっていうエゴを変な形でださないように注意していて、徹底的に市場を研究した上で、ここにニーズがあって儲かるからやるっていう、あくまでマーケットインでプロジェクトはスタートします。
その後、どういう風に料理するかっていうのは、企画・プロデュースなりエンジニアリングなりの勝負になって、この段階では現場に非常に大きな裁量権があるのですが、それであっても根本的な軸をぶらしてはいけないと思っています。
ここで儲けるっていう、これをユーザーに届けたら売れるっていう何かがまずあるべきだと思います。どっちが上でどっちが従属するみたいな話ではなく、プロジェクトの成立の仕方として、そういうあり方が、健全なやり方だと思うやり方だからこうしているのですね。
―――何か目標としてイメージする会社はありますか?
日本のゲーム業界のプレイヤーって仲が悪いと思うんですよ。自分のところの情報を全然公開しないじゃないですか。 例えば GDC とかみても、僕は最初に行ったときは衝撃を受けたんですけど、いかにして自分はこの分野で失敗したか、ポストモーテムみたいな話をするんですよ。 日本ではそんな話絶対しないじゃないですか。かっこ悪いし。いい情報も悪い情報もオープンにして、他の人が二の轍を踏まないように市場を育てるみたいな風潮が薄いと思うんですね。 ゲーム業界がそうである一方で、僕は Web の技術がベースなんですけど、Web 業界の方を見ると、結構オープンやってる。勉強会とかも活発ですし。
一方で、Web に軸足があった会社がゲームに参入してきてますが、『Mafia Wars』の焼き直しみたいなものも多くて、やはりゲームの深さが足りないと思う。今後、あらゆるプラットフォームでそうであったように、リッチ化っていうのは避けられない流れとしてあると思うんですよね。そういう大規模開発やゲーム性の高いゲームの開発となっていくと、ゲーム業界のノウハウが活きてくると思うんですね。
―――御社がそれを体現すると
そうなりたいですね。
―――今そういう会社はないですか?
今までは各社苦戦していたと思いますが、でも段々と出てきてると思います。例えばコーエーさんとかコナミさんとかすごいなあと思いますね。Webからの人でどんどんリッチに作っていこうって目立ってるプレイヤーはいますかね?
―――結構薄いですね。そこはハードル感じますね。
ゲーム業界ではリッチすぎるコンテンツを作ってしまって、その「リッチ」が変に美麗グラフィックとかの方にばかり行っちゃって、投資とリターンのバランスが合わなくて失敗する例も多いと思うんですよ。Webな人に学ばなきゃならないってことはたくさんあって、クオリティの高いものを迅速に作ってリリースして改善していく技術というかメンタリティというか。リッチ化と、迅速さと、いいバランスをとりつつ、大きくなっていけたらなって思いますね。
―――今後の御社の展開については何か特徴あります?スマートフォンやりますとか。
スマートフォンやってますよ。まだ出てないですけど、開発ラインが複数ありまして。
―――開発言語とかってPCとモバイルとスマホととかで、そのときのチームで決めてるって感じですか?それともレギュレーションを定めてますか。
あまりないですね。今作ろうとしてるスマートフォンアプリは、メインの言語が C# でしょ、プラグインは Objective-C や Java で書いて、サーバサイドの socket 使ったリアルタイム通信の部分は C++ で、HTTP な部分は Ruby か PHP ですね。このアプリ作るだけで5言語ありますね。
―――Rubyは結構います?
東京開発グループにいる Web 系の人は大体 Ruby です。まぁ HTTP のサーバーサイド作るなら Ruby か PHP になってますね。
―――C# 使うケース初めて聞きましたね。
Unity で使うんですね。もうそろそろ、MMOとかのサーバーサイドを C++ で書くのを止めたいんですけど、なかなか止められないですね。
―――海外展開はどのように考えていますか?
うちって国際色は結構豊かだと思います。事業開発グループは9名ぐらいいまして、このグループは日本人が4名くらいで、あとは全部外人なんですよ。イラン人、台湾人、香港人、カナダ人、色々いますよ。開発にも今2人外国籍の人がいて、タイ人と中国人がいますね。
―――事業開発部はどのような部署なのでしょうか?
主に海外展開を進めていくようなイメージですね。
―――現状、どのような状況でしょうか?
タイ語の『ブラウザ三国志』がでているのと、あと英語でFacebook ではじめた『Lands and Legends』というのがあります。これはブラウザ三国志の西洋モチーフ版みたいなものなんですけど、広告を出すとユーザーは取れるもの、定着率が低くて難しい。Zynga とかのわかりやすいゲームと比較すると『ブラウザ三国志』ってルールが難しいですから。
ただ、USに子会社ができまして、まだ一人なんですけど、『ブラウザ三国志』も含めた、今開発中のタイトルの海外展開を自社でできるような体制は強化していきます。
―――アメリカは Facebook が中心ですか?
アメリカだとそうなりますね。
―――国でいうと、日本以外の狙ってるマーケットとかプラットフォームとかは?
今は東南アジアを積極的にやってますね。
―――それも基本は Facebook ですか?
タイの場合はエンモという現地サイトと連携してやっています。
―――海外でのコンテンツ開発はいかがでしょうか?
やはり難しいですね。ゲームの面白さの根本的な部分って、企画や紙の段階では見えなくて、チーム全体が一丸となって作り込んでいくプロセスで見えてくるものだと思います。企画者からデータワーカーからプログラマーからグラフィッカーまで、開発者全員がなんとなく持っている共通体験があるからこそ、「一丸となる」ってことができると思うんです。
なので、日本に優秀な企画者がいるから日本コントロールで作ればいい、という考え方は失敗する。企画が日本で、安いコストで中国で作るみたいなのは、EA みたいに本当に大規模にやってるところ以外、上手くいってる話をあまり聞いたことがないですね。僕は中国でゲーム開発会社を作って潰した経験があるので、身をもって学びました。(笑
―――では御社としては、海外ってのはあくまでマーケットとして捉えていると
今のところはそうです。
―――でも今後は現地にチームをスタジオを作れたら
そうですね。運営とかパブとかではあります。開発で海外をやるんだったら、もう本当にまるっと全部現地に任せる形になるでしょうね。
―――運営もでもやっぱり、マネタイズの面でまかせっきりでも仕方ないですもんね。
そうですね。ただ、例えば、日本では正月イベントを1月1日に合わせて打つけど、台湾では2月に打つとか、国の事情に合わせてシステムも企画も運営も変えなきゃいけないですよね。これは多言語にすりゃいいって問題じゃなくて、運営もシステムも企画も全部含めてノウハウを溜めないといけないので、その点は経験豊富な人がいる価値を活かしていきたいですね。
■著者紹介
株式会社HatchUp 八反田智和
1980年鹿児島県生まれ。慶応義塾大学卒。楽天リサーチ、外資広告代理店でのインタラクティブプロデューサーを経験した後、2009年より、ソーシャルゲーム業界に入る。WEB系人材会社営業(ソーシャル担当)を経て、2010年よりソーシャル企業支援会社HatchUpを設立、現在に至る。ソーシャル系イベント【STR】およびブログ(http://socialtoprunners.jp/)を運営している。