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「世界で2番目に売れているゲームから飛び火した業界再編の予感」
Doodle Jump - 注意:パクりすぎないように!
去年のアップストアの全米ダウンロードランキングの有料総合のNo1アプリは『Angry Birds』、そして第2位は『Doodle Jump』だった。
●Doodle Jump
このゲームは、ジャンプしながら宙に浮いているボードを跳ねていき、高くへあがっていく、縦スクロールゲームの定番となっている。
実は2年前に筆者がiPhoneアプリのことを調べているときに、GClueの佐々木氏に紹介されたアプリが『Papi Jump』であり、『Doodle Jump』をはじめて見たときにびっくりしたものだった。
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●PapiJump
そのあと、同様のゲームは、リクルートから「SUUMO JUMP」が無料で発表され、
●SUUMOJUMP
つい最近、ナムコから、パックマンがジャンプしていく「PAC'N-JUMP」が発表され、好評を博している。
●PAC'N-JUMP
筆者は、「パクリ」については、「完全模倣ではなくオリジナリティが多少でもあれば良い」という立場をとっており、それ自体にはなんら問題ないのであるが、この状況についてのいくつかの示唆を述べようと思う。
なお、これだけの事実を読むと、iPhoneアプリの世界がとんでもなく節操のない世界に見えてしまうが、「Mega Jump」のように、明らかにゲーム性を昇華させたようなアプリも生まれており、またユーザに支持されていることも、予めつけくわえておきたい。
●Mega Jump
まず注目したいのは、iPhoneアプリの世界でのゲームメーカーの動きの変化だ。去年のiPhoneのゲームランキング10位以内は、「つみねこ」以外がゲームメーカーの大作ゲームが占めた。「やはり本物は強い」という印象を内外に与えた強烈な出来事だった。
しかし、最近、パックマンに二番煎じをやらせたことや、他の大手ゲームメーカーが簡単なパスルゲームを出したことを見ると、彼らは大作ゲームを作ることを放棄し、個人ディベロッパーと同じ土俵まで降りて来るしかないという状況まで追い込まれているらしい。もしかしたら、大手ゲームメーカーの外注先が、名前を借りて出しているという産業構造の変化も既にあるのかも知れない。
それはともかく、大手ゲームメーカーたちがプライドを捨てて、ミニゲームや二番煎じの世界に来るとなると、個人や弱小のゲームディベロッパーにとっては大変な脅威になるだろう。
ただ、脅威にさらされる彼らはもともと、利益がないところでがんばっているので、実は被害があまりない。では誰が損をしているのかといえば、ファンを落胆させ、高付加価値のゲームを作らなくなった当の大手ゲームメーカーこそ、自分の首をしめているのだ。
去年のWWDCでスティーブジョブズは、「iPhoneは素晴らしいゲーム機だ。みんなゲームを作れ!」と鼓舞した。そのような気運もあり、去年はiPhoneに大作ゲームがどっと押し寄せた。しかし、無数の弱小ディベロッパーが、アップストア上で彼らをすぐにランキングの外に追い出してしまう。こうして、大手ゲームメーカーはスティーブジョブズの食い物にされたわけである。
次に注目したいのは、無料ゲームで有料ゲームを焼き畑にするという動きである。リクルートは「SUUMOJUMP」を無料で公開した。これがどのようなビジネスを意図されているのかは知る由もないが、ポイントはこのゲーム制作の原資が、彼らの広告収入ということである。
『Doodle Jump」のような有料ゲームを買おうとしている消費者に、「無料で使いなよ」と差し出すわけだが、これができるのは、彼らの顧客である一般店舗から広告費を頂いているからだ。
一般店舗にしてみれば、広告を出さないとお客さんがこないから、麻薬付けのように広告費を垂れ流すしかない事態である。
一方で、無料でゲームをダウンロードした消費者もまた、そのような店舗に行くわけだから、知らないうちに広告費分のしわ寄せが来ていることになる。
「一般人にはすべてのものを無料化、その原資は企業からとればいい。」というのは、まさにGoogleの発想だ。
さすがに、そんな企業もちゃんとしたゲームをつくれない。しかし、ユーザは、ちゃんとしたゲームではなくても十分だ。
『SUUMOJUMP』は二番煎じであってもいいし、気合いを入れてつくらなくてもいい。外注先に「『Doodle Jump」 みたいのつくっておいてね」といえばすむし、そもそもの彼らの目的をかなえるのに、必要以上のオリジナリティはいらない。
ゲームパブリッシャーは、まず専用デバイスの普及状況を見て参入を決めるのと対照的にスマートフォンを自社ビジネスのマーケティングに活かすという立場の企業は、iPhoneよりも普及台数の多くなるandroidでアプリを作りたがる。
ゲーム会社は一旦iPhoneに照準をあてると、Appleという会社に気に入られるというよりもiPhone所有者を満足させるために、面白いゲームをつくろうと必死になるが、マーケティング会社は、できるだけ多くのスマートフォンに対応させることが至上命題なので、ユーザよりも、メーカーや端末そのものに気がまわってしまう。彼らは人を集めることが目的で、それ自体のユーザ体験価値を向上させて、ユーザからお金をとるということを目的としていない。
ゲーム会社が全てのOSや端末にあわせて、そのユーザたちに同じゲーム体験を実現しようとすると、莫大なコストがかかり、お金を払う価値のあるものを作るとなるとさらにハードルがあがる。なぜなら、マーケティング会社がそこそこの無料ゲームをたくさん作るからだ。
このように、有料アプリをandroidで展開するのはかなり難しいということになる。
開発ディベロッパーは、オリジナルのアプリを作るよりも、「あのゲームに似たようなものを作ってね」と企業や代理店から言われた通りに作る方がラクチンだし、その方がお金になる。
実際に、iPhoneアプリ開発をしていたベンチャーの多くは、androidに転向し、受託開発をメインにするようになった。
ゲーム業界はスティーブジョブズの好き勝手にされ、アプリディベロッパーは、Googleの好き勝手にされてしまった。
我々クリエーターは、こういった波にもめげずに、ユーザの体験価値を生み出し、ユーザを育てていかなくてはならない。
時には近視眼的な見方から離れ、俯瞰して歴史に学び、そろそろ自分たちがトライすべきことの原点に立ち返るべきだ。
そもそもiPhoneは、新しいモバイルデバイスを定義し、androidは、「人造人間」にちなんで全ての家電にインテリジェンスを注ぎ込もうとしている。
前者で言えばゲーム機ではないし、後者でいえば携帯電話ではないのだ。我々が目指すべきビジネスは、今目の前にしていることよりも遥かにワクワクするものであるはずだ。
ゲーム会社にとって、目の肥えているユーザが集まるiPhoneは、新しいゲームを投入すべき格好のテストマーケティングの場であり、アンドロイドがもたらす、テレビや看板、カーナビ、体重計、自転車ナビなどは、新しいゲーム体験と市場をクリエイトする大チャンスとみるべきだろう。
いままで熱狂するゲーマーをつくりあげてきたゲーム業界が袋小路に追いつめられるなんてまっぴらご免だ。
来る4月19日に、「スマート化する時代の新しいビジネス」と題して、業界の大御所を招いた緊急特別講演をする。
●スマート化する時代の新しいビジネス
http://www.eagle-inc.jp/lastsamurai
いまのアプリビジネスに不安をもってしまった方も、これから挑戦する方も、既存のITビジネスとは違った新しい世界に興味あるのならば、ぜひ参加いただきたい。このセッションから、AppleやGoogleを超えるビジネスが生まれるかもしれない。
●藤永真至(Eagle inc. Founder)
2006年より、毎週開催「平日夜の粋な勉強会」(計200回、参加者4000名)と毎晩開催「モバイル夜間大学」(計100回、参加者2000名)などの勉強会を主催。2010年、「Google,Apple,Eagle」を合い言葉に、インターネットの再定義に挑戦すべく、Eagle.incを創業。iPhoneアプリ開発スクール「RainbowAppsSchool」(参加者800名)、業界向け交流会「スマートやろうぜ」(参加者700名)、業界向けセミナー「モバイルビジネス氷河期サバイブ計画」(参加者600名)を主催するかたわら、iPhoneアプリのレーベル事業を展開、自社リリースのiPhoneアプリは40点を超える。2011年より、フジテレビジョンと共同開発である「怒濤のゲームアプリ。1000本ノック」を開始。代表作は、『TalkWriter』『ちゃぶ台返し』『Zen Artist』など。著作は、「売れるiPhoneアプリの法則」(秀和システム)
<Eagle incの主催イベント>
●「スマート化する時代の新しいビジネス」
iPhoneの登場は、今までのi-mode型ビジネスのプレイヤーのみならず、世界中のゲーム業界や音楽業界、マスメディアなど、あらゆる領域で大きな変革をもたらし、androidの登場は、スマートフォンという言葉を定着させながらも、テレビなど携帯電話以外の家電をも変革しつつあります。今回は、スマートフォンビジネスの現場で活躍するGClueの佐々木氏、MTIの小畑氏、アドテック東京の武富氏、電通デジタル・ホールディングスの藤田氏、電通の細金氏をご講演者に迎え、今後どんなビジネスや取り組み方が考えられ、どんな準備をすべきか議論したいと思います。
<講演タイトル>
1.スマートテレビでのアプリケーションビジネス
2.スマートフォン市場で成功シナリオに導くIT戦略
3.ニッポン・モバイルビジネス陣営のグローバル化にエールを贈る3つの楽章
4.米国事例にみるアプリのマーケティング、そしてグローバル展開
5.クリエイティブ表現はこう変わる!
<開催日時>4月19日(火)13時-18時
<開催場所>TKP代々木ビジネスセンター ホール25A(2号館5F)
http://tkpyoyogi.net/access/index.shtml
<参加費用>5000円
●お申し込みはこちら
http://www.eagle-inc.jp/lastsamurai