ネクソンでは、2014年6月の検挙をきっかけに、神奈川県警と共にゲーム業界の不正行為に関する知識向上及び取り締まり強化を実施。2014年12月から開始した「不正行為対策強化キャンペーン」では、 以下のような取り組みが行われました。
■不正行為対策強化キャンペーン
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・啓発ムービーの公開
・IT 専門学校におけるゲームセキュリティ講座の実施
・「オンラインゲーム基本ルール」のページの公開
・「不正行為防止キャンペーンポスター」の配布
・「神奈川県インターネットカフェ等事業者連絡会」にて不正行為について公演
など
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今回の贈呈式は、この「不正行為対策強化キャンペーン」に対するもので、神奈川県警察サイバー犯罪対策課長の森元博氏、及びネクソン代表取締役社長のオーウェン・マホニー氏が出席。同社は「今回は、これら一連の取り組みに対して、神奈川県警サイバー犯罪対策課の創設以来初となる感謝状が弊社に贈呈されました。弊社は今後も神奈川県警と協力し、今後もチートツールを始めとするゲーム内の違反行為撲滅に向け、より一層努力してまいります。」とコメントしました。
ネクソンが公開している神奈川県警察へスペシャルインタビュー
では、具体的に何が違法でどのような取り組みが行われたているのか。インサイドでは、今回の贈呈式では語られなかったユーザーに対する情報を、ネクソン運用部の加藤友秀氏と神奈川県警サイバー犯罪対策課の信太正樹氏に話を伺ってきました。
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―― 神奈川県警から感謝状が送られたということですが。
神奈川県警:はい。感謝状贈呈に至った理由はいくつかありまして、ひとつは県内の専門学校における「セキュリティ講座」の実施があります。また、ゲームのオフライン大会において直接ユーザーさんに呼びかけさせてもらったり、ポスターやスペシャルインタビュー動画の制作、インターネットカフェ事業者への不正防止講演の際にネクソンさんにご協力頂いたというのがありまして、ひとつのキャンペーンとして感謝状を送らせていただきました。
―― では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
ネクソン:ゲーム側の方では、システム的にチートツールを遮断するアップデートは行っていました。しかし、アップデートをしてもツール側はそれをまた回避してくるというイタチごっこの状況が続いておりまして。そこで、神奈川県警さんに相談して昨年の6月にチートツール使用者を立件、書類送検されるという形に至りました。もちろん、一度立件したからといってツール使用者がいなくなるとは考えてはいませんので、その後もシステムアップデートや、ゲーム内の巡回は引き続き行っています。
―― 実際、ゲーム側での取り組みとしてはどこまでできるのでしょうか。
ネクソン:チートツールに応じたシステム側の対策が主ですが、先程も言ったようにアップデートしたところでイタチごっこになってしまいますので、チートツールを使っているユーザーさんがいないかを見るため、ゲーム内の巡回を行うようにしています。
―― つまり、チートツール使用者を見つけてアカウントの停止まではできると。
ネクソン:そうですね。
―― そこから先は、警察側の対応ということですね。
神奈川県警:はい。事案にもよりますが、まずは相談から始まりますね。ゲームユーザーさんから直接来ることもあるんですが、今回のような場合は、ネクソンさんから直接「こういうことがあって」というご相談を頂いていました。それでお話を伺うと、「これはちょっとした注意やアカウント停止で済まされるものではないな」ということで捜査という形になりました。
―― 他のサイバー犯罪との違いというのはあるのでしょうか。
神奈川県警:「模倣性が高い」というのがありますね。「道徳」と「法律」の狭間、ギリギリのラインというところがあるのですが、もちろん法律に触れている部分は、こちらから指摘していかなければいけないところであると思っています。
―― 捜査の過程はそんなにかわらないんですね。
神奈川県警:そうですね。どのサイバー犯罪でも言えることですが、まずは「ログ」を調べる所から始まりますね。
―― チートツールは「使用」と「販売」の問題がありますが、どちらも違法となるのでしょうか。
神奈川県警:「チート」にも種類があって、全部が全部というわけではありませんが、現時点で言えばどちらも法律違反に問われる可能性はあります。例えば、刑事では問題にならなくても民事で責任を追及されるといったこともあります。
―― エミュレーターサーバーの問題についても同様でしょうか。
神奈川県警:そうですね、神奈川県警でもエミュレーターサーバーによる検挙事例があります。現在は当時に比べてその数が明らかに減っており、チートツールについても同じことが言えると思います。
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―― それはメーカーから見ても明らかでしょうか。
ネクソン:そうですね。去年の検挙事例がオンラインゲーム業界でも初のことであったため、それをきっかけに他社さんでもそういったアクションが取りやすくなったとは思います。
―― 私も昔からオンラインゲームをプレイしており、「不正ユーザーの取り締まりも運営の役目」という認識が大きいのですが、今回のような取り組みが行われていくことで、「役割」の部分も変わっていくのでしょうか。
ネクソン:運営側だけでは取り締まりきれない部分というのが出てきた以上は、今後も警察の方にご相談させて頂く形にはなると思います。
神奈川県警:交通違反を例に見ても、必ず切符を切るわけではありません。口頭注意で済まされる時もあるし、悪質であれば逮捕する時もあります。対応はまちまちですね。
―― 神奈川県警が対応されるということは、他の都道府県は別の管轄になるのでしょうか?
神奈川県警:そうですね。基本的には神奈川県の被害者から相談を受けて検挙するという形になります。しかし、こうして前例を作っておけば、他の都道府県で同様の件があってもやりやすくなると思うので、お住まいの警察にご相談頂ければと思います。
―― スマートフォン向けのネットゲームに関しても同様の対策が取られているのでしょうか。
ネクソン:ネクソンとしては、全体的なタイトルでそういった不正行為への対策を行っていく方針を強めていっております。
―― コンシューマゲームのチート行為についてはどうお考えでしょうか?
神奈川県警:コンシューマと一口に言っても、その場だけでできてしまうタイトルもあれば、インターネット対戦出来るタイトルもあります。そういったタイトルは、ほぼオンラインゲームとかわらないので同じようなことが言えると思います。
―― ということは、今回の事例はPCのオンラインゲームだけではなく、全てのゲームに適応されるということでしょうか?
神奈川県警:可能性としてはあると思います。とは言え、例えば自宅でファミコンのゲームを改造していたとして、いきなり逮捕されるかといえばそんなことはありません。ただ、その行為が最終的に「業務を妨害しているのでは?」となってきた時には、事件的になると思います。「ゲームというのは“楽しい”という場を共有するものであって、それを乱すような事があれば、たとえ違法でなくても止めよう」というメッセージは発信していきたいです。
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―― ツール使用者に共通する年齢などの特徴はありますか?
ネクソン:『サドンアタック』のプレイヤー自体が中高生から大学生を中心としていますので、必然とツール使用者も若い方となっていると思います。他社さん事例では20代や30代といった年齢層も見られますので、そのタイトルのユーザー層によると思います。
―― 2014年6月の検挙があった後のユーザーさんの反応はどうですか?
ネクソン:以前のチートツール使用者のアカウント停止措置は、月に100件から200件くらいあったんです。事件があってからは少し減っていたんですが、その後また件数が戻ってきてしまっていました。ですが、事件後に展開した不正防止キャンペーンが効果的で、それ以降は激減しまして。システムアップデートやゲーム内巡回もそうですが、やはりこういったキャンペーン活動が功を奏しているようで、ユーザーさんからも「最近の『サドンアタック』ではチートツール使用者を見かけないね」というお声も頂いております。
―― 本日はありがとうございました。