
いま、政府関係によるゲーム産業の支援が活発に行われています。背景には日本のコンテンツ産業は輸出産業として大きな武器になるため、現在積極的に支援を進めている状況があります。
たとえば昨年には経済産業省によるクリエイター支援プロジェクト「創風」が開始。支援対象にはゲームクリエイターが含まれていることで、個人クリエイターの間でも大きな注目を集めました。
そんな「創風」をはじめ、現在の政府支援の状況はどのようになっているのでしょうか。IGDA日本SIG Growthによるカンファレンス「ゲーム開発者の公的支援制度とキャリアパスのこれから」では、そんな政府によるゲーム産業の支援関係者を招聘し、現状についてのパネルディスカッションを行いました。ならびに、そうした支援に絡んだ本記事では、その模様をお送りします。
それぞれの政府支援によるプログラムやプロジェクト

最初のパネルディスカッション「ゲーム開発者への公的支援制度について」では、経済産業省と文化庁によるゲーム産業への支援プログラムに関わる方が登壇しました。モデレーターはルーディムスの佐藤翔氏が担当。佐藤氏は世界のゲーム産業の調査を行ってきた実績を元に、登壇者に政府の支援状況について伺っていました。

まずSkeleton Crew Studioの代表を務める村上雅彦氏は、現在「404 NOT FOUND」というイベントスペースを立ち上げ、さまざまクリエイターを招聘しています。運営は一般社団法人として立ち上げられた、渋谷あそびば制作委員会が担当しています。
渋谷あそびば制作委員会は、日本のクリエイターを世界進出させることを目的に、文化庁から支援を受けています。制作委員会が担当する404 NOT FOUNDでは、現在新しいプロジェクトに着手しているとのこと。そのプロジェクトとは、現代アートや文学などの領域を横断したビデオゲームを開発するものです。そこでは、今までのゲーム産業にない批評軸を作り世界に発信することを目的としています。
村上氏はこちらの試みに関して「文化庁が複数年度にわたって支援するプロジェクト」だと説明しました。
「1年では実績を出せず、支援も中途半端になる。だが3年あれば、実績を出しやすい」という考えで設立された基金だそうです。5年間をプロジェクトの期間と定め、3年までに成果を出すことを見越しているといいます。

続いて特定非営利活動法人 映像産業振興機構(以下、VIPO)の内島靖人氏が現状を語りました。
VIPOとは映画・放送・アニメ・マンガ・ゲーム・音楽・キャラクター・出版といった日本のコンテンツ産業の国際競争力を推進することを目的とするNPO法人です。主に、人材育成とコンテンツの海外展開のほか、海外市場の開拓を目的に、様々な事業を展開しています。近年はゲーム産業へのサポートも充実させており、海外向けのプロモーションや、ローカライズを行う際に費用を補助する「JLOX+」といった事業も行っています。内島氏は「どんどんゲームを世界に広めるときに活用してほしい」と説明しました。
内島氏はVIPOの直近の実績として、世界最大のゲームショーであるgamescomにブースを出展したことと404 NOT FOUNDと連携して実施した「Sakura Game Pitch」を挙げました。
一方で、内島氏は韓国など他国の政府が積極的にクリエイターへの支援を行っていることについても触れ、「まだまだ国の支援が足りない状況です」とも語っています。
内島氏は「VIPO内でゲーム業界支援に使える予算は限定的であり、韓国レベルの支援を実施するのは難しい」と述べています。

最後にマーベラスから知念さおり氏が「創風」の取り組みから感じたことを語りました。知念氏はインディーゲームクリエイター向けの支援としてindie Game incubator(以下、iGi)に関わる流れで、冒頭で説明した経済産業省が支援する創風にも関わっています。
知念氏はiGiの活動は今年で5年目を迎えたといいます。iGiとは、マーベラスが運営するインキュベーションプログラムです。主な内容は、プログラムに応募したゲームクリエイターを5~6組採用し、約半年間のあいだ、ビジネス面や技術面など多岐に渡る支援を行うというものです。インディーゲームで実績のあるクリエイターやメディアの関係者がメンターとなり、ゲーム開発から販売戦略などのメンタリングを行っていきます。
一方の創風は、2024年6月~2025年2月にかけ実施されている経済産業省の事業となり、「映画・映像部門」と「ゲーム部門」があり、iGiが「ゲーム部門」のプログラム運営を担当し、約10か月年をかけてクリエイターの作品制作から展開までを伴走するアクセラレーションプログラムとなっています。知念氏はiGiと創風の関係を、「iGiのインキュベーションとは卵をふ化させるようなもの。創風のアクセラレーションとはふかされた卵の鳥を飛べるように成長させるようにするものに」と例えています。
政府支援を受け手のこれからの展開とは

このように、ゲームクリエイターやデベロッパーのゲーム開発や販売展開を支援するプログラムに文化庁や経済産業省などが関わっているという構図になります。
続いてディスカッションでは、そんな支援を元にどのような展開をしていきたいか議論されました。