
前回に引き続き、座談会に参加したのは以下の職種のフロム・ソフトウェア開発者たち。
- グラフィックデザイナー
デザイナー
システム設計
プログラマ
企画職
■世界観や雰囲気も大切にしたゲーム作り
――それでは、最新作『DARK SOULS III』の開発に話題を移したいと思います。皆さんそれぞれ、どのように制作にかかわられたのでしょうか?
グラフィックデザイナー: 私は、プロジェクトの終盤で1年間くらい、主にキャラクターと背景のチームのサポートを行いました。またレベルデザインについて、社内スタッフとしてレビューする機会を多く与えられて、「ここがおもしろい」「ここがつまらない」「こんなふうに改善した方が良い」といった提案を行いました。皆で提案しあい、チームで一丸となってより良い体験を生み出していく過程というのは、ゲーム開発における醍醐味のひとつだと思います。
企画職: そうした意見はありがたい反面、ぐさぐさ来ることもありますけどね。
グラフィックデザイナー: もちろん、皆、ポジティブな提案として行うようにしています。手間暇かけて作り上げられたものに対して意見をするわけですから、提案する側も真剣ですね。
システム設計: 私も同様に終盤にレベルデザインのレビューに参加しました。これはシステム設計の仕事というよりは、視野を広げるための経験…でしょうか。通常の企画とは違った目線からレビューができたと思います。また各種イベント、マルチプレイ関係の仕様調整のサポートを行いました。
デザイナー: 僕は『Bloodborne』の完成後にチームに合流しましたが、それでも『DARK SOULS III』の開発には1年以上参加したのかな。最初はこれまでのようにマップデザイン制作を中心に動き、途中からは複数のプロジェクトに関わり出したのもあって、マップのデザイン監修のような一歩引いて全体を見る役割もできるように試行錯誤していました。

企画職: 『DARK SOULS』シリーズは世界観や雰囲気をとても大切にしています。その中でどのようなマップを作って、どんな風に遊びとして落とし込んでいくかを考えて、素材制作などの発注をかけ、最終的に仕上げていくのが自分たちの仕事です。私個人は、敵キャラクターの制作に関わりました。どんな演出やモーションで襲い掛かってきたら恐ろしく、立ち向かいたくなるキャラクターにできるだろうか?といった部分です。振り返って感じるのは『DARK SOULS』と比べると、マントがひらひらと舞うなど、ずいぶんグラフィックが向上しましたね。ゲームの本質的な部分は同じでも、より印象的に表現できるようになりました。
――現世代機のマシンパワーがゲーム体験に大きく貢献したのですね。
企画職: そう感じます。もっとも、まだ敵キャラクターを100体くらい出せるとか、エフェクトがバリバリとド派手に出せるというわけではありません。スペックについては、まだまだ進化して欲しいですね。
――ゲームの進化という点で、少し話はずれますが、皆さんは、「VR」や「e-Sports」のような最近業界で話題のトピックについては、どのように感じられますか?
デザイナー: 新しいハードウェアや取り組みは、大人になった今も、子どものころに感じたのと同じようにワクワクしますね。特に「VR」は夢が広がりますね! ゲーム制作者としては、燃えやロマンを体験できるようなものを作ってみたいな。
システム設計: 「e-Sports」のように競技性の高いゲームという意味では、以前は『アーマード・コア』シリーズでゲーム大会も主催していました。クリアすべき課題はあるにせよ、「e-Sports」ともある程度親和性はあるのではないでしょうか。
企画職: 最近は『DARK SOULS』シリーズに代表される、「ハイエンドなダークファンタジーのRPGを作る会社」みたいなイメージになっていますが、会社として、そこだけに留まるつもりはまったくないと思います。

■社長とディレクターを兼任する宮崎氏のゲーム作り
――会社の方針について話が出たところで、現場からみた宮崎社長の人となりについて、話を移していきましょう。
デザイナー: 宮崎はほとんど現場に張り付きでディレクションしているので、社長業をホントにしているのか時々不安になるくらいです。
システム設計: 社長業とディレクター業が交じり合っているな、とたまに思ったりしますね。
デザイナー: ずっと彼のディレクションするラインにいたので接する機会も多かったのですが、僕の持っているあの人の印象は、知識が豊富で判断力があるインテリオタクのオジサン、という感じですかね。いやー、あの知的な雰囲気が羨ましい。
システム設計: 社長が判断しているのでトップダウンではあるのですが、話も聞いてくれますし、グラフィックにもストーリーにもゲームシステムにも目端が利くので、大体外れた判断は下しません。外では開発のことを何も知らない人が意見を言って、現場を混乱させるみたいな話をたまに聞きますが、そうした状況とはまったく違いますよね。
デザイナー: デザインの造詣も深く、ディレクターとしてクレジットされたゲームでは、実質彼がアートディレクションの立場です。確固たる美意識があるんですよ。ゲームをプレイしたら伝わると思いますが。
――グラフィッカー(3Dモデラー)から見て、宮崎社長はどのような存在ですか。
グラフィックデザイナー: 頭の中にすごいイメージがあって、こだわりもある人ですから、そのイメージをいかに見える形にするかが常々求められています。敵キャラクターにしても、外見だけではなくて、ストーリーや背景があって、プレイヤーにどのような印象を与えるかという話まで含めてイメージしているので、そこをいかに解きほぐして、ビジュアルとして表現するかが私たちの重要な役目です。独特な世界観をいかに具体的な形に表現するかが求められていて、そこにやりがいがありますし、使命感も感じていますね。

――そうしたイメージは具体的に提示されるのですか?
グラフィックデザイナー: いや、そうとも限らないんですよね(笑)。明確に提示がある場合もありますが、逆に現場に委ねられるような場合もありますね。
デザイナー: 情報を意図的に絞るというか、全部喋らないことがあるよね。前に一回聞いたことがあるんだけど、「最初からある程度、頭の中にイメージがあるんだけど、それを全部言ってしまうとデザインする上で先入観を与えてしまう。そうじゃなくて、できれば予想を超えるものを提案して欲しい」と言ってました。
グラフィックデザイナー: たしかに、あえて曖昧な単語でイメージを提示されることがありますね。「闇感」といったような。具体的ではまったくないんだけど、なんとなく言わんとすることは伝わってくるという。そういったさまざまなかたちでヒントを出して、期待を上回るものが出てくるのを待っているのかもしれません。
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