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GTMF2017の中でも一際賑わっていたCRI・ミドルウェアのブースを取材しました。CRI・ミドルウェアは映像・音声・ファイルシステム・音声認識などの分野でミドルウェアの開発・販売サポートを行う会社で、今回は2種類の参考出品が行われていました。まずは主要製品であるオーディオミドルウェア「ADX2」上でVSTプラグインが読み込めるようになったという内容について、同機能の開発を担当した宮下氏、峰尾氏にお話をお伺いしました。
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VST(Virtual Studio Technology)はSteinberg社の提唱するプラグインプラットフォームで、ADX2上では現在はVST2.4まで対応しており、将来的にはVST3.0も対応予定となっています。実際の挙動については、ADX2のMasterOutや任意のBUSにサードパーティ製のVSTプラグインを読み込めるという、一般的なDAW(デジタル・オーディオワークステーション)の挙動に近いインターフェイスを搭載しています。
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「普段DAWを用いて作業をされている方に、よりADX2やCRI・ミドルウェアを親身に感じて頂けるようになればと思います」と語ってくれた宮下氏(写真右)と峰尾氏(写真左)
この機能があればサウンドデザイナーなど実作業者にとっては使い慣れたプラグインで音の補正が出来るだけでなく、VSTがオープンソースである事を利用して新たなプラグインを自作しADX2を拡張するという事も可能となります。また、ゲーム機などで利用する際はGUIが不要となり、信号処理だけになるため、ADX2上で確認するよりは処理負荷を抑えられる見込みとのことです。現在ADX2上でVSTが動作するのはあくまでプレビューのみで、実際にインゲームで再生する際はそれぞれのメーカーのランタイムが必要になります。まだ表向きに出来ないものの、既に何社かのプラグインメーカー間で交渉が進行しているとのことでした。
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また、同ブースでは「Panorama」と呼ばれる3Dサウンド技術が参考出展されていました。展示はNintendo 3DS、Nintendo Switchの2機種で、PioneerおよびDiracからの技術提供を元に実装を行ったそうです。Panoramaの効果は「ボタンひとつで音に広がりを持たせる」というもの。実際に私も音を聴かせて頂きましたが、3DS版では左右の音場がグッと広がったような音響効果が得られ、Nintendo Swich版では音像が少し前に来るような効果が得られました。峰尾氏によると「仕組みとしてはクロストークキャンセルで左右の分離をはっきりさせたあと、位相を操作するためにフィルターをリアルタイムで掛けることで広がり感を出している」とのことで、今後はPanorama機能をデフォルトで搭載したゲームが登場するかも知れません。
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