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2020年の「R-1ぐらんぷり」優勝ネタとして話題になった、お笑いコンビ「マヂカルラブリー」野田クリスタルさんの自作ゲーム、通称「野田ゲー」。
野田さん独自の世界観と手作り感、そしてギリギリのパロディに溢れた「野田ゲー」の数々について、これまでインサイドでも何度か特集を実施。その後対談インタビューも行い、その真髄へと迫ってまいりました。
そんな野田さんがこのたび、ゲーム製作に向けたクラウドファンディング(以下、CF)を実施するという情報をキャッチ。「野田ゲーあるところにインサイドあり」ということで、新たな野田さんの挑戦について詳しく聞いてきました。
果たしてCFによってどんなゲームが生み出されるのか、今や人気クリエイターとなった野田さんによる、野田ワールド全開なインタビューをお楽しみください。
自粛期間でまさかの家庭菜園がスタート
──本日はよろしくお願いいたします。以前お話を伺ってから3ヶ月、世の中色々なことがありましたが、野田さんのお仕事への影響はいかがでしょうか。
野田クリスタル(以下、野田)よろしくお願いいたします。仕事への影響はもう、めちゃめちゃありました。
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──やはりそうですよね。ちなみに前回は「ジムが空いてないのが一番困る」と仰っていましたが、その間の筋トレはどうなさったんでしょうか。
野田全くやってないです。
──全くですか?
野田中途半端になるのが嫌だったので、だったらもう「絶対やるもんか」と思ってやってないです。再開した時に向けて“熱”を溜めるためというか。
──それは…かなり極端な対策ですね。何か逆に始めたことってありますか?
野田家庭菜園です。以前から「採れたてのピーマンを丸かじりしたい」という夢だけがあったので、ようやく実現することが出来ました。
マッチョが採れたてピーマンを食べて衝撃的な一言 pic.twitter.com/3PescPJ40M
— マヂカルラブリー 野田クリスタル (@nodacry) June 14, 2020
──Twitterで突然投稿された動画はそういうことだったんですね。
野田夢が叶いました。
──新たに始まったと言えば、Mildomで「吉本自宅ゲーム部」の定期配信も開始されました。こちらはどういう番組にしたい、というプランはあるのでしょうか。
野田一週間の間で色んな芸人さんの番組があるんですが、自分の枠が全ての中で一番何も決まってないと思います。恐らく「自分で作ったゲーム(野田ゲー)をやって欲しい」という意向があってのお話だとは思うんですけど、無理なんですよね。数が無いから(笑)。
──そうだったんですね。
野田とりあえず、普段からPCゲームを作っているのでPCのゲームを遊ぼうかなと。当面は『東方』シリーズをプレイしようと思っています。僕自身『東方』作品が好きでそれを公言しているんですが、実は原作をやったことがない“エアプ”なんですよ。これは叩かれる要素なので、今のうちに潰しておきたくて。
──なるほど(笑)。ちなみに数が無いということでしたが、アイデアが出来上がっているものを含めると現在は何タイトルくらいの「野田ゲー」を作られているのでしょうか。
野田20はあるかな……。
──最近はイベントなどで「野田ゲー出演権」なるものが登場していますが、あれはどういう扱いになるのでしょう。
野田本来なら芸能人をゲームに出すというのはお金が必要なことなのですが、これを口実に出せるので「モノは言い様」ですね。『ブロックくずして』に登場するデッカチャンは既に吉本を退社してフリーなんですが、LINEで許可を貰っているので一円も払う気はないです。
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CFはアイデアという名の「無茶ぶり」を楽しみたい
──本題に入りたいと思います。ゲーム開発に向けたCFを開始されるとのことですが、どのような経緯でそこに至ったのですか?
野田経緯と言っても突然のことなんですけど、最初にお話が来たのは面白法人カヤックさんからでして。僕とカヤックさんで「なんかやろうぜ」となったんですね。そこに『もじぴったん』の生みの親である後藤さん(後藤裕之氏)が、ノリノリで入ってきてくれました。
後藤さんは本当に不思議な人で、円周率4万桁丸暗記しているような人なんです。「そんな不思議な人と僕が何をするんだ」とは思ったんですが、中途半端なことはしたくないなと。そこで『勇者ああああ』でもネタにしていた、「数々の野田ゲーが詰め込まれた『野田ゲーパーティ(仮題)』」を作ろうか、ってノリで言ってみたら「良いっすよ」って。
──そんなに軽くですか(笑)
野田いやマジかって(笑)。言ってみれば僕の「野田ゲー」作りにおける最終目標が、こんなにも早く始まるのか、という感覚です。
──そして『野田ゲーパーティ(仮)』作りのためのCFが始動する訳ですね。
野田そういうことです。普通のCFでは資金を集めるんですが、今回はそこに加えてゲームのアイデアを募集します。そのアイデアから『野田ゲーパーティ(仮)』に収録するゲームを作ります。
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──アイデアまで募集というのは斬新ですね…。ちなみに野田さんの中には、既に新「野田ゲー」のアイデアはあるんでしょうか。
野田なんにもないです、ゼロアイデアですね。今回は送られてきたアイデアという名の“無茶ぶり”に応えていく形式になりますから、どうせ今考えてもその通りにならないですし。
──確かに、野田ゲーに応募してくるとなれば想像もしないアイデアが来そうです。
野田ですよね。例えば広告目的でアイデアを出してくる人とかも居るんじゃないかなと。
──そうした目的でも良いんですか?
野田大丈夫です、全部来てください。最初は会議でも「凄い変なのが来ても困るから制限をつけようか」と相談していたんですが、やめました。「全部来い、全部使ってやるよ」って状態で、怖さとワクワクがあります。
「最終的にぐちゃぐちゃになってゴール」
──野田ゲーはテレビ番組によく登場していますし、最近は野田さんのゲームクリエイターとしての面が認知されるケースも増えたかなと思いますが。
野田最近はそっちでしか言われないっす(笑)。でも芸人なので。
──相方の村上さんからは何か言われますか?
野田特に何もないですね。コンビとしても普通に活動してますし、昔から趣味が多い人間なので、「また何かやってんなー」くらいに思っているのではと。
──野田ゲーへの反響で、印象に残っているものはありますか?
野田反響って訳ではないんですが、先日『さんまの大冒険』というゲームを作って、明石家さんまさんの番組で紹介したんです。昔『さんまの名探偵』を遊び倒してきた人間なので、ご本人の出てくるゲームを作ることに少し感極まるものがありましたね。
──製作期間的にはどれくらいかかったのでしょう。
野田お話を貰ったのは公開の2ヶ月くらい前ですかね。ちょうど外出自粛期間で劇場も無かったので、引きこもってガッツリ作ってました。
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──前回インタビューさせて頂いた際、「有志の方とゲーム作りを始められた」というお話もありましたが、その後はいかがですか。
野田今も連絡を取り合いながらゲームを作っています。今回のCFにはこの影響もありますね。元々、SNSで一緒にゲームを作りたい人を募集していたんですが、そこに想像以上の反響があったんです。
流石に全員と一緒に作れるわけじゃないけど、無視するのも嫌だなと思っていて。ゲーマーなら誰でも「こんなゲームあったらいいのに」というアイデアを持っているはずなので、その吐き出し口になりたいですね。
──CFには支援者への「リターン」があるものですが。
野田今回のゲームはニンテンドースイッチに向けて開発します。あのニンテンドースイッチに自分の考えたゲームが出るって、凄くないですか?一生モノの経験だと思うので、そこをリターンと感じてもらえたらなと。
──『野田ゲーパーティ(仮)』のゴールとしては、どんなものを考えていますか。
野田来るアイデアを全部採用していったら、最終的にグッチャグチャになると思うんです。なので、もうグッチャグチャになって大失敗したいっすね(笑)。それが最終目標です。
──どんなゲームが入るのか楽しみです。個人的には『組体操合戦』のような対戦が出来るゲームもあったら良いなと思いますが。
野田そうですね。『組体操合戦』の対戦って、現状「やり慣れている方が勝つ」ゲームなんですけど「これ、慣れている人同士が戦ったら面白くなりそうだな」と思っていて。
──クリエイターの想像を超えるプレイが出たり、対戦セオリーが形成されたりというのも対戦ゲームの面白さですよね。
野田間違いないですね。対戦以外では、例えばですが「商品をPRするためだけのゲーム」もありだと思います。『この飲み物美味しいなぁゲーム』とか。
──『飲み物美味しいなぁゲーム』ですか。
野田この飲み物美味しいなぁ!あっ、美味しいからボス倒せたなぁ!だけのゲーム。
──初見に限って楽しめそうなゲームですね(笑)。
野田でも意外とそういう発想で作り始めて、完成してみたらゲーム性高いな。ってケースもこれまであったので、なんとかなるかなと。
──何十タイトルも作れば、その中に化学反応が起きるタイトルがあるかも知れないと。
野田そう。で、残りのゲームが全部もうぐちゃぐちゃになってて(笑)。でも、神ゲーが誕生するかも知れないですよ。
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──野田さんの中でも「分からない」ということは分かりました。
野田CF史上でもかつてない見切り発車だと思います。絶対に途中で力尽きるゲームもあるでしょうし、異常な「手作り感」は間違いなく出ます。
──それだけ作るとなると、スケジュール的にも大変そうですが。
野田すごい規模になると思いますね。ただ、僕のわがままを聞きながら助けてくれる大人が多いので大丈夫です。なんせ面白法人カヤックさんですから、向こうは向こうでぶっ飛んでる人達なので。
──「野田ゲー」と言えば絶妙なパロディが魅力ですから、ギリギリを攻めて欲しいですね。
野田『野田ゲーパーティ(仮)』ってタイトルがもうギリギリですからね。でも大人たちが動いてくれているみたいなので、筋は通します。後藤さんも関わってくださってるので『もじぴったん』的なゲームとかもやりたいですよね。
──スイッチでの発売となれば、全くこれまでの「野田ゲー」を知らない人の手にも渡りそうですね。
野田もちろん、CFの目的として「野田ゲーが広まってほしい」というのもありますね。パーティゲームでありファミリーゲームなので、日曜日に家族で遊べるゲームを目指します。
──日曜日に家族で集まって『飲み物美味しいなぁゲーム』を遊ぶと(笑)。
野田想像しただけで楽しいですね。
「お笑い屋さん」としてゲーム作りに全力
──数々のシュールな野田ゲーを作ることに対して、野田さんはあくまで「お笑い芸人がやっているから意味がある」とも仰っていました。
野田さっきの「広まって欲しい」にも含まれることなんですが、これを機に「芸人ってゲームにまで携わるんだ」と思って欲しいと言いますか。芸人って「お笑い屋さん」なんだなって感じて欲しいですね。
芸人は劇場でネタをするだけじゃなくて、舞台やテレビに出て、最近はYouTubeでも活動してる。どんな場面でも「お笑い」を売れるし、それこそ「面白料理屋さん」とか出て来ても良いと思うんです。その中で僕はゲームで「お笑い」をやってる訳ですね。
──芸人はたくましいぞ、と。
野田そうです、寄生虫みたいに考えています(笑)。コロナで劇場がなくても食い扶持が無くなるわけじゃないんだぞ。芸人がYouTubeに進出している昨今、Youtuberからしたら迷惑かも知れないですけど「そんなん知ったこっちゃないぞ」と。
──どう思われようと構わないんですね。
野田こっちは寄生虫なんだから、食いつくしてやりますよ。
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──最後に今回のCFについて、PRをお願いします。
野田今回のCFは、「皆でゲームを作ろう」という方向性が定まってから、何度も会議をしました。そして結果的に、「アイデアが貰えてお金も集まるとか最高すぎるだろ」という、大人の卑しい考え方でこのような形になりました。
冷静に考えたら「こいつらおかしくない?」ってなるとは思うんですけど、どうかそこに気付いたとしても嫌にならないでほしいです。間違いなく一生モノのゲームが生まれるので、よろしくお願いいたします。
このCFは僕の「野田ゲー」における最終目標と言える計画なので、どうか成功させてください!ノリで始まった企画ではありますが、これで終わっても良いくらいの気持ちです!
──本日はありがとうございました!
野田ありがとうございました!
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