
少子高齢化が社会問題になっている日本とは違い、インドネシアは若年層の多い国として知られている。
1997年から2012年までに生まれた「Z世代」の割合が全人口の中で最も多く、近年では数々のスタートアップが巨額の出資金を集め、ユニコーン企業も複数誕生している。そしてインドネシアは、オンラインゲームに関して非常に熱心な目を向けている国でもある。
それは一般メディアを見てもよく分かる。何とこの国のメディアは、スマホゲームの最新情報に関する記事を配信しているのだ。
一般メディアに「新しいシューターゲーム」の記事が!
インドネシアの最有力全国紙といえば「Kompas」である。
アチェ州からパプア州まで、Kompasはインドネシアの津々浦々に最新の情報を届けている。また、Kompasを発行するKompas Gramediaグループは同国最大の出版事業者でもあり、「Gramedia」という書籍チェーン店まで展開している。このコングロマリットは、まさに「インドネシア国民の知」を司ると言っても過言ではない。
そんなKompasのWebメディアは「Kompas.com」である。

上の画像はKompas.comのトップページだが、表示されているカテゴリの中の「TEKNO」というところにカーソルを合わせてみよう。すると「APPS&OS」という項目が出てくるはずだ。
これは文字通り、スマホアプリやPCのOSに関する記事を取り扱う項目だ。そして、ここで言う「スマホアプリ」とは当然ながらゲームも含まれる。

上はモバイル向けシューターゲーム『レインボーシックス モバイル』のリリースが近いことを伝える記事。これがどのようなゲームなのかを説明するのみならず、Kompasのテクノ部門がアプリのリリース時期について独自の調査をしている。
これは日本でたとえるなら、朝日新聞や読売新聞といった大手新聞が「新しいシューターゲームについて」という記事を配信するのとまったく一緒だ。そしてこのような現象は、日本ではまず見かけないだろう。
Z世代が最多数派
次にKompas以外のメディアを見ていこう。民放テレビ局SCTVの報道番組「Liputan6」のWeb版のトップページは、以下のようになっている。

このサイトにも「TEKNO」というカテゴリがある。そしてその中に、何と「Game」という文字が。大人気MOBA『モバイルレジェンド』の断食月限定アイテムの話題や、Epic Gamesのウクライナ支援に関する取り組みの話題等、まるでゲーム専門メディアのような記事が画面に表示される。念のために断っておくが、Liputan6はSCTVというインドネシアのテレビネットワークで放送される報道番組である。
日本人の目には、インドネシアのニュースサイトはあまりに自由過ぎるように見える。しかしいくら国民性が異なるとはいえ、需要がなければ供給は発生しない。つまり一般市民が「ゲームに関する情報」を強く求めているからこそ、Kompas.comやLiputan6でそうした記事が配信されるのだ。
その理由は、前述の通りインドネシアは若年層が非常に分厚い国であるということに起因するだろう。2020年にインドネシア中央統計庁が実施した調査によると、この国におけるZ世代(1997年~2012年に生まれた世代)の全人口に対する割合は27.94%。これにミレニアル世代(1981年~1996年に生まれた世代)の25.87%を合わせると、何と全人口の半数を優に超えてしまう。彼らは物心ついた時からコンピューターゲームに触れている。
ゲームに対して上の世代よりも偏見や抵抗といったものがなく、実際に自分自身がゲームを楽しんでいる。そして、現代のオンラインゲームが各地域のネットインフラ構築に大貢献していることを肌感覚で知っている。そんな彼らにとって「ゲームアプリのリリースやアップデート」は重大事であり、何よりの関心事なのだ。
インドネシアの中央政府は、そのような若年世代の需要をよく心得ている。