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急拡大するVRヘッドセット市場で、突然注目度が高まった「Pico Neo3 Link」(以下Neo3)。なぜ急に注目が集まったのでしょう?
「Meta Quest2」(以下Qust2)が突然大幅値上げされたため、もっとも手頃でコスパの良いVRヘッドセットのポジションにNeo3が踊り出たのです。
Meta Quest2値上げの激震
2022年7月26日、Quest2の大幅値上げが突然発表されました。8月1日からは128GB版が37,180円から59,400円に、256GB版が49,280円から74,400円に改定され、128GB版は22,220円。約60%もの超大幅値上げです。
現在のVRシーンの盛り上がりはQuest2の圧倒的なコストパフォーマンスに支えられてきました。有名メーカーによるオールインワンのVRヘッドセットがNintedo Switchと同程度の価格で買えることが、VR機器の普及を一気に推し進めてきたのです。
IDCによると、2021年のAR/VRヘッドセットの世界出荷台数は前年比92.1%増の1,123万台(国内出荷台数は33万台)。このうち、Quest2は78%ものシェアを獲得しています。AR/VRヘッドセット市場における圧倒的なマーケットリーダーだったのです。
Quest2は単体でもさまざまなゲームを楽しめますが、ゲーミングPCと接続してSteamのVRゲームを楽しむのにも使われています。2022年7月のSteamのVRヘッドセットシェアでは、Quest2は50.32%で2位の本家Valve Indexの15.26%に圧倒的な差を付けています。
そのQuest2の大幅値上げで、VR市場の伸びは急減速しかねない状態です。
Pico Neo3 Linkという選択肢
「そろそろQuest2を買おうかな」と思っていた人達にとっては、今回の値上げはショックでしょう。3.7万円とほぼ6万円では、サイフへのダメージがかなり違います。合わせてソフトも買わなければならないのですから、尚更。
そこでQuest2に変わるVRヘッドセットの選択肢として急浮上してきたのが、中国製の「Pico Neo3 Link」です。
Quest2と同じ「Snapdragon XR2」をSoCに採用したオールインワンヘッドセットで、ゲーミングPCに接続してSteam VRのゲームを楽しむこともでき、その場合は画質で有利な非圧縮・低遅延を謳っています。
Quest2ではオプションとなっているバッテリ内蔵ハードストラップも標準で付属しています。内蔵ストレージはQuest2の上位機種と同じ256GB。
それでいて、Amazonなどでの販売価格は49,280円。値上げ前のQuest2 256GBと同じ値段のままなのです。128GB版のQuest2と比べると10,120円も安い。
値上げ前の128GB版 Quest2に比べると12,100円高いとも言えますが、ストレージは倍になって、PC接続用の専用ケーブルも本体に付属しています。コストパフォーマンスは高いといえます。
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(写真)Pico Neo3 Linkの本体と付属のコントローラー。
Pico Neo3 Linkの弱点は?
Quest2の代替品としてNeo3を考えたとき、一番の違いは独立したオールインワンVRヘッドセットとして使う場合のソフトウェアのラインナップです。
Quest2にはMetaが運営するQuestストアがあり、『BEAT SABER』『VRChat』『バイオハザード4』などの有名VRゲームを単体で楽しめます。「Amazon Prime Video」や「Netflix」の公式無料動画プレイヤーもありますから、ヘッドセットをパーソナル映画館としても活用できます。
上記のソフトウェアは「Pico Store」にはありません。特にBEAT SAVERの会社はMetaに買収されたので、今後もPico Storeに提供される可能性は薄いです。
しかし、上記ほど有名ではありませんが、QuestやSteamのストアで評価の高いゲームがPico Storeには存在します。
「誰もが知っている定番のゲームを遊びたい」という人にはNeo3は向いていませんが、逆にまだ日本では知られていない面白いゲームを自分で探したい人には向いているとも言えます。ゲームの評価はSteamやQuestのストアで検索すればだいたいわかるので、ゲーム探しはそんなにリスキーでもありません。
最大のメリットは前後重量バランスとPCVR画質
Neo3の製品をしばらく借りることができたので、今回も私物のQuest2と比較しながら使って見ました。
Neo3のハードウェアの完成度は非常に高く、細部までよく考えられています。
前述のようにQuest2と同じSocを採用し、画像解像度も実質同じです。画角がQuest2より狭いという評価もあるようで、アプリによっては横方向が少し狭いと感じることもありました。ただ、実用上は問題ありません。
重量を比較するとQuest2が503gでPico Neo3 Linkが642gと、単純比較だとNeo3のほうが139g重い。しかし、Quest2はソフトゴムバンドの簡易ストラップなのに対して、Neo3はバッテリ内蔵のハードストラップ付きの重さです。
標準のソフトゴムバンドのままQuest2を長時間使うのは体力的に厳しいので『Eliteストラップ』(ハードストラップ)は必須オプションです。筆者はサードパーティ製の安いハードストラップを使っています。
Quest2の場合、ストラップを除いた本重量は452g(実測値)。別売の「Eliteストラップバッテリー付き」は16,070円で179g。合計すると632gとNeo3との重量差は10gまで縮まります。Quest2とバッテリ内蔵ストラップの合計価格は74,470円で、Neo3との価格差は26,190円。
Neo3はバッテリを最初からヘッドストラップの後頭部に当たる部分に搭載しているため、前後の重量バランスが良く、使用時に疲れにくいのがいい。これは、スポーツ系VRゲームを遊んだときに顕著に感じたことです。
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(写真)Pico Neo3 Linkは標準でハードストラップが付属し、後頭部の背後に搭載されたバッテリーがバラストになるので、前後の重量バランスが良い。
「PICO UI」というオリジナルのOSは、Androidをベースに独自開発されたものです。起動すると、プレイエリアの設定などしなくてもすぐに使用開始できるお手軽感は、よくできていると感じました。
PICO UI上に独自のストアがあり、そこでゲームやアプリを購入して利用するというスタイルは、Quest2とほぼ同じです。
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(写真)独自OS「PICO UI」の操作画面。直感的でわかりやすい。Quest2やSteam VRみたいなチュートリアルがないのは好みが分かれるかも。
今回体験用として提供されていたのは以下のゲームです。
『SUPERHOT VR』 マトリックス的シューティングFPS
『Hyper Dash』 ガンアクションFPS ◎
『Demeo』 TRPGゲーム ◎
『Oh shape』 フィットネス
『All-In-One Sports VR』 11種類のスポーツゲーム ◎
『Puzzling Places』 3Dパズル
『A Fisherman's Tale』 脱出アドベンチャーゲーム ◎
『Counter Fight ICHIRAN』 ラーメン屋店員シミュレーション ◎
『After the Fall』 ゾンビサバイバルFPS ◎(最近)
『Larcenauts』 6対6対戦FPS
『ALTDEUS:Beyond Chronos』 ロボットSFアニメ風ノベルゲーム ◎
『Synth riders』 (BEAT SAVER的な)リズムゲーム ◎
『Manny VR』 ボクシングゲーム
これらのゲームの多くはQuestとSteamの両方で販売されています。◎を付けたのはSteamストアで「非常に好評」だったもの。もっともレビュー数が少ないものもあるで、実際の購入時には自分で確かめてください。
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(写真)PICO UI上で『All-In-One Sports VR』をプレイしている画面。臨場感が素晴らしい。反応も良い。
(写真)PICO UI上で『Hyper Dash』をプレイしている画面。難しくて何度も死んでしまった。
(写真)PICO UI上で『ALTDEUS:Beyond Chronos』をプレイしている画面。自分で巨大ロボット兵器を操作している感が味わえた。
PCと接続する際は、Quest2ではUSB-Cケーブルを使用してPCのUSB3.0ポートに接続します。Neo3は本体付属の分岐ケーブルを使って、グラボのDisplay Port1.4ポートとUSB 2.0ポートに接続します。グラボに直接接続することで、非圧縮のオリジナルK解像度かつ最大90Hzの低遅延で利用できるとのことです。
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(写真)PC接続用の専用ケーブルはネジでしっかり止めるので、激しい動きのスポーツゲームでもケーブル抜けの事故を防いでくれる。
(写真)PC接続用ケーブルはヘッドストラップのサイドにアタッチメントで止めて後方に逃がせる新設設計。ただし、アタッチメントが硬すぎて壊しそうで嵌められなかった。
実際に『Half-Life:Alyx』などのSteamのVRゲームを試したところ、Quest2よりもやや鮮明に感じました。低遅延のメリットは実感できませんでしたが、対人勝負のマルチユーザーアクションゲームでは違いが出るかもしれません。
Pico Neo3 Linkは買いか?
Amazonのレビューを読んでみると、Quest2の代替えとして買った人達の感想が読めて興味深いです。やはり、スタンドアロンで使う場合のアプリストアの貧弱さがよく問題となっています。特にAmazon Prime ビデオやNetFlix、Huluなど動画配信サービスのアプリがないことが話題に上がっています。
ただ、ここまで述べてきたように有名タイトルは不足していますが、楽しめるゲームがないわけではありません。
そのほかPCVRのゲームを遊ぶ場合に、Quest2とキーバインドが異なるためにコントローラーが反応しない問題があると指摘しているレビューもありました。
これらの状況に対して、AndroidアプリのAPKファイルを自分でインストールしたり、PCにインストールする制御アプリ「Pico Link」のINIファイルを自分で書き換えて解決している様子です。
つまり、PCやスマホの設定を自分でバンバンと弄るのに躊躇ないユーザーなら十分に楽しめるでしょうが、最初から100%の完成品を求める人にはまだ少しハードルが高い買い物かもしれません。
PCVR中心の使い方で、自分で.iniファイルの編集も平気という人ならQuest2の代替としてオススメではないでしょうか。
今後、独自のアプリストアの品揃えが充実したり、PCVR使用時の設定問題が解決すれば、より万人にお勧めできる製品になると思われます。
¥49,280
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)