メタバース上で展開する本格スポーツ「VRCボクシング」が、JBC(日本ボクシングコミッション)の「2023年度年間優秀選手表彰式」で紹介されました。
VRCボクシングは日本の有志が開発・運営を続けてきた、VRヘッドセットを付けて『VRChat』上で行う格闘技ゲームであり国際的な広がりを見せているeスポーツです。それが日本のプロボクシングを統括する団体の一大イベントで紹介されたということで、メタバースでのスポーツが本格化していく動きになりそうです。
◆本物のボクサーが作ったVRCボクシング
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VRCボクシングを主催するトリさんは高校生の頃からボクシングジムに通っていた本物のボクサーです。
PCゲーマーでもあったトリさんは、あるとき「面白いMMORPGはないか」と探していたところで『VRChat』上のゲーム「Udon Boxing」に出会ったそう。その後、プレイだけでは飽き足らず、自分たちで本格的メタバース上の格闘技スポーツとしてVRCボクシングを開発し、運営してきました。この経緯は、Game*Sparkで2022年に取材記事としてお届けしています。
VRCボクシングの特徴は、単なるゲームではなく「競技性のあるスポーツ」であることを重視して開発されていることです。ゲームシステムは有志で参加したムシコロリさんが独力でかつ短期間に作り上げました。
◆コミュニティ作りと運営による成功と法人化
VRCボクシングの輪は次第に大きくなり、現在は日本だけでなく米国や韓国にまでユーザー層を広げています。公式の発表によると月間訪問者数は9万人を超えているとのことですが、直近では1日で7,000人を超えることもあり、急成長しているようです。
ここまでVRCボクシングが広がった理由は、毎週木曜と日曜の夜に練習会を地道に行ってユーザー層のスキルアップの底上げをしてきたこと、年4回のスポンサー付きの大会を開くことで参加者のモチベーションの維持や話題作りを行ってきたことにあります。
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VRCボクシングは、練習会と大会を運営してきたことにより同じスポーツを志す「単なるゲームではなく、戦いながら友情を育むことができるコミュニティ」に成長したといいます。
そして遂にVRCボクシングは法人化されました。運営は、米国VRChat社とのパートナーシップ契約の締結を結んだワオスポーツ株式会社が行っていくことになります。トリさんとムシコロリさんは、ワオスポーツに所属します。
◆夢の階級なしボクシングの実現へ
ボクシングは体重によって区切られた階級制のスポーツです。それによって公平性が保たれていますが、一方で身体の大きさ・重さが違うと、技術だけで競うことが難しくなっています。
ワオスポーツ株式会社は今後、「本格的な競技としてのボクシングを目指し、ボクシングゲームの開発と運営に取り組んでいく」としています。さらに将来的には、階級の制約をなくした「パウンドフォーパウンド」の本物の戦いを実現したいそうです。
VR上で戦うことで、リアルでは実現できなかった新しい次元のスポーツが生まれる可能性が出てきました。
また『VRChat』は英語のユーザーインターフェースで提供されていましたが、2024年2月に多言語対応がアナウンスされました。昨年12月にはAndroidスマートフォン版も公開され、iOS版も開発中と言われています。「やるスポーツ」としても「観るスポーツ」としても、このVRCボクシングのようなVRスポーツの輪は更に広がっていきそうです。
◆VRCボクシングの遊び方
『VRChat』のアカウント(無料)が必要。
推奨VRヘッドセットはMeta Quest 3、Meta Quest2、PICO 4。PCVR+VRヘッドセットにも対応。
『VRChat』にログインしたらWorld検索で「VRC BOXING」を検索。
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