4GamerとGame*Sparkは2024年12月22日、ゲーム業界への新卒就職を目指している就活生を対象としたイベント「キャリアクエスト」の第2回を東京ビッグサイトで開催する。
このイベントは、ゲーム業界への高い熱意を持つ学生と、新卒採用に意欲を持つゲーム関連企業のマッチングを図るもの。その開催に合わせて、実際に現場で働いている若手社員に、ゲーム業界を目指す学生のためのインタビューを行った。
本稿では、「銀河英雄伝説 Die Neue Saga」(iOS / Android)などのスマートフォンゲームタイトルを手がけるAimingの第一事業部にて、エンジニアを務めている照屋尚志さんに、実際に入社してからどんな業務に就いているか、会社の文化や雰囲気、自身の今後の展望などをうかがった。
なお、本記事は4GamerとGame*Sparkで共同制作した連載記事となる。
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入社当時に「ドラゴンクエストタクト」のプロジェクトに配属
――さっそくですが、自己紹介をお願いします。
照屋尚志さん(以下、照屋さん):Aimingの第一事業部に所属している、エンジニアの照屋尚志です。大学院卒業後、2021年4月に新卒で入社しました。
――現在の業務内容を教えてください。
照屋さん:「ドラゴンクエストタクト」のプロジェクトで、アウトゲームの開発をしています。具体的にはバトル以外の部分、たとえばモンスターのパラメーターの表示部分や、計算の部分ですね。またゲームのデータをサーバーを介してクライアントに保存したり、キャッシュしたり、あるいは加工して保存したりもします。あとはモンスターのレベルアップなどのパラメータの更新ですね。アウトゲームは、本当に広範囲におよんでいます。
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――最初に配属されたのは、どんな部署でしたか。
照屋さん:最初から「ドラゴンクエストタクト」のプロジェクトでした。「ドラゴンクエストタクト」は2020年7月にローンチしましたから、1周年の数か月前から4年以上にわたって携わっています。
――配属にあたって、照屋さんご自身の意見はどの程度反映されたのでしょうか。
照屋さん:とくに自分の意見は出しませんでした。先日マネージャーから聞いたのですが、Aimingでは入社前の面接で新卒内定者各自の傾向を調べて、その結果をもとにどの部署に適性があるか、またその部署でどれだけ新卒を受け入れられるかをチェックし、配属先を決めるそうなんです。自分の場合は「ドラゴンクエストタクト」の開発に携わるエンジニアとしての適性があり、プロジェクトにも受け入れる余地があったということですね。
Aimingに向いている人材の条件は、大前提としてゲームが好きであること
――社内の雰囲気を教えてもらえますか。たとえば、どんな人物が多いとか。
照屋さん:とにかく皆さん、ゲーム好きだなと感じます。自分もゲームが好きで入社したんですけれども、それ以上にゲームが好きな人達ってこんなにいるのかと思いますね。たとえば自分はTRPGについてまったく知らないんですけれども、そういった自分の通ってこなかったジャンルをやり込んでいて、しかも詳しい人がたくさんいて、一口にゲームと言っても本当に幅広くて、いろんな好きがあるんだなと感心させられました。
――照屋さんはエンジニアとして業務に携わっていますよね。Aimingのエンジニアは、どんな人物が多いのでしょう。
照屋さん:真面目な人が多い印象です。仕事熱心で、厳しいと言うと言いすぎかもしれませんが、実装したコードに対して疑問や納得いかない部分があればしっかり追求して、皆が納得できるいい形にしていくという人達ですね。その一方で、先日開催された社内のエンジニアLT(Lightning Talk、ショートプレゼン)会では、個人的にいろんなことを試している人の話も聞けて、多彩な人材がいるとも感じています。
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――そんなAimingには、どんな人材が向いていると感じていますか。
照屋さん:大前提として、ゲームが好きな人です。入社前に提出するヒアリングシートに、どんなゲームをやってきたかと、それらのゲームに対する感想などを書く項目があるので、おそらく人事部や役員はそれを見て、その人がどれだけゲーム好きかチェックしていると思います。
またAimingは、オンラインゲームを作っている会社でもあるので、ゲームを通じて人と人をつなげていくことを意識できることも必要かと思いますね。
――ちなみに照屋さんご自身は、どんなジャンルのゲームがお好きなのでしょうか。
照屋さん:アドベンチャーゲームです。とくにマップを探索する3Dアクションアドベンチャーが好きで、「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」にはハマりました。「リトルナイトメア」シリーズのような、謎解き要素の強いものも好きですね。あとはXや社内SNSで話題になっているゲームを広く浅く触っています。
――ゲーム業界で働いていると実感した出来事やエピソードはありますか。
照屋さん:まず、ゲームのグッズをもらったときや、自分が携わっているゲームのグッズを店頭で購入したときです。「自分の作ったものが、こんな形で世の中に出ているんだ、買ってくれる人がいるんだ」と感動しました。
もう1つは、仕事で機能が完成していく過程です。たとえばUIであれば最初はデザインなどを考えずに必要最低限の表示を作るんですけれども、開発が進んで終盤になるとアーティストがきちんとデザインしたものに差し替わるんです。最終的にすごく綺麗なUIになって、アニメーションも入ってという形になるんですけれども、その過程を目の当たりにしたとき、ゲームを作っているという実感がすごくありました。
社会人になって、目の前のことだけでなく全体を意識するようになった
――就活していた当時と社会人になった今、考え方やタスクの進め方は変わりましたか。
照屋さん:タスクの進め方に関しては、入社当時だと自分に割り振られたタスクをとりあえず終わらせることを意識していました。
社会人として働いていくなかで変わったのは、終わらせるということに対して、どこまでやるべきなのか、どこまで深掘りすべきなのか、逆にこれ以上はやらなくてもいいというラインをしっかり決めるようになったことです。
そのうえで終わらせることを意識し、進捗を管理する。入社当時は先走ってしまうこともあったのですが、最近ではまずタスクに対して深掘りして調査し、ゴールを決めてから作業に取りかかるようになりましたね。
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――考え方の変化はどうでしょう。
照屋さん:主にコーディングに関する考え方なのですが、学生時代はこういう機能を作りたいとなったときに、どういう形でアルゴリズムを組み立ててプログラムを書くかという、機能実装の部分に注力していました。
その一方で、入社してからはゲーム全体の設計を踏まえて、今後継続的にそのゲームを開発していくにはどうすればいいのか、どうすればコードが綺麗にまとまって、この後自分の入れたい機能を追加できるのかといったように、コード全体を俯瞰する考え方に変わりましたね。
――仮に入社当時に戻れるとしたら、どんなことを心がけたいと思いますか。
照屋さん:実は入社当時から心がけていることがあって、それは今でも大事なことだと捉えています。
まずはプロジェクトに使われているライブラリについてしっかり理解すること、そこからどうしてこのライブラリが生まれたのか、どんな用途を想定しているのかといった背景を理解したうえで使えるようになることです。あとは、分からないことは先輩の皆さんに聞くということも心がけていました。
――それではゲーム業界のここが面白い、逆にここが大変というところを教えてください。
照屋さん:ゲーム業界に限らず、チームで取り組むプロジェクト全般の話になると思うのですが、皆で1つのものを作るという部分が面白いですね。
学生時代はゲームの仕様もアートも自分自身で考えていたわけです。それが入社してからは、プランナーやアーティストといったそれぞれのエキスパートが存在します。
それぞれの専門分野から出る意見に対してエンジニアの観点から「こういう形にしないと、のちのちゲームの設計が厳しくなる」という話をしたり、プランナーの「ユーザーからこういうリクエストが多数寄せられている」という意見を汲み取ったりと、いろいろコミュニケーションを取って着地点をしっかり決めてゲームを作っていき、最終的に綺麗な形でゲームに仕上がるところが面白いと、自分は感じています。
――大変な部分はどうでしょう。
照屋さん:コミュニケーションの部分ですね。いろんな人とコミュニケーションを取ることになるので、どこかしらで伝達ミスが発生するとのちのち大きなトラブルにつながります。
たとえば意図を理解しないまま、自分がコードを実装してしまうと、考えていたものとまったく異なるものができてしまう何てことにもなりかねません。きちんとコミュニケーションを取って、1つ1つ確認しながら進めていくところが大変な部分ですね。
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――具体的には、どんな形でコミュニケーションを取っているのでしょうか。
照屋さん:まず相手の考えを自分の中で理解することに努め、次に「こういう認識で合っていますか」と相手に確認します。そのうえで自分の考えを相手に伝えて……という流れを相互に繰り返して議論を進めていくことを心がけています。
最終的に、「結論はこういう形になりました」とまとめて、議論に参加した全員がOKを出せば、皆の共通認識ができたということになります。コロナ禍の中でこの流れを進めるのは本当に大変だったのですが、最近では直接顔を合わせられるので、非常にスピーディーな議論ができるようになりました。
――そのほか、ゲーム業界の面白い部分などがあれば、ぜひ教えてください。
照屋さん:自分の携わっているゲームを、ユーザーの皆さんがどんな形で捉えているのか確認できることが面白いですね。たとえば自分の友人は「ドラゴンクエストタクト」のプレイヤーなんですけれども、新しい機能が便利だった、イベントが良かったと好評を頂いたり、時にはこの辺りはもう少し良くならないのかと文句を言われたりします。
また配信されている攻略動画を見ることで、ユーザーがキャラクターをどのように捉えているのか、ゲームをどのように攻略しているのかをチェックしたりもしています。とくに自分の作ったコンテンツが意外と好評だったときは嬉しいですね。作っているときは、うまくできたか不安なんですけれども、SNSに「面白い」という投稿があると本当に嬉しくなります。
――その逆もありますよね。よかれと思っていたところが不評だったり。
照屋さん:そのときは冷や汗が出ますし、眠れなくなりますね。
興味のあることを見つけて深掘りすることを続けていきたい
――好きなことを仕事にすることについて、どう感じていますか。
照屋さん:そこに関しては、まだ自分自身も結論を出せていません。そもそも好きなことだからこそ、仕事として続けられるんです。自分の趣味でプログラムを書いているときは、うまくいかなくて最終的にツラくなったら投げ出してしまうことが多いんですね。
でも仕事は投げ出すわけにはいきません。それで続けているうちに、難解な技術がどうなっているのか理解できたり、試してみたいことができたりして、気付いたらプログラムを書いていることがすごく増えました。その意味では、自分は好きなことの延長で仕事をしていると言えます。
その一方で、好きなことだから就業時間を忘れてしまうんですよね。もっと綺麗なコードにまとめられないかなと、いつまでも作業を続けてしまいがちなんです。ただ、うまくまとまったときにはすごくスッキリして、好きなことを仕事にしていると実感できます。
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――周囲の人達が好きなことを仕事にしていると感じることはありますか。
照屋さん:出てくる話のほとんどが、仕事につながるものなんです。最近こういう技術が出てきた、この技術について書いてある記事が面白い、あるいはコードの書き方といったように仕事に関連した話ばかりなので、やはり好きなことを仕事として楽しんでいるんだなと感じています。
――最後にゲーム業界での仕事を通してチャレンジしてみたいことを教えてください。
照屋さん:個人的なチャレンジとしては、自分でコンテンツを作ってリリースしたいです。今まさに、個人で「こういうものを作れる」ということに取り組もうとしている最中です。
Aimingの中でのチャレンジはまだ決めきれていないのですが、まずは自分に割り振られた仕事を着実にこなして終わらせていくこと、それを粛々と続けていくことを目標としています。ゆくゆくは新規プロジェクトに参画して、新作ゲームのローンチまで関わることにもチャレンジしたいですね。
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――自分でゲームを企画して開発するといったことはいかがでしょう。
照屋さん:今はそこまで深く考えていません。自分が今、個人で取り組もうとしているコンテンツは、自分が触ってみたい技術をほかの人が触れられる形にすることが目標で、その先どうするかはまだ自分でも決めていないんです。
別の技術やほかのことに興味が湧けば、それに触れてみて次の目標が決まって、それに向けたアクションを取る。まとめると、興味のあることを見つけ、深掘りして一旦終わらせて、また次の興味のあることを見つけて……ということを繰り返していきたいと考えています。
――ありがとうございました。
[キャリアクエスト]コードをひたすら洗練させていくAimingの姿勢が入社の決め手。ヒットタイトルを手がける若手エンジニアが自身の就活を語る