昨年の東京ゲームショウで展示された『アオモリズム』はアオモリとホッカイドウがねぶたのリズムで殴り合うというユニークなリズムゲームです。学生作品ながら、10分以上の待機列ができるという人気を獲得した本作。CEDEC 2014では神奈川工科大学情報メディア学科特任准教授の中村隆之氏が、本作の生まれるきっかけとなった発想法について報告しました。CEDECでも展示されていた『アオモリズム』中村隆之氏は1997年ナムコに入社し、プログラマを経てプロデューサー、ディレクターをつと、『もじぴったん』シリーズなどに携わりました。現在は神奈川工科大学でゲームデザインやゲーム開発に関する講義を担当しています。中でも「ゲームクリエイター特訓」という授業では、ゲームデザイン分析、発想法といった実践的なワークショップを行っています。『アオモリズム』もこの授業から誕生しました。報告ではその授業で使用している「EMS Framework Method」というゲームデザインのアイデア発想法が紹介されました。ゲーム開発の現場では、なかなか新しいゲームのアイデアが生まれてこなかったり、似たり寄ったりのアイデアが上がってきたりすることが珍しくないといいます。また教育の現場では、そもそもゲームデザインをまったくしたことがない初学者もアイデアを出さなければいけません。しかしながら、今回のEMS Framework Methodなら、誰でもゲームになるアイデアを思いつくことができると中村氏は述べています。ゲームデザインはセンスなのか?授業では学生はランダムにチーム分けされ、アイデアを出すためのブレインストーミングを行います。アイデアのためのフレームワークが設定されており、学生はそれを利用してゲームのアイデアを提出します。そのフレームワークは「……を……して(手段)、……を……する(目的)」という手段と目的の構造になっています。『もじぴったん』であれば「文字を並べて(手段)、言葉を作る(目的)」といった要領です。結果として授業では3時間の間に1000以上のアイデアが提出されるそうです。この「……を……して(手段)、……を……する(目的)」という手段目的構造を利用するのが、EMS Framework Methodの骨子です。『パックマン』の生みの親、岩谷徹氏の「動詞でゲームを発想する」という方法が元となっており、そこに手段と目的を加えることでブレインストーミングの形式で使いやすいものにしたそうです。発想法の授業考えか方のキモはこの手法のメリットはゲーム自体が手段と目的の構造を持つため、必然的にゲームのアイデアとして利用可能な文ができるという点です。もちろん、アイデア自体は簡単なもので良いため、ゲームデザインに関する知識がなくても提出することが可能です。さらに非論理的なアイデアが飛び出すこともメリットです。実際に馬鹿げたアイデアが数多く提出されますが、それによってブレインストーミングが盛り上ることが期待されます。この手法の応用として、手段と目的に主語を加えるというバージョンも紹介されました。通常、文に主語がなくてもゲームはプレイヤーが主体として動くため、アイデアとしては十分利用可能なものになります。しかし、主語が追加されることでゲームのイメージが明確化して、具体性が増します。アイデアの絞り込みは、付箋紙などを利用してチームで意見をまとめます。少数意見であっても必ずチームで理由を共有するようにして、単純な多数決は行いません。『アオモリズム』の場合は、ゲーム内容よりもタイトルが先に決定。名前のイメージから、結果としてリズムゲームになったそうです。アイデアを企画に落としこんでいくためには2013年の授業でもたくさんのアイデアが集まり、そのいくつかは今年の東京ゲームショウの神奈川工科大学ブースで展示されるそうです。さらに今回のCEDECのインタラクティブセッションでは『アオモリズム』が招待作品として招かれました。講演の後に覗いてみたところ、来場者からかなりの注目を浴びていました。
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