対応しているOSはAndroidとiOSで、各社のタブレットとスマートフォン上で起動。大前提としてGmailアカウント必須の上、ゲーム上のマップはグーグルマップの一部機能が使われています。スマホなどの位置情報を取得して画面内の拠点を占領し、それぞれの拠点をつないで領地を広げていく「陣取りゲーム」の形式を取っているのが特徴でしょう。
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ただし、舞台となるのは画面の中だけではなく、この現実世界。そう、世界全てがゲームフィールドという、現実世界とAR世界がリンクしたゲームこそ「Ingres」なのです。歴史的にはβ版、オープンβと展開し、2013年12月15日に一般公開されました。iOSに対応したのは2014年7月からとまだ日が浅く、これはGoogleだからという理由が強いのかも知れません。
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12月13日、日比谷野外音楽堂でイングレスの大規模イベント「Darsana Tokyo」が行われました。以前から「フラッシュファーミング」と呼ばれる小規模なものから過去イベント「オペレーション・カサンドラ」のような大規模なものまで行われていたようですが、一処に5000人もの人数が集まったイベントは今回が初めてとの事。実際、会場に集った人数は一般の方からも「いったい何が始まるんです?」と尋ねられるレベルでした。
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実はこのゲーム、細かい設定と濃厚なバックストーリーがあります。だがしかし、その大半が英語の上に、Google+やYouTubeなどで「断片的に情報が流れている」状態であるため、我々日本人が情報を追うのは非常に困難。かく言う私も不得手であるため、明確なバックストーリーは分からないのです……ロールプレイ用のキャラクターアカウントや順次公開される動画などを用いてリアルタイムでドラマ調に展開しているため、興味のある方は調べてみてください。ざっくりした陣営の説明は、以下のようになっています。
【陣営の説明】
■「エンライテンド」(Enlightened・緑の勢力)
「シェイパー」と呼ばれる神の如き存在の操る謎の物質、XM(エキゾチックマター)を正しくコントロールして、世界の革新、人間の変革を目指す。指導者はローランド・ジャービス(すでに死亡している)。
■「レジスタンス」(Resistance・青の勢力)
「シェイパー」からの介入を悪しきものと考え、XM(エキゾチックマター)が人に及ぼす悪影響から人類を守るため戦う。指導的立場は、ADAと呼ばれるXMの調査を行った「ナイアンティック計画」の支援プログラム。
プレイヤーは、まずこの陣営のどちらかを選択せねばなりません。両陣営に分かれてそれぞれの「エージェント」となり信じる世界を広げていくために、日夜戦い続けるのです。
【ルールなど】
途中で陣営を鞍替えする事も名前を変える事も原則不可なので、注意が必要。自分の生活圏に密着する情報が多数あるため、本名を入れる事は推奨されていません。(本名の場合と陣営は、手続きを行えば変えられるようです)
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占領する拠点は「ポータル」と呼ばれており、白い「ポータル」(中立)に手持ちの「レゾネーター」を配置して占領。「エージェント」は「ポータル」同士を「リンク」して、地図上に「コントロール・フィールド(CF)」を形成し、その占有率を競う事になります。敵陣営のポータルにはレゾネーターを配置できませんから、まずは「ハック」などを行って、敵レゾネーターを破壊する事から始めましょう。
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日比谷野音で行われたのは、ナイアンティック・ラボが主催する「Darsana Tokyo」。イベント全体のスケジュールは10時から20時までとなっていました。参加人数は公称で5000人との事でしたが、恐らくそれ以上いたのだろう、とは参加者の言。勢力バランスはエンライテンド2割、残りの全てがレジスタンスです。日本国内、特に関東ではレジスタンスの勢力がかなり多く、これは世界でも珍しいのだとか。私の住んでいる地域でもレジスタンスの勢力が強いようで、画面を見ると青いCF(コントロールフィールド)に包まれている事があります。
予定よりかなり早く始められたイベントでは、ナイアンティック・ラボの創業者にして開発者のジョン・ハンケ氏がウェルカムスピーチ。この後、本人に直接インタビューする機会がありましたので、一言コメントをいただきました。
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―――今日は本当に多くのエージェントが集まりましたね。
ジョン・ハンケ:史上最大のイベントになりました。これだけ多くの方々に集まっていただいて驚いています。ステージ上から皆さんを見ていたら鳥肌が立ってしまいました。この瞬間は、しばらく忘れられないと思います。天気も本当に良いし、イングレスの神さまのおかげですね!
(通訳は贅沢にも、Googleの川島優志ウェブマスターマネージャーにしていただきました)
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日比谷野音から外に散らばるエージェント達を追いかけ、筆者も街中へ。イベントルールは、イングレスの画面上に記された該当ポータルを「ある決められた計測時間の瞬間に、自勢力のものにしている」事。計測は第1回から第4回まであり、抑えるべきポータルも新橋、御成門、神谷町、麻布十番、有栖川宮記念公園、恵比寿、渋谷と広く数多くあり、その中を5000人が目的を持って歩きまわるわけですから、イベントを知らない人間からすればとても不思議な集団に見えたに違いありません。
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事実、よく見てみると、日比谷から虎ノ門、新橋に西新橋、御成門方面に渡って、どこに行ってもDarsana参加者の姿を発見できました。あるものはポータルの前に陣取り、またある者はマップを見ながら該当ポータルへと歩を進める。チームで参加しているメンバーの多くは事前にやり取りして、予め自分たちの担当ポータルを決めておき、その上で戦っていたようです。
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時間にして14時過ぎでしょうか? エンライテンド側のチームから離れ、レジスタンス側のチームに同行した私の耳に、「なんだ、これ?」という言葉が飛び込んできました。声を上げた参加者の持つ端末には、Intel MAP(インテリジェンスマップ:イングレスの勢力図が世界サイズで確認できるマップ)の画面が表示されており、それまで黒かった地面が緑色に染められていたのです。この時、まだ始めてわずか3日ほどだった私にはよく分からなかったのですが、説明を受ける内に事態が飲み込めました。
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最初は「東京を覆うほど大きなポータル間のリンクが張られ、緑のCFに染められているんだ」と考えたのですが、マップのスケールを大きくすると、日本全土が緑色のフィールドの中。北海道の襟裳岬から中国の山東半島、そしてグアムまでを結ぶ、世界規模に巨大な三角形が表示されていました。これは地図上だけの話ではなく、実際にその場へ行き、現地のポータルにレゾネーターを設置した人間が存在している、という事を意味しています。
それも、事前に察知して妨害に動いたレジスタンスエージェントをやり込めた、と……壮大なミッションですが、このDarsanaに合わせた行動である事は間違いありません。敵陣営のCF下では一方的に不利になるため、エージェントは血道をあげて取った取られた張った張られたを繰り返し、そこに一喜一憂します。それなのに、日本全土がエンライテンドの緑フィールドの中という事実。いくらレジスタンス側の人数が多いとは言え、勝敗は分からなくなってきました。
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しかし、それはそれで仕方がないと、レジスタンスのチームは張り切りムード。任されたミッションをこなすべく、西新橋から御成門、東京タワー方面へ移動を開始しました。前述の通り、一般の方からも「なんのイベントですか?」「何が起きてるんですか?」と尋ねられるほどの人数がずらずらと歩く姿は圧巻で、その上に圧倒的な青率です。数日前にエンライテンドを選択した筆者はなんだか居場所がない感じ。なんとなく居心地の悪さを感じていたところ、同行していたレジスタンスのチームの方々から親切にしていただきました。
イングレスの解説や現況を始め、手がかじかむと言ったらホッカイロを分けてくれるなど、こういう事全てがこのイングレスというゲームの醍醐味であり楽しいところなのでしょう。基本的に歩きで移動しますから健康にもいいわけで、様々な人とコミュニケーションを取りつつネットで動向を調べ、時には機能的に動きつつまた一方では互いに助け合う。オフラインミーティング(オフ会)が多いのも納得で、今回のように人気のないところや山頂にあるポータルへ出かける人だっているのです。これこそ真に「ソーシャルなゲーム」だと呼べるのではないでしょうか?
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話をしている間にもゲームは進み、いよいよ最終局面。IntelMAPでは、先ほどまで日本を覆っていた緑のCF表示がいつの間にか消滅しているという事態に。そんな状況でも勝負は続き、どこへ行ってもエージェントばかりの空間は、どこか非現実性を伴った感覚を与えてくれます。そのエージェント達は、個々のポータルの状況は分かっても全体の数字は分からないため、ギリギリまで駆け引きを続けていました。
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戦い終わって日が暮れて、渋谷へ移動して楽しい楽しいパーリィタイムの始まりです。会場にはイングレス関係の同人グッズを始め、ローソンによるイングレスTシャツなどが発売されていました。
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これはローソンのTシャツ。中には実際に着て歩いている人も。
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イベント中にも多くの方々が着用していたウインドブレーカーです。2000円で買えたのか……。筆者はエンライテンドなので青はちょっと(笑)
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こちらは、漫画家・イラストレーターである「もみじ真魚」さんによる同人誌「女子高生がイングレスをはじめたら」。ご本人は顔出しNGとの事で、手だけのご登場となりました。女子高生二人をメインにした漫画は、柔らかいタッチのほんわかギャグです。同作があるかどうかは分かりませんが、シリーズ最新刊は冬コミの30日に入手可能なので、もみじ真魚さんのサークル「こもれびのーと」へどうぞ。
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こちらは8人からなる同人誌「ぼくたちのイングレス」。ラノベ作家の土屋つかささん、更伊俊介さん、イラストレーターのWednesdayさん、木野陽さん、新盤さん&ウサミルイさん、中田吉法さんの共同作で、イングレスに対する想いやらコラムやらイラストやらショートショートやらなんやら色々なモノが詰まった一冊。ネット委託はこちらになります。
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その他、物販には様々なものが販売されていました。
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ステージ上ではライゾマティクスのディレクター真鍋大度氏と黒瀧節也氏二人のDJ/VJによるイングレスのAPIを用いたパフォーマンスが流れ、物販からも次第に人が集まり始めました。
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続いてGoogleの川島優志氏が登壇し、イングレス賞、チーロ賞、ローソン賞などを発表。
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イングレス賞にはヨーロッパでしか発売していないデジカメを、週間142km踏破したというエージェントに。
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モバイルバッテリーのチーロ賞該当者には、イングレスロゴの入ったバッテリーがプレゼントされました。
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なお、1月にはイングレスとチーロとの公式バッテリーが発売予定との事です。
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続くローソン賞には、驚くなかれ、なんと「からあげクン一年分」が贈られるとの事! 一年分と単純に言われても一日一個でも365個分。どうなってしまうのやら……。
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最後にいよいよジョン・ハンケ氏が登壇。「歴史上最も大きなイベントを闘い抜いた皆さんに拍手を!」と挨拶を始め、いよいよ結果発表。
マニラはエンライテンド、ソウルはレジスタンス、オークランドはエンライテンドがそれぞれ勝利。そしてDarsana Tokyoは938対804で、エンライテンドが勝利しました。開始直後からエンライテンドのCFが展開されていたにも関わらず、ここまで数値的に追い付かれているのは、やはり絶対的な人数差でしょうか? 場所によっては下手をすると10倍近い人数差があったというイベントだけに、エンライテンド勝利の報に会場の緑は大喜び。レジスタンス側で取材をしていた私は、少々複雑な気持ちでした。
エンライテンドを勝利に導いた立役者である日本全域に張られていたCFですが、最終計測前に解除されていたと先ほど書きましたよね? ここにも尋常ならざる努力をされた方がいらっしゃったようで、14時の時点で、北海道在住のあるレジスタンスエージェントが襟裳岬へと向かい、現地で戦ったのだとか。当時の北海道は折からの寒波による降雪があり、悪天候の中、それでも現地に向かったエージェントがいた。それだけでもインパクトがあるのに、L7とはいえ妨害に成功したという事に対し、素直に賞賛を贈りたいと思います。エンライテンドだとか関係ないですからね。とても真似できませんよ。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
12月はエンライテンドに軍配が上がりました。続く3月(予定)では、どちらに軍配が上がるのでしょう? 日本の均衡はレジスタンス優勢ですが、世界的に見ると常に変動し、揺れ動いているのがイングレスです。Darsana Tokyoと同時期にはカザフスタンもエンライテンドのCFに覆われていましたし、過去にはスカンジナビア半島で大規模なCFが張られたそうです。今なお変動し続けている勢力図と、常に勢力の書き換わるポータル群。例えば、通勤途中にそれらを眺めながらハックして、アイテムを貯めるのもまた楽しいものです。「レベル8まではチュートリアル」と言われるゲームだけに、筆者などは何も分かっていないに等しいレベルですが、楽しくも嬉しくもあるイベントとなりました。
健康のために歩きたいという方、なんだか面白そうという方、そんな方に、是非おすすめしたいゲームです。今からでも遅くありませんから、どうぞ気軽にやってみてください。