そんなビルコミには、実はゲームを開発する上ではもはやお馴染みの、Unityなどの技術による3Dモデルが使われているのです。今回CEDEC 2015で行われた公演「エンターテイメント技術を使った空間アプリケーションの創造」では、同社の粕谷貴司氏と番場正敬氏から、建設分野へのエンターテイメント技術の適用が語られました。
建設分野で活躍する3Dモデル
そもそも、なぜ3Dモデルを建設に活かすのかというと、粕谷氏いわく、一般人でも扱える、拡張できる点、さらにプレゼンテーションがスムーズに行くため、取引相手との合意形成の手段となる点を挙げていました。
具体的なアプリケーション例としては、ビルごと、フロアごとに細かくエネルギーを管理できる、エネルギーの「見える化」、スマートフォンから照明や空調を操作できるパーソナル制御、個人認証タグを使い個人に合わせた照明・空調を連動制御する個人認証システム連動制御などがあります。
また、3D(Unity)を使った直感的な設備制御も特徴のひとつ。すでに竹中工務店の東京本社には2014年から導入され、ユーザビリティや可能性の検討が実施されているといいます。そのほか、現在はビルとビルに関わるさまざまな装置を対象としてハックをするイベント「スマートライフハッカソン」を定期的に開催しており、さまざまなアイディアを元にさらなる普及を目指しているとのこと。
粕谷氏は「3Dモデルを利用することで、容易にモデルを作成し、建物やIoTデバイス、SDM(Software Defined Media)と連携させることができる」とまとめました。ちなみに、SDMと3Dを連携させると、実空間における3次元の音響空間と、Unityによる仮想空間の連動が可能になるとのこと。このように、現実世界へダイレクトに影響を及ぼすことも実現できるそうです。
Unityを利用した建築空間体験コンテンツ
続いては番場氏が登壇し、Unityを使用した画期的なコンテンツ「VRuno(ブルーノ)」を紹介しました。「VRuno」とは、建設イメージを多くの人と共有するためのVRコンテンツのこと。VRを利用することにより、実際に建設する前の段階で自由な視点で観察できるほか、複数案を瞬時に切り替え最適なデザインを模索することも可能になります。
番場氏によると、建設する際の受注から完成までには何度もイメージを表現する機会があるため、「VRuno」を使用する機会は非常に多いとのこと。扱いが比較的簡単なUnityを採用しているため、社内教育、マニュアル作成が容易で、現在では東京、大阪、名古屋の全社に採用するまでにいたったといいます。
ここからはUnityから話題が離れるものの、エンターテイメントと建設の連携として、五感レスポンスを利用したアイディアも紹介されました。例えば、音も振動もしないスイッチよりも、「パチン」と音が鳴るスイッチのほうが、行為が確認できて安心感を得られます。この視覚や聴覚、触覚からくる五感レスポンスを、建設に活かす企画が竹中工務店では進んでいるとのこと。
現在は五感レスポンスの応用として、カメラを利用したゲーム感覚のシステムを高齢者施設へ導入する動きもあるといいます。今後は効果検証実験を進めるとともに製品化を目指し、将来はオフィス、商業施設へ応用することも考えているそうです。