GMOインターネット株式会社
・刀根一之氏 (GMOインターネット株式会社)
・本間一成氏 (GMOインターネット株式会社)
―――5年連続でイードアワード最優秀賞おめでとうございます。投票者数も昨年度より増えている中での受賞ということで、より多くの方々にGMOアプリクラウドが支持された形となりました。
刀根: ありがとうございます。「機能部門」と「海外部門」が優秀賞にはなってしまいましたが、そのほかの部門「総合満足度」「性能部門」「コストパフォーマンス部門」「サポート部門」で最優秀賞を獲得することができました。クラウド事業者で唯一すべての部門でご評価いただいたことは本当に嬉しく思います。一度最優秀賞をいただいたからには、それを守り切らなければ行けませんよね。年末になると毎年プレッシャーに襲われます。逆にそれが、良いモチベーションにもなっていて、機能の拡張・改善やサポート向上に繋がり、結果としてサービス全体のクオリティを高くしていると思います。
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―――今回からフリーコメントの記入欄を増やしたところ、「柔軟に動いていただいた」「サポートで助かった」など、きめ細かいサービスが高く評価されているように感じました。特に総合満足度とサポート部門の点数に相関性があるようです。
本間: そこが国産クラウドの強みなのは間違いないでしょうね。我々も全力で取り組んでいます。実際、ゲームクラウドアワードの結果が1年間の取り組みに対する成果指標になっています。今年も最優秀賞をいただけたのは、それがきちんと評価された結果だと思っています。すなおにうれしいですね。
―――ふりかえってみて大きかった点はなんでしょうか?
本間: 昨年は新たに「GMOアプリクラウドVer3.1」をリリースして、サーバーにSSDを搭載し、オールフラッシュの環境が組めるようになりました。サーバーの高速化に対するニーズは毎年高まっていますので、それが提供できた点は大きかったですね。また、ネットワークエンジン「Photon」を国内で提供するグループ会社GMOクラウドとシナジーを発揮するため、新たに「Photon×GMOアプリクラウド」のコラボレーションを開始しました。共同でのイベント開催や特設サイトの公開など、できるところから取り組み始めました。この2点が大きな出来事でした。
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―――オールフラッシュ化に対するニーズが大きかったのでしょうか?
本間: そうですね。ゲームだと特にディスクI/Oがボトルネックになりがちなので、オールフラッシュ化でそこを改善したいという要望が強くありました。
―――「Photon×GMOアプリクラウド」の反響はいかがですか?
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本間: 問い合わせは数多くいただいています。スマホゲームのトレンドがリアルタイム・マルチプレイに移行する中で、Photonに対するニーズが高まっています。その上で何か適したサーバーはないかと見わたしたとき、GMOアプリクラウドを検討されるお客様が増えているのです。先日弊社で開催した勉強会でも、GMOアプリクラウド上でPhotonを使用することのメリットについてご説明したところ、興味を持っていただいた複数社の方々からお声がけいただきました。この取り組みに手応えを感じ始めています。
刀根: 業界初の機能として、2016年3月24日にGMOアプリクラウドのコントロールパネルからPhotonの環境を自動的にセットアップ(イメージ、Config、ネットワーク設定)できる機能をリリースしたばかりのため、本機能を実際に使っていただいた事例はこれから増えていくのではないでしょうか。本機能を提供することによって、できるだけお客様の負担を減らせたという声をいただきたいですね。
本間: 他にもコントロールパネルのUIを改善したり、支払方法にクレジットカードや口座振替を利用できるようにしたりと、細かなご要望にもお応えをしてきました。そういったところが評価されたのではないかと思います。
―――ネットワークインフラで求められることが、年々増えてきていますよね。
刀根: 今やスマホゲームが当たり前になっていますし、マルチプレイというキーワードが主流になってきていて、実際にゲームをプレイしていただくお客様のことを踏まえると、レイテンシーが機会損失に直接つながってしまいますので、これからも、ますます重要になる部分だと認識しています。
―――サーバーに求められる性能のポイントは変わってきましたか?
刀根:フィーチャーフォンのソーシャルゲームでもプラットフォームの規定で、いわゆる「5秒ルール」(アクセスして5秒以内にレスポンスを返さなければいけないとするルール)などがありました。フィーチャーフォンからスマートフォンへとデバイスそのものも進化して通信環境もより良くなってきていますから、より高速処理できるハイスペックなサーバーも求められてきています。
―――どのようなサーバーが求められているのでしょうか?
刀根: 以前は仮想サーバーで16vCPU、64GBというスペックを提供しておりましたが、Ver3.1からはお客様からのニーズもあり、40vCPU、メモリ120GBといった、専用サーバーのようなスペックのものもご提供しています。
―――ゲーム会社の方も「価格よりはスペックを重視したい」ということなのでしょうか?
刀根: もちろん価格も重要だと思いますが、それよりもコストパフォーマンスや用途を重視されますね。ディスクI/Oを追求するならSSD、そこまで必要でなければハードディスクと、使い分けられています。お客様の側でも、どのサーバーやどの構成が自社のサービスに対して一番フィットするのか、常に検討されていると思います。弊社ではバランス良くクラウド事業者の中でもかなり豊富なラインアップをとりそろえることで、最適な環境をご提供できるようにしています。
―――ゲーム業界全体でネットワークエンジニアに対する人材不足が続いていますね。そもそも、余裕がなさ過ぎて人材教育について考える暇もない。サーバー構成についても、できればお任せしたいという声が多いようです。
刀根: できるだけお客様に歩み寄るサポートや営業を心がけています。「できません」というのは簡単なのですが、そうではなくて、どうしたら課題が解決できるのか、一緒になって考えていくことを重要視しています。弊社だけでは解決できない課題でも、グループのサービスやパートナー企業との連携で解決できることもあります。
―――GMOグループだけで多種多様な展開をされていますよね。
刀根: リワード広告ならGMO TECHのSmaAD、SSLサーバ証明書を提供するGMOグローバルサイン、自社のドメイン名登録サービスお名前.comなどゲーム会社様にも有益な多様なサービスがあります。こうしたサービスを含め、総合的なご提案ができるところが強みだと思っています。GMOアプリクラウドを契約いただければ割引でサービスを提供できるものもあります。ゲームのインフラだけでなく、お客さんが困られた時にお手伝いする手札が多いこともご満足いただけている理由からも知れません。
―――実際にサポート部門でも最優秀賞をとられていますしね。
刀根: 外資系のクラウドサービスでは、サポートでチケット制を導入されていたり、利用金額によってサポート内容が変わるステージ制を導入されていたりしますよね。サポートについては、使ってもらわなければ、わからないところかもしれませんが、ゲーム会社様はスピードを求められるため、できるだけレスポンスを早く返すようにしていますね。最近ではお客様から、より多くのフィードバックをいただけるような施策にも力を入れています。そうした声をうまく吸い上げて、機能改善につなげていきたいですね。
―――国内のゲーム市場で二極化が進んでいる中で、今後GMOアプリクラウドはどういった戦略をとられていくのでしょうか?
刀根: 一番重要なのは、サービス開始時からのコンセプトである「ゲーム特化型のクラウドサービス」をぶらさないことでしょうね。
本間: 「Photon×GMOアプリクラウド」も、そうしたコンセプトから生まれてきた施策の一つです。そこがぶれてしまって、ゲーム以外の用途にも広げていこうとすると、魅力がなくなって埋没してしまうと思っています。
―――先日、テックビューロが提供するプライベートブロックチェーン技術の「mijin」をベースとしたオンラインゲーム用バックエンドエンジンを、共同開発されるという発表もありましたね。
本間: ブロックチェーンは分散型の台帳技術で、多数のノードに同一の記録を同期させる仕組みをとることで、ゲーム内通貨やアイテムなどを外部から改ざんできないようにする技術です。2016年内にGMOアプリクラウドで提供できるように、両者で研究開発を進めています。
刀根:「この技術はゲームの分野でも使えるのでは」というのがきっかけでした。ただ、それをそのまま提供しても使いにくいものになってしまいますので、ゲーム会社様向けに絞り込んだサービスにしていきたいと思っています。
―――では2016年の取り組みとしては・・・
刀根: 前半は「Photon×GMOアプリクラウド」、後半はブロックチェーンという二つの山を想定しています。まずはPhotonとのシナジーを最大限に発揮していくことが重要ですね。プロダクトの部分は勿論のこと、外部のイベントなどにも積極的に露出して、ブランディングを強化していきます。
―――AWSがゲーム開発者向けサービス「Lumberyard」と「GameLift」をローンチするなど、競合他社の取り組みも増えてきました。Photon×GMOアプリクラウドとも競合しそうです。
刀根: 日本のゲーム市場のみでフォーカスしてみると、Photonはスマホアプリに採用されているのに対して、LumberyardとGameLiftは家庭用ゲームにフォーカスしているように見受けられます。そのため、直接的な競合という形ではないと思っています。もっとも、こうした動きは今後も増えていくとも思いますので、弊社は弊社で独自の取り組みを進めていくだけです。
本間: 実際に国内外でさまざまなクラウドサービスがあり、競争が激しくなっています。だからこそ弊社では「ゲーム特化型」というコンセプトをぶらさないようにしていきます。
刀根: 実際、機能面だけを見るとGMOアプリクラウドは物足りない部分があるかもしれません。しかし、お客様が本当に求められる機能は何かということです。弊社ではゲーム開発に必用な機能を絞り込んで提供していきます。その上で日本企業ならではの、きめ細かいサポートを行っていきます。この両輪で進めていくのが基本ですね。
―――要望の多い機能にはどういったものがありますか?
本間: 一つはPhotonとの連携ですね。ロードバランサーの実装も弊社の強みでしたが、最近ではうまく適合しないケースも出てきているので、そこはきちんと対処していく予定です。他に専用サーバーでもスナップショットがとれるようにしたい等、いろいろなご要望をいただいています。その中で優先度をしっかり見極めて進めています。
刀根: 他社とは同じことをしない、同じ土俵に立たないというのが基本です。本当にその機能がゲーム開発に必要なのか、そこを精査してからの実装になります。
―――日本・アメリカ・韓国にデータセンターがありますが、アプリの海外展開サポートという点では、特徴的な動きはありますか?
本間: 最近の傾向としては海外→日本の案件が増えています。特に韓国から日本へのローカライズ事例が増加しています。そのため日本のデータセンターに対する需要が増えていますね。また、東アジアへの展開(特に台湾)のご要望も増えてきました。ここについては、日本のデータセンターからでもレイテンシはありません。実際に台湾ゲーム市場への展開の際に、ご活用いただいている事例もあります。
―――今年で5年連続の最優秀賞受賞ですが、5年前と比べて一番変わったところは何ですか?
本間: 変化がありすぎて一つに絞るのは難しいですね。
刀根: 逆に変わってない点は一つで、ゲームに特化していることです。ここが弊社の強みだと思っていますし、逆に他社と同じような形にしていくと、お客様が離れていくと思っています。ゲームのサーバー屋さんは、弊社だけですからね。
―――最後に2016年の意気込みをお願いします。
本間: 来年のクラウドアワードでも最優秀賞をとれるようにサービスを磨き上げていきたいですね。できれば「殿堂入り」にしてもらえるとすごく嬉しいです。実際に年末になると、受賞を逃がしてしまうのではと、胃が痛くなるほどです。
刀根: 僕らがインフラを提供することで、結果的にゲームがヒットして、一人でもゲームを楽しんでもらえる人が増えればと思っています。縁の下の力もちとして、ゲームを楽しんでもらえる環境を裏で支えていきたいですね。
―――ありがとうございました。
GMOアプリクラウド×Photon