●GMOアプリクラウド
・本間一成 (GMOインターネット株式会社)
・刀根一之 (GMOインターネット株式会社)
●Photon事務局
・丸山毅(GMOクラウド株式会社)
・並木健太郎 (GMOクラウド株式会社)
PhotonとGMOアプリクラウド、それぞれの強み
Photon Serverはリアルタイム、マルチプレイヤー、マッチメイキング等のネットワーク機能をサーバー(Windowsサーバー)にインストールして利用するネットワークエンジンです。Unityをはじめ、主要プラットフォームに対応しています。開発チームはドイツにあり、世界中のオンラインゲームで広く利用されています。
Photonシリーズには他にSaaS型(Software as a Service)のサービスで、導入が非常に容易なPhoton Cloudがあります。これに対してPhoton Serverはオンプレミスのサーバーアプリケーションであり、別途サーバー構築が必要なものの、C#ですべてがカスタマイズ可能。そのためマルチプレイヤーゲームのバックエンドを自由に構築できます。
これに対してGMOアプリクラウドはゲームに特化したクラウドサービスであり、イードが主催するGameBusiness.jp「ゲームクラウドアワード」で4年連続の最優秀賞に輝くなど、実力は業界内でも高く評価されています。イメージキャラクターの美雲あんずは、サーバーエンジニアならずとも、一度はみたことがあるのではないでしょうか。
昨年10月には国内クラウドベンダーとしていち早く、SSD搭載プランの仮想サーバーと専用サーバーを組み合わせた、オールフラッシュ環境でのサーバー構築を実現し、注目を集めました。もちろん、Photon Serverでの利用にも適しており、Photon運営事務局の推奨環境として、認定されたクラウドサービスです。
いわば「理想の具材」と「理想の器」がベストマッチした形となった今回のコラボレーション。この背景としてGMOアプリクラウドの本間一成氏は「モバイルゲームを中心に、リアルタイムで協力・対戦プレイを行いたいというニーズが加速しており、GMOアプリクラウドを窓口としたPhoton Serverへの引き合いが増加している」ことを上げました。
これに対してPhoton運営事務局の丸山氏も「Photon Serverへの問い合わせ数が、一年間で2倍以上に増えた」と回答。採用事例として公開されている『リトル ノア』(BlazeGames)や『ファミスタドリームマッチ』(バンダイナムコエンタテインメント)などのタイトル以外にも、ランキング上位に位置する数多くのゲームで採用実績があると答えました。
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Photon導入をGMOアプリクラウドががっちりサポート
今回のコラボで可能になる点は下記の4点です。
(1) GMOアプリクラウドによるPhotonServer専用のインストール・設定マニュアルの公開
(2) 無料のプレミアム電話サポート
(3) Photon Server用のテンプレート提供
(4) GMOアプリクラウドのデータ転送量の利用代金に上限設定
プレミアム電話サポートでは、WindowsサーバーにPhoton Serverをセットアップする方法について、専用窓口による24時間365日、無料サポートが提供されます。これまでPhoton Serverではメールサポートのみ受けつけていましたが、GMOアプリクラウドによるサポートが提供されることで、より導入時の敷居が下げられることになります。
また、これに付随してGMOアプリクラウドによるPhotonServer専用のインストール・設定マニュアルが公開中です。これによりWindowsサーバーの運用経験が少ないチームでも、インストール方法からネットワーク設定(ポート転送設定)まで容易に実現できます。現在はPhoton Server Ver.3向けのマニュアルが公開されていますが、Ver.4に向けてマニュアルの整備が進行中です。
さらに、1月末にはPhoton Server用のテンプレートも提供される予定です。GMOアプリクラウドでは、コントロールパネルから必要なスペックとイメージを選択してサーバーを作成します。このイメージ内にPhoton Server用のテンプレートを用意することで、わずか数クリックでサーバーが構築できるようになります。
最後のポイントがデータ転送量の利用代金の上限設定です。リアルタイム通信やマルチ対戦ゲームでは、一般的にデータ転送量が増加する傾向にあります。しかしGMOアプリクラウドなら、どれだけ転送量が発生しても、利用料は月額3万円(モバイルゲーム以外では15万円)が上限となっています。刀根氏は「Photon Serverを利用するということは、頻繁に通信のやりとりが発生することになるため、上限設定があることによりコスト引き下げに大きく寄与するのでは」と語りました。
このように、今回のコラボのポイントは「GMOアプリクラウドのサービスソリューション」を用いて、「Photon Server導入における敷居を下げ、顧客サービスを高めること」にあるといえます。Photon運営事務局はGMOクラウド社が運営しており、両者のコラボはグループシナジーを高める上でも理に適っています。
もっとも、GMOアプリクラウドとPhoton運営事務局はそれぞれ独立した事業であり、互いのサービスを強制するわけではありません。丸山氏は「今回の取り組みは非常に有益と考えますが、今後もPhoton Serverをお好みのインフラ環境で使って欲しい」と語ります。
その上で本間氏は、「現在89社にも及ぶGMOインターネットグループ全体でさまざまなサービスを組み合わせて、シナジー効果を効かせた提案を今後も行っていきたい」と説明しました。過去にもセキュリティ・アナリティクス・プロモーションなどでグループシナジーを発揮しており、今回のコラボもその一環というわけです。
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GMOインターネットの本間氏 | 同 刀根氏 |
2016年の機能開発やアップデートで連携がさらに強固に
実際に刀根氏は、GMOアプリクラウドが提供するオールフラッシュサーバーは、Photon Serverが得意とするリアルタイムゲームに最適ではないかと語ります。リアルタイム処理におけるディスクI/Oのボトルネックを解消するには、ハードディスクではなくSSDストレージを使用することが求められるからです。
また、リアルタイム処理の需要に伴い、サーバーインフラ内のロードバランサーを回避して直接クライアントとサーバーを接続したいという要望も高まっていると指摘。GMOアプリクラウドとして、対応を検討していると語りました。2016年もこうした機能開発を含めて、よりオンラインゲームに特化したクラウドサービスにしていきたいと語ります。
これに対して並木氏は、もともとPhoton Server内にもロードバランサーの機能があるため、そうした改修はありがたいと語りました。またWindowsサーバーに限定されることで、OSのライセンスフィーに関する懸念をいただくこともあるが、Linuxサーバーに比べて処理速度が非常に速いため、サーバー台数が節約できると指摘。コストの優劣は状況によると言います。
また2016年にはPhoton Serverの、Ver.3からVer.4へのメジャーアップデートが控えています。これにより新たにHTTP(S)が利用可能になり、IPv6にも対応。アプリ構造がリニューアルされて、新たにプラグインが利用可能になり、カスタマイズも容易になります。新たにボイスチャットを可能にするPhoton Voiceのリリースも予定しています。
並木氏は「これらは2015年の夏に発表した内容で、リリーススケジュールが遅れているが、公開に向けて着実に準備を進めていきたい」と語りました。丸山氏も「ネットワークエンジンを自社開発されるケースも多いが、Photonをつかっていただくことで開発の期間の短縮や負荷の軽減が可能な点をもっとお伝えしていきたい」と補足しました。
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GMOクラウドの丸山氏 | 同 並木氏 |
スマホゲーム戦国時代の中で、各社の生き残り競争も激化しています。その背景にあるのが市場の成熟で、シングルプレイモードが存在せず、マルチプレイオンリーのゲームも少なくないほど。今後もミッドコアユーザーを中心に、リアルタイム協力・対戦ゲームの需要はさらに増加していくでしょう。
こうした中、GMOアプリクラウドとPhoton Serverのコラボは、重要な選択肢をゲーム開発者に提供していると言えそうです。