――15分になった理由は?
前島:今回はアトラクション的要素はありながらも、ストーリ-仕立てとなっているので、クリエイティブディレクターに就任いただいた浅井さんと、浅井さんの推薦で本作ディレクターに就任いただいた東弘明さんとで話し合っていただき決めていただきました。
――東氏が選ばれた背景にはなにがあったのでしょうか?
前島:東さんがディレクターとして起用されたのも、「ポカリスエット」関連のドーム映像やコンサート映像などの映像作品を多数手掛けてきたからです。つまり、これまで360度映像などに経験値を持っていたひとたちを集めた訳ですね。
――本作では、これまでのゲームエンジンではなく360度映像を採用したとのことですがその背景は?
前島:当時、VRがそこまで普及していない状況の中で「 I.GはハイエンドVRが出来る」ということを真先に伝えるという意味では、この方式が一番早く実現できると思ったんです。本作はスマートフォンにも対応しているのですが、そういった環境でも360度映像を見せるためには、プリレンダリングが適切だったんです。「一般のお客さんに凄い」と思われる映像体験を提供することが目的だったからです。
――ストーリー展開が非常にアニメ的だと感じたのですが…
郡司:本作の大きな特徴は、これまでVRコンテンツは1人称でつくってきたのですが、今回は3人称視点を取り入れているという点です。単純にアニメーションの技法をVRに持ち込んだらどうなるか見てみたかったというのがあります。ただ、実はあまりアニメは意識していないんです。東さんは実写を中心につくられてきた方なので。でも、当方からクリエイティブな部分で指示したことはありませんでした。東さんに集中してつくってもらいたかったので。また、VR酔いを起こさないよう考慮していますが、敢えて意識しすぎないようにしました。そういったことを意識することで映像そのものがつまらないものになってしまうと困るので。
――脚本も独自な雰囲気ですよね。
郡司:単なるアクション作品にしていません。作品はループするような作りになっており、それは「輪廻転生」をイメージさせるものになっていました。ただ、制作期間も非常に
限られていたのでミニマムにしつつ観客の満足度を高められるものは何かをシナリオの段階から詰めていく必要がありました。
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
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(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
――開発期間は?
前島:2016年2月に話をいただき、5月の段階で最初に見せる場所を東京ゲームショウとして決定したので非常に短期でした。
――短期間で制作するにあたり工夫した点はどこでしょうか?
前島:まず、時間的制約と制作物などの制約ですね。アームスーツとロジコマは、「新劇場版」で使われた素材を転用しています。ただ、アニメーション用モデルなので、フォンシェーディングにむかない部分に手をいれてもらいました。それ以外に町の風景などはすべてゼロからつくってもらいました。
郡司:東さんは非常に多くのクリエイターやCGスタジオとネットワークがあるのでシーンごとの素材にあわせて発注先を変えていたそうです。
――わずか15分なのに?
郡司:采配は監督の東さんにあるので。例えばリグの部分のみこのスタジオに…とか
前島:それぞれの工程に向いている方にパーツごと発注していたと聞いています。ワークフローとして得意な分野が違っているのです。一方、私自身は素材などの提供などに集中させてもらい、制作に関わることはありませんでした。完全な360度映像ですがゲームエンジンで開発するようなリアルタイムレンダリングではないので制作プロセスはむしろ映画と同じです。レンダリングにはvrayを採用したと聞いています。映像描画はトップ・ボトム形式を採用しています。立体視で再生する場合、右目用再生スクリーンと左目用再生スクリーンをつくり、それぞれの映像を描画するわけです。結局、打ち上げのときに、100人位、7-8社位いたと思います。この点は東さんの力が大きいですね。
――反応はいかがだったのでしょう?
郡司:やはりよかったですね。作り始めた頃はそこまでではなかったのですが、2015年の東京ゲームショウあたりからVR、VRと言われるようになっていて、ちょうど作っている時期と、ブームがシンクロした感じでした。2015年のものは仮素材が多かった感じで、素子も、もうすこしロボットのようなイメージだったのですが、それでもものすごい反響でした。その後、いろいろなイベントで持っていったのですが、2015年末までには現在バージョンにまでに完成度を高めました。
――そんなに頻繁にイベントをやっている理由は?
郡司:VRは映像では伝わらないからです。実際に体験してもらわない限り、その凄さは分かってもらえません。ですので、小さいイベントも含め参加し、その価値を拡げているという段階です。見たひとは必ず「こんな世界がある」と分かってもらえるのでそれを広げるということです。
――これらVRコンテンツをいくつか開発して、VR向けのストーリーを考えるうえで気をつけるべきなのは?
前島:知見というわけではないのですが、実際に体験してから、このデバイス用の作品では人殺しの作品はつくってはいけないな、と感じたことです。これは単純に(VRの世界に行ったら)戻ってこれない人がいるような気がしたからです。つまり、レーティングをちゃんとしないとね、ということですね。
――表現としてやりたいことは?
前島:これまでのタイトルで、VRをやってみたいものはあります。
郡司:映画「マイノリティレポート」で、仮想空間で指揮者になっている人がたくさんの人からほめられるというシーンがありましたが、本来体験できないことを体験できるというのがVRの特徴だと思うんですよね。なので、15分程度で、そのような体験を数多くつくっていくという感じです。
――VRだったら、如何なるストーリーが最適だと思いますか?
郡司:劇中のあるシーンを別の視点から再現するとかはいいですね。やはり、15分位ですね。単純に視聴する側がなれていないというのもありますが、10分でつらくなり、15分くらいが限界だと思います。VRゲームをやっていくひとが増えてくれば、1-2時間へっちゃらという人もふえるかと思いますがゲーム自体もまだ短編が多いですよね。
――アニメスタジオとしてのVR体験は何か一番手ごたえがありますか?
郡司:いま、VRって、軸として2つあるんです。ひとつはゲームで、もうひとつは体験。私たちは体験する方を目指しています。普段いけないところを見てみたい、体験してみたい。その中に、アニメ―ションの世界に入りたいというのがあります。アニメーションの1シーンに入ってみるというのもありますし、キャラクターと向き合ってコミュニケーションをするというのもあります。
――これらを踏まえつつ、今後の御社独自の戦略についておしえていただけますか?
前島:現在「第502統合戦闘航空団ブレイブウィッチーズ VR Operation Baba-Yaga/雪中迎撃戦」をシルバーリンクさん・角川さん・トライスラッシュさんと組んで制作しています。Unrealでつくっています。アニメーションは2016年12月に終わってしまうので記憶にのこっているうちに出したいと思っています。せっかくならPlayStation VRでも配信したいので、SIEさんとご相談も始めています。
――より長期的な展望としてはどのようなものが考えられますか?
群司:実は、「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」はドーム映像もできるようになっています。日本ジャイアントスクリーン学会の賛助会員にもなりました。VR体験をするには、HMDがあり、スマホアプリがあり、同時に全周天型もあり、といろいろな方法があります。また現在はモノが売れず、体験にしかお金を払わない時代です。ですので、このようなコンテンツはまさに求められています。私たちはそこを狙っていきたいと思っています。
――VRそのものの可能性についてどう感じますか?
郡司:まずやっておかないのと、というのが正直な気持ちです。流行ってからやっても遅いので。幸い、IGストアでの反応も素晴らしいです。ネットカフェへのコンテンツの提供もやってはいるのですが、現状、特定のネットカフェのみで、人気が出ています。オンラインゲームが強いカフェなどです。ですが、たとえばこういった場所が日本で数百か所だったのが中国展開で数万か所となるといったことも考えられます。あるいは、PS VRのように配信プラットフォームがあるところとコンテンツ提供で組むということもあり得るでしょう。つまり、タッチポイント的なもの、またはプラットフォームが出来てきたときに素早く対応出来るようになれればと思っています。
――ありがとうございました!