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テレビゲームの世界は、新しいデバイスや技術の普及によって、その形は大きく進化している一方、楽しさを追い求める姿は変わりません。変わるものと、変わらないもの。過去と未来。そして我々が宿命的に背負う日本という存在。なかなか考える余裕のない現代ですが、少しだけ立ち止まって一緒に見つめてみませんか? 毎月1回、「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」ゆるーくお届けします。
山崎9月です。すっかり秋めいてきましたが、よろしくお願いします。今月は、やはり東京ゲームショウ2018の話題からでよろしいでしょうか?
安田ビジネスデー、一般公開日ともに来場者数が多かったですね。
山崎公式発表で4日間の累計来場者数が約29万8690人でした。一昨年が約27万人、昨年は約25万人とやや落ち込みましたが、一気に約5万人も増えて過去最高を記録したそうです。
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安田すごいですね。幕張メッセで開催するイベントで、東京ゲームショウ以上に集客するものってほかにあります?
平林そんな話になるかもしれないと思って調べてきました(笑)。チューニングカーのイベント、東京オートサロンのみが30万人を超えていました。今年の開催は3日間合計で31万9千人でした。
安田ということは、東京ゲームショウは1位に肉薄して2位の来場者数になるんですね。純粋に興行として見ても、東京ゲームショウはビッグなイベントになりましたね。
山崎e-Sports関連のブースが目立っていましたが、どんな感想を持ちましたか?
平林e-Sportsの試合を見せるブースはどこも盛況でした。東京ゲームショウとe-Sportsは相性が良いと思いました。イベント閉幕後、男子高校生のグループと話す機会があったのですが「ここ数年の中では、今年が1番おもしろかった」と言ってました。
その理由はe-Sportsです。例年ですと会場に行っても人気ゲームには長い行列ができていて、何タイトルも試遊できません。するとどうしても「PVなどを見て回る東京ゲームショウ」になりがちです。その点、同じ見るならばe-Sportsの試合のほうがおもしろかった、というのが彼らの意見でした。
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山崎日本のe-Sports市場がどうなるのかは別として、今年の東京ゲームショウはe-Sportsのおかげで集客できた記憶されるでしょう。これはある種の流れになって、来年以降もe-Sportsコーナーは拡充していくのではないでしょうか。来場者数だけではなく出展者数も668と過去最高の数を記録しました。
安田海外からの出展企業も多かったんですよね。
山崎はい。約半分の330社が海外からの出展でした。
平林私はもちろん海外からの出展が多いと知っていたので、国際色豊かな東京ゲームショウになるかと思って会場に行ったのですが、意外な感じがしました。外国から来た人が日本に馴染んでいて「外国人が多い!」という感覚がなかったんです。
山崎どういうことですか?
平林たとえばE3では、大声で話をする陽気なグループって必ずいるじゃないですか。それが東京ゲームショウでは皆、おとなしい。そんなイメージがあるんです。静かに列に並んで、人に会うと軽くお辞儀をして。肩が少しでもぶつかると申し訳なさそうな顔をしてくれて。全体的にお行儀がいいというか。
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山崎なるほど。言われてみるとそんな感じがします。
安田日本の習慣がそれだけ外国の人たちに浸透してきたということかもしれませんね。
平林安田さんは覚えていらっしゃると思いますが、80年代や90年代の頃、外国の人はあまり名刺って持っていなかったですよね。
安田そうです。ビジネスの初対面の場で「まず名刺交換をしたがるのは日本人の特徴」などと言われたこともありました。
平林ところが今では、どの国の人も名刺を持っていて初対面のときは名刺交換をします。自動販売機やお箸の使い方にも慣れているみたいで、来日するゲーム業界人の日本化が進んでいるようにも思えました。
安田思い出したことがありました。僕は東京ゲームショウの期間中は海外メディアの方から何件もの取材を受けていました。その中にメキシコのゲームメディアの方がいたのですが、JRPGを絶賛していました。もう大変な勢いで「この世で一番クールなゲームはJRPG」と褒めちぎるわけです。
そこで僕は「昔はそんな評価を受けていなかった」という話をしたんです。オンラインやマルチプレイに対応していないJRPGは、そうですね、時代で言うとXbox360が発売された約10年前には酷評を受けていた、と。そうしたら、とても驚かれました。つまり、JRPGの評価が低かった頃を知らない人たち、はじめからJRPGをポジティブにとらえている人たちが今の現役世代だということを改めて知ることができました。
平林JRPGを絶賛する世代ですか。ゲームの価値観についても日本化が起きているのかもしれません。
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安田あとは日本語ですね。簡単な日本語が話せる人が確実に増えてきていると思います。特に通訳する外国の方の日本語は完璧に近い。
山崎あ、それは同感です。平林さん、私たちもスペイン語のインタビューをしましたが、あの時の通訳の方の日本語も完璧でしたよね。広島生まれ、とのことでしたが……。
平林確かにそうでしたね。
安田インタビュー中に当社のスタッフに小声で「日本語うまいね」と言ったら、それを聞かれてしまって「いや、そんなことないよ」と言われたこともありました(笑)。
平林謙遜する、なんてことも含めて日本化されていますね(笑)。
山崎具体的な出展タイトルで気になったのは?
平林メジャータイトルの続編以外がなかなか充実していると思いました。プレイステーション4では『Dreams Universe』。私は昔からゲームをつくるゲーム、コンストラクション系のゲームを高く評価する癖もあり大いに注目していました。『リトルビッグプラネット』シリーズを開発したMedia Molecule(メディアモレキュール)の最新作です。「想像が形になるゲームクリエイティブプラットフォーム」という、素晴らしいコンセプトのゲームだと思います。
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安田プレイステーション4では『荒野行動』も出るんですよね。
山崎はい。2019年春のリリースだそうです。基本プレイ無料とのことで新風を巻き起こすかもしれません。
平林インディーゲームの出展も多かったですね。開発期間が長く、ビットサミットにも出展されていた『RPGタイム!~ライトの伝説~』の評価が私の周りでは高かったです。ゲームクリエイターを目指す10歳の少年が考えたRPGを舞台したRPG。斬新な発想です。
安田まさに、JRPGらしい発想ですね。
平林VRのコーナーでは『MakeS おはよう、私のセイ』が長蛇の列でした。女性をターゲットに絞ったVRというのは大きなマーケットだと思いました。
山崎ビジネスデーで私が見たときには4時間待ちで、日曜日には整理券を配布したそうです。
平林私の仲間が開発していて、友人たちのたまり場になっていましたが『スペースチャンネル 5 VR』も評判良かったんじゃないですか。
山崎竜に乗るVRゲーム『ガンナーオブドラグーン』も出展されてました。島根県にゆかりがある「野生の男」さんが開発しているので、私は個人的に応援しております。最後に、東京ゲームショウ以外で気になることがありましたらお願いします。
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安田ゲームとは離れますが、経営者としてやはり気になるのは米中貿易摩擦です。貿易収支に不均衡が生じたら、市場調整によって改善されていくのが通例です。ところが中国は自由市場ではありません。そこでアメリカは相手国製品に関税をかけるという古典的な手法で対抗しました。これは異例なことです。日本のマスメディアは単に貿易や関税の話として報道していますが、米中二大国の覇権争いが始まったともいえるでしょう。
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平林アメリカは最近になってウィグルでの人権問題を取り上げ、台湾に戦闘機売却計画を示すなど米中対立を感じさせるニュースがあふれていますね。
安田10月には日中首脳会談があります。日本は米中の狭間でどんなポジションを取るのか。難しい選択の時がやってきますね。
平林陣営の勝利を目指して、バレないように嘘をつく。嘘をつかないときには真実を話して信用を獲得する。私の持論ですが、国際政治は人狼ゲームにそっくりです。10月は日米中の人狼ゲームをじっくりと見ることにします。
山崎当社のVTuber、インサイドちゃんも人狼ゲームをやりますので、よろしかったら見てください(笑)。
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「THE MENTAL JUDGE 2」 http://live.nicovideo.jp/gate/lv315794620
平林もちろん見ますよ。今度、インサイドちゃんと同村したいです。
山崎安田さん、島根県で初めてのポップカルチャーイベント「しまねカミコン」が10月6日と7日に開催されますね。私も当日は取材にうかがいますので、よろしくお願いします。東京ゲームショウからはじまって、話題は盛りだくさんでした。今月もありがとうございました。
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「しまねカミングDayコンベンション2018」 https://www.kami-con.jp/