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2019年4月12日、グリー株式会社は、同社のゲーム事業専門ブランド・WFSが提供しているスマートフォンゲーム『アナザーエデン 時空を超える猫』のドラマCMをWeb限定で配信しました。俳優の福原遥さんと稲葉友さんが演じる兄妹を中心に、現代日本を舞台としたドラマが30秒×7本で描かれています。いわゆる"中世風ファンタジー"である本作を広告展開するにあたって、どのような狙いでこのような実写ドラマCMとなったのか? WFSと共同でドラマCMの制作に携わったスマートフォン向け広告代理店 CyberZのクリエイティブディレクター・吉本圭氏とクリエイティブ局責任者の佐藤大雅氏に話をうかがいました。
※本インタビューには『アナザーエデン 時空を超える猫』の物語のネタバレが含まれます。未プレイの方はご注意ください。
――まずは、ドラマCMの撮影に至った経緯を教えてください。
佐藤私たちは『アナザーエデン』のリリース当初からずっとプロモーションをお手伝いさせていただいているのですが、配信開始から2年が経ち、顕在層の方たちに向けては、網羅的にリーチできたのかなという感覚がありました。そこで、ユーザー層をさらに広げるために、何か新しい広告展開をしてもらえないか、というお話をWFSにいただいたのがきっかけです。
吉本まだ『アナザーエデン』を知らない方たちへ訴求するにあたり、本作の一番の魅力は何だろうとあらためて考えた結果、やはり加藤正人さんの壮大な物語だろうという結論になりました。プレイしていると、いたるところに謎や伏線が散りばめられていたり、いい意味での裏切りがあったりしますよね。そのストーリー性、ドラマ性をあらためて打ち出すのが一番よいだろうと。
マンガ、映画、小説……ゲーム以外の娯楽にも、物語を最重要視されている方は多いと思いますので、そういう潜在層にリーチしたい。そして、普段ゲームをそれほど遊ばない層に響いてもらうには、ゲーム画面を一切使わずにドラマ仕立てにしたらどうだろうかと提案しました。
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――ドラマCM全7話を拝見しましたが、かぎりある尺の中で『アナザーエデン』の物語の本質をしっかりと付いている物語であると感じました。プロットはどのように詰めていったのでしょうか。
吉本まずは、ドラマにするうえで『アナザーエデン』の世界観をどこまで落とし込むのかが、WFSとの話し合いの中で議題に挙がりました。作品の世界をそのまま実写に落とし込むと、どうしてもチープになってしまいますし、主人公のアルドと妹のフィーネを実写にしても、違和感が出てしまうだろうと。ですので、コンセプトを3つにしぼって企画を練ることになりました。「兄が妹を助ける」、「時空を超えた物語」、「黒猫」です。30秒×7話という尺でタイムリープモノをいかに描くかは難航しましたが、ゲームでシナリオを手がけている加藤正人さん含め、いい意味で気を使わずに発言できる雰囲気で打ち合わせできたのは行幸でした。実のある企画会議にできたと思います。
YouTube:https://youtu.be/93PcZ42ioHQ
――プロットが固まって、実際に撮影をされてみていかがでしたか。
吉本実は、制作の都合で撮影期間が2日間しか取れなかったんです。このカット数、この尺で2日間というのは、普通ではありえないほどタイトなのです。そのことに不安もありましたが、高根澤監督とカメラマンの方の連携がとてもよく取れていて、撮影はとてもスムーズに行えました。
福原さんと稲葉さんには事前にどういう構造の物語になっているかをきちんと説明させていただきましたが、撮影の都合上、いきなり第7話のカットから撮ったりもするので、ご苦労をかけてしまっただろうと思います。お二人とも、考えながら撮影に臨んでくださっていることがよく伝わってきましたし、僕らも質問をされてハッとさせられることがあり、全員が一体になってよりよいものへと昇華できました。
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――ドラマCMでは、黒猫の"ヴァルヲ"が重要な位置を占めていますね。
吉本真っ黒なのでおそらく気づかれた方はほとんどおられないと思いますが、実はプロダクションから3匹の猫をお借りして、機嫌などを見つつ随時交代しながら撮っているんですよ(笑)。
――それは全然気が付きませんでした……。
吉本これは伏線ではありませんので、その方が助かります(笑)。猫をあまり長時間濡れさせてしまうわけにもいきませんので、雨のシーンなどではこまめに交代してもらったりしていました。撮影日は生憎の天候だったのですが、ちょうど雨のシーンがある物語でしたので、そういう意味では天候に恵まれたともいえますね。
YouTube:https://youtu.be/-si2a5Fj_ms
――ドラマCMは2017年と2019年という二つの時代で物語が展開しますが、2017年の方はカレンダーから4月だということが分かります。2017年4月といえば本作の配信が始まった月ですね。こういった小ネタのようなものは、ほかにも仕込まれているのでしょうか。
吉本そうした細かなネタや伏線、描写はたくさん仕込んでいるのですが、ひとつだけお話させていただきますと、稲葉さんが演じる"はるか"の兄は、チョーカーをつけています。黒猫のヴァルヲは、首輪などを一切付けていませんが、第7話のラストのシーンでのみ、首輪をつけています。つまり……。
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――……ああー! そういうことですか! そこまできちんと読み取れれば、このドラマCMはまさしく『アナザーエデン』ですね。そう言われて見返してみると、最後にはるかが目覚めるシーンで、首にリボンを巻いた黒猫の小物が一瞬映るのも示唆に富んでいます。視聴者からの反応はいかがでしたか。
吉本本作の物語すべてを実写ドラマで表現するのは現実的ではありませんので、逆転の発想ですべてを語らず、映像からさまざまな情報を読み取って推測で盛り上がっていただけたらというのがこちらの狙いでしたが、僕らの期待以上に深く考察してくださる方もいらっしゃったので、作った甲斐があったと嬉しくなりました。
佐藤普通、ネット広告でこうした長編ストーリーを展開するのは訴求が難しく、なかなか最後まで見ていただけないことも多いのですが、ドラマ形式にすることで作品の魅力をしっかり届けられたのはよかったですね。第2話と第7話の再生数を比べてもほとんど差がなく、離脱率がとても低いです。ストーリーを持たせ、各話の終わり方を工夫したことで、続きが気になるというユーザー心理を上手く引き出せたと思います。
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――ドラマCMは、しっかりと手ごたえを感じられるものにできたということですね。今後も、こうした広告展開をされる予定や計画などはあるのでしょうか。
佐藤近年は「何か新しいアプローチでの広告展開を」というご依頼を、海外の企業も含めよくいただくようになってきましたので、ドラマCMという形は今後も活用していきたいと考えています。ただ、今回ドラマという手法を採用してうまくいったのは、『アナザーエデン』のストーリーの秀逸さがあってこそだと思っています。もし、今後もゲームの広告展開で同じ手法を使うなら、そこ(=ストーリーが秀逸であること)は絶対条件になるかもしれませんね。今後もたゆまず、新しいアプロ―チで市場をリードしていければと思っています。反省すべき点は改善して、更に良いものをお届けできればと思っています。
吉本今回、しみじみと実感したのが「ゲームのCMは、ゲーム画面などを用いつつゲームの魅力をとことん再現するか、今回のように完全に違うものとして割り切るか、とにかく振り切った方がいい」ということです。ただ、どちらがよくてどちらが悪いというものではありませんので、そこには常に難しさもつきまといます。そこをどう見極めていくかですね。この作品については、ぜひ2回、3回とご覧ください。そうすることで、新たに見えてくるものがあるかと思います。
――ありがとうございました。