今回は、多数のタイトルを独自のノウハウで長期運営するという、オンラインゲーム運営に特化したビジネスモデルを構築しており、2018年から「Brushup」を導入している株式会社マイネットの中野亮祐氏と、株式会社Brushup代表・水谷好孝氏にお話を伺いました。オンラインゲーム運営の現場において、レビューツールはどのような機能を発揮しているのでしょうか
――本日はよろしくお願いいたします。
中野亮祐氏(以下、中野)よろしくお願いいたします。
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――早速ですが、マイネットさんでは2018年の9月から「Brushup」を導入されています。そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
中野弊社では数多くのオンラインゲームタイトルを運営しています。そのタイトルごとに生み出される色々なアセット(資産・財産)を有効活用することを目的としています。
特にイラストのアセットは膨大なデータがあります。これを当初はイラスト専用ではないツールを使って管理していたので、不便でイラストが活用されづらい環境になっていました。そこで新しいツールを探していたところ、出会ったのが「Brushup」でした。
――アセットの管理を主な目的として利用されているという訳ですね。ちなみにその膨大なデータというのは具体的にどれくらいのものなのでしょうか。
中野細かいデータサイズまではお伝え出来ませんが、既にエンディングしたゲームで使用されていたものなども含めるとイラストだけで約11万点以上のアセットを保有しています。
――11万点以上のイラストとなればデータサイズもかなりのものになりそうですが、実際に「Brushup」を導入されてみて、どのようなメリットを一番に感じられていますか?
中野ゲームタイトル間でイラストをシェアして活用することでコスト削減に繋がっています。例えば「とあるイラストが必要」という状況で、イラストレーターさんに外注する場合はもちろん制作費が必要になりますし、発注やディレクションといった内製の工数や納品までの時間もかかります。ですが「Brushup」導入後は既存のイラストアセットの中から条件を満たしているものを探すだけでOKになったので、かなり便利になりました。
――それにしても非常に膨大なアセットですが、管理は難しくありませんか。
中野「Brushup」は例えるならイラストを置いておく広い倉庫のような感覚です。アセットも数自体は多いですが、イラストごとにタグ付けを行って管理しています。なので「夏向けのイベント素材としてファンタジー系の水着キャラのイラストが欲しい」となれば、「ファンタジー」「水着」など条件を絞って検索すれば簡単に探すことが出来ます。
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導入当初はタグ付けのルールを決めたり、単純にタグを割り振ったりするだけでも大変な作業でした。ですが、そこで苦労した甲斐あって今は快適に使用できています。
――このような声を聞いて「Brushup」の水谷さんはどうお感じですか?
水谷好孝氏(以下、水谷)「Brushup」には物凄く膨大な機能が搭載されているので、やはり中野さんがおっしゃったルール作りやタグ付け作業のような、利用されるシチュエーションに合わせた準備は必要になります。ただ、最初にそうした交通整理を行ったことで、軌道に乗せて便利にお使い頂けているというのは嬉しい限りです。
中野実は我々も「Brushup」さんに色々とオーダーを出させて頂いています。例えば、タグ付けやサムネイルのプレビュー表示方法について要望を出しました。アセット管理に特化して使いたいというマイネットの意図もお伝えしていました。
水谷そうですね、タグの優先順位であったりとか、サムネイルのプレビューは正方形が良いのか4:3が良いのかという所であったりとか。そうした要望に合わせてチューンナップさせて頂きました。
――カスタマイズされた使い勝手はどうですか?
中野使いやすく、直感的に使用できるデザインなので運営に落とし込む段階で導入しやすかったのがありがたかったですね。ディレクターやデザイナーなど多くのメンバーが関わっていますが特にトラブルも起こっていません。アップロード方法については権限のある者に個別で案内しますが、後は「Brushup」さんに頂いたマニュアルをベースに作成した説明書を読んで使ってね、くらいの簡単さです。
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――間もなく導入開始から2年になりますが、当初想定していなかったような使い方やメリットなどはありましたか?
中野プレビュー画面からイラストをドラッグアンドドロップすれば「PNG」形式で簡単にダウンロードできるという機能があります。これが資料作りの際に手軽にイラストを挿入できるので、とても役立っていますね。
――マイネットさんは他社からの移管という作業が多い会社だとお見受けしますが、そうした移管作業のワークフローの中にも既に「Brushup」は組み込まれているのでしょうか。
中野そうですね。契約条件に基づいて管理する必要がありますから、活用できるタイトルであれば、という前提にはなりますが「Brushup」に入れるところまでをワークフローに組み込んでいます。長期運営されているタイトルだと膨大なアセットがあり時間がかかることもありますが、根気強く対応しています。
――逆に、使っていて何か困ったことやトラブルはありましたか?
中野「Brushup」を導入し、イラストアセットという仕組みを作ってタイトル間でアセットをシェアしていますが、今のところ困ったことやトラブルはありませんね。
――他にここが良かったというエピソードなどもあればお聞かせください。
中野システムのアップデートも日々行っていただいて、導入後も要望を聞いて頂いているので本当に助かっています。レスポンスも早いですし、直近ではワークスペースの情報量が膨大になって縦長化する問題を、レイヤーの階層を増やすことで見やすく改善して頂きました。また繰り返しになりますが、情報量が多いにも関わらず検索がとてもスムーズです。導入した当時より今の方が早くなったんじゃないでしょうか。
――水谷さん、なぜそんなに早く検索できるのですか?
水谷ここまで沢山のデータがあって、しかもそのデータベースを何回も検索する使い方というのは数少ないケースです。ただ、マイネットさんの作業の中では絶対に必要な要素ということで、遅くなったと感じられる前に改善を進めてきた結果ですね。全体的な平均値を取るのではなくて、こうして各企業さんに合わせたチューニングを行っています。
――マイネットさんではコロナの影響もあってリモートワークを導入されているとのことですが、この状況下でも「Brushup」は活用されているのでしょうか。
中野はい、運営メンバーについては基本的にリモートで業務を行っています。緊急事態宣言解除後は顔合わせが必要なら出社して、という感じです。もちろん、リモートでも「Brushup」は活躍しています。
――リモートでも不便さはないですか。
中野リモート環境によってはイラストをアップする際に、容量が大きくタイムアウトしてエラーになってしまう、というのがあったくらいですね。アクセス制限によってセキュリティが担保されているので、有難いことに特にトラブルも無く進んでいます。
――では2年間使用されてきた中野さんが考える「今後こういう使い方ができるかな」というアイデアはありますか。
中野今後と言いますか既に始まっている取り組みとして、これまでの社内シェアリングだけでなく社外に向けてのライツ提供も始めています。その際、外部の方の「こんなイラストが欲しい」という要望に対して、タグ検索すればすぐにサンプルをお見せできるのが便利ですね。
――マイネットさんが保有するイラストを「1回いくら」として使ってもらう形ですね。
中野はい、現在は個人ではなくB to Bの形式で企業向けに、主に権利許諾として貸し出しを行っています。既にマイネットが権利を保有するイラストが使用された社外のタイトルもございます。
――このライツとしてアセットを活用してくプラン自体は元々あったのでしょうか?
中野いえ、元々「Brushup」は社内利益を生み出して長期運営につなげようという目標での導入でした。しかし、便利かつノートラブルだったので、じゃあ社外に向けてもやろう、となった形ですね。ファンタジックな美麗系イラストから武将イラストだったり美少女系イラストだったりと、マイネットならではの幅広いアセットが生きる良い機会だと思います。
――お話を聞いているとBrushupがとても多様に活用されているように感じますが、何か具体的な数字として「これくらいの成果がありました」という項目はありますか?
中野実際アセットを活用しよう!という時にかかる工数は、イラストを探してきて「これ借りて良いですか」と確認をするだけですし、新しいイラストを制作することと比較すれば8割程度削減出来ています。
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新規のイラストを発注して各工程の監修をして……という作業は要りませんし、完成品から探すのでその時必要なものをすぐに見つけることができます。
――コスト面で大きな成果があった訳ですね。
中野はい。そしてイラストの進行管理や監修工数が減ったことで、重要性の高い目玉となるイラストにその分時間をかけられるようになったというのも非常に大きいです。もちろん、ゲーム内における新しいイベントなどを考える時間も増えましたし、必要なところに重点的に工数がかけられるようになりました。
――業務の効率化やコストダウンという目的での「Brushup」導入で、期待以上の成果が生まれたという訳ですね。
中野はい。これによってゲーム運営の長期化につながっているタイトルも確実にありますから、やはり大きな効果を感じていますし導入して良かったと思います。
――本日はありがとうございました。
中野ありがとうございました。
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